『軍師官兵衛』 第4話「新しき門出」

だっはー。ご都合主義でディテール無視し、強引にもっていって、なおかつ感動が薄い。困った脚本です。

主人公の“生涯の伴侶”との出会い&結婚、父からの家督相続。なんか去年と同じような回に同じようなタイトル使ってきましたね。ビッグイベントが続いたわけですが、わたくしにとってはなかなか厳しい通過儀礼でございました。

放送開始前の番宣や先週の予告で見せられてはいたものの、中谷美紀様ともあろうお方にやらせるじゃじゃ馬姫…そして30半ばのふたりがやる「子どもを助けて木登りでドッキン」コント…つろうございましたw すばらしく良い天気、白い一本道と豊かな緑というロケーションは、良い番宣シーンになり、同時に、のちのちまで美しい回想シーンになるんだろうけどさ。

まあ、大河では、のちに結婚するふたりが至極ベタなエピソードで出会って互いに意識し合い、やがて「あっ、この人が!」となるのはひとつのテンプレ。本年も、古来(笑)の伝統(笑)を忠実になぞったといえるのかもしれませんが…清盛と時子のような、定番を外しての(しかもびろうすぎるw)出会いも、たまにやるからいいわけで、あーゆーのが伝統になってもある意味困る気がしますが…w

てか、今回の場合、普通に政略結婚でええやん。「子を授かった高時、じゃなくて小寺政職が恭平パパに脅威を感じる」→「恭平パパを肩たたきしちゃおう」→「譜代かつ親族の串橋氏の娘と官兵衛を娶せて家督を継がせる」→「当時の慣習どおり、祝言で顔を合わせたふたりだが、ウマがあって良き夫婦に」。今年はウマ年だけにね。これで何の問題もないやんね。                          
そうです。わたくし的には、愛情・好印象どころか面識もない若いふたりが、番ってからおいおい「愛情とは」「夫婦とは」と目覚めてゆく過程をニマニマ見守る方が断然、好みなのであります! なのに頑なに、木登りとか暴れ馬とか嵐の掘立小屋とかを21世紀になっても繰り返すとは、科学的なマーケティングによる視聴者のニーズを捉えた展開なのでしょうか。それとも結婚してからの愛情の芽生えを的確なエピソードで叙情的に描く自信が、脚本家にないからでしょうか。嗚呼、ゆゆしい。わたくしは断固、大河における婚前交渉禁止を掲げて立候補しますね(何に?)。プラトニックだからって関係ない! 大河の世界では立派にふしだらです!!

何が“やっすい”って、木登りエピも安かったが、櫛橋家のごたごたも見るに堪えんものがありました。益岡徹が娘たちにわざわざ宴のウエイトレスをさせたのは、事前に鶴太郎に黒田家との縁談を打診されていたからだと脳内補完することにしても、金子ノブアキ酒井若菜の拒否っぷりが異常。そもそも、金子ノブアキの官兵衛の嫌い方に、当初からものすごい強引さを感じるんですね、先の展開を見越しての設定というか。ちょっと優秀な同僚を妬む、ってレベルじゃないもん。蛇蝎の如く嫌う説得力が、ドラマの中から感じられないんですよ。しかも、自分の好悪を妹にどんだけ吹き込んでるんだ、この男は。そんで、それにまったく引きずられてない中谷美紀は、兄妹の中でハブられでもしてんのか? 

父・益岡徹も徹で、「武門の婚姻はまつりごとのひとつ、好き嫌いなんかでごちゃごちゃ言うな!」と一喝すべき。恭平パパも恭平で、「おまえに異存がないならいいが」じゃないだろ、異存があろーがなかろーがしなきゃいけないの! あんたの隠居と一緒!! 

なんっかね〜、やたら「生き残りの掟」とか「乱れた世」とか言いながら、一方でこういうぬるさ。ダブスタも甚だしくて、興ざめなんですよね。とっとと主君の思惑で結婚して、そこからじっくり愛を育んでくれた方がどんだけよかったか。どーせ「生涯ただひとりの妻を愛し」た官兵衛さんなんだから(嫌味ですよ)、時間はたっぷりある。

で、初夜も初夜。わたくし、「大河における主人公クラスの初夜問題」については卒論一本書けるぐらいの興味と見識があると自負してますが(最低)、今回の初夜はけっこう底辺ですよー! なぜそこで「おたつ問題」を滔々と語るかねこの男は。祝言で勉さん・永井大濱田岳が「とうとうたらり」と舞ってたとはいえ。向こう三年ぐらい満ちてこないほど引いたわ。

これ、もしや、木登りシーンでの「ヤマモモ差し出して仲直り」が官兵衛の軍師(交渉)としての才を表わし、「初夜でのおたつ言及」で官兵衛の軍師としての決定的欠陥(いらんとこでいらんことを言う)を表わしている・・・というシンボリックな表現だったんでしょうか。いや、違うよね。「隠しごとがない=良い夫婦」 「妻に隠し事をしない=官兵衛の、夫として・人としての誠実さ」って単純な表現だよね。あのねー、敢えて口にしないのが優しさ、って事柄が夫婦にはいろいろあんだよ。他の女(男)のことを語らないのはその最たる事項! てか、おたつのお墓は何であんなところに作ったの?w

…にしても、先週まで「嫌いじゃない」とか言ってたくせに私のこの怒りようw や、今も嫌いじゃないんだよ。うすうす勘づいてはいましたが、大河の初夜が気に入らなかったときの私って怒りすぎですよねwww 天地人でも江でも、もちろん全般クサしてはいたけど、初夜回ではことさら爆発してたwwww ちなみに好きな初夜は「風林火山」での晴信−三条夫人や、同じく晴信−由布姫、「毛利元就」での元就−美伊、「太平記」での高氏−登子。こうして挙げてると、やっぱり、作品のクオリティと初夜描写とはだいたい正比例するんだよな、うん。私の好みの問題っちゃそうなんだけどさ。

夫婦の初夜をまったく省いた「清盛」は、当時は物足んなかったけど、「自分の大河にこれは要らん」という藤本さんの潔い態度だった。ここでも異色の大河ぶりが発揮されてました。「八重」の尚之助が口紅を塗ってやるやつは、長谷川さんのエロスに乗っかって狙いすぎのきらいがあり、覚馬とうらの初夜の方が良かったですね。このくだり、書いてたらほんとに卒論になりそうなんでいい加減自重しますね(でも消去はしないww。

でもまー、木登りエピに戻って、出会って喧嘩して…まではテンプレでも、そのあと「これで仲直りです」ときっちり解決して(彼女のハートまで盗んで)から去るのは新しかったし、岡田さんは素敵でした。あのシーン、子どもの泣き声に気づいて馬の方向を替えるとき、足の動きだけでやってましたよね!?両手がエンピツとノートでふさがってたから。あーゆーのにイチコロな私です。あと、櫛橋家で再会したとき、サッと席を立って追いかけ、「あのときはどうも、大変失礼しました」とあらためて挨拶するのも、かんべえくん、そつがない。このへんのスマートさは見ていてホッとします。必要以上に意地の張合いしないでホント良かったよ・・・このあたりも、この作品らしい「あっさり感」といえましょう。

あとはー。愛息を抱かせて「兄者じゃ、兄者じゃ」と持ち上げて官兵衛をちょろまかす鶴太郎はいやらしくて良いとして、高岡早紀の使い方がなっとらんね。高岡早紀にお仕置きしてもらいなさい。

吹越満足利義昭には一片の隙も無いんですがそれが逆にもったいない気がする…。小朝の光秀は謎。信長シーンが週を追うごとにひどい件…。「江」でのトヨエツは登場回が少なかったので決定的な打撃を受けずにすんだ(と思う)が、この信長の扱い、江口洋介の格を下げるんじゃなかろーか。まあもともと器用なタイプの役者ではないにしても。信長って民放でだってもうちょっと良い目見るもんだぞ。今回ラストの岐阜命名&天下布武も、ダイジェスト感しかなくて全員バカにしか見えないww あ、でも、小一郎秀長が嘉島典俊だった! 「風林」組からまたひとり。あのときと同じく弟役ということで、安全パイではあるけど楽しみ。見せ場がありますよーに!