『軍師官兵衛』 第2話「忘れえぬ初恋」

大河に関して、去年見たからって今年も見るとは限らないわよ、という方の多いのは、清盛→八重への移行の折にも痛感しましたが、今年もまた同じですね。なんか、なんとなーく、わたくしのTLが日曜夜も静か。やっぱり現代において、大河の「枠ファン」を作るのって難しいのね…。その点、朝ドラには今でも強固な「枠ファン」層がいる。なんのかんの言いつつ毎作品見てる人が多いなあと感じます。まあ少なくともここ5,6年は朝ドラの方がずっと平均点高いと思いますしね、わたくしでも…。

ええ、大河へのモチベーションが下がってるのはわたくしも例外ではありませんで。ここ福岡は黒田のご当地(官兵衛のご当地ってわけでは・・・ゴホンゴホン)ということで一年前から街をあげて官兵衛PRしてるんですけど、にもかかわらず私の大河熱の温度は例年より低い。せいぜい微熱程度(←それでも平熱ではないw 枠オタだからww)。

この日も朝から「あー、夜は官兵衛見なきゃだなあ」と、前のめりどころか「義務感」にかられ、「忘れえぬ初恋」というサブタイを思い出しては「あー、こーゆーのって、主人公にとってというより、視聴者にとってのしんどい通過儀礼なのよね」とうなだれ、OPクレジットを見ては「去年とトップGあたりの華やかさが…。や、去年が異常だったからね。でもこれじゃ今年に移行しない人も多いわなww」と苦笑したりしました。今回のOPクレジットなんて、まさかの、勉さん(塩見三省)が実質二番手!(二番手はちび官兵衛だったんで)

が、が、が! 開始20分過ぎでひと息つくまで、括目して見てるわたくしがいるじゃぁありませんか! 何これ面白い。開始20分まで・・・・そう、官兵衛の初陣が終わるまでですよ。

半ば人質として、当主の近習として出仕することになった官兵衛。そこにいるいけ好かない同僚、主君との囲碁勝負。気位の高い主君の妻。姫路に残っているかわいい幼なじみの娘。こうして書くとベタの嵐なんだけど、「大河の悪しき伝統」でイラッとさせるものがないわけ。涼しげなベタなわけ。これはほんとに、本当に重要です。

いけ好かない同僚たる櫛橋左京進は彼自身の父に厳しく諌められ、鶴太郎のバカ殿は単なるバカではなく食えないところを垣間見せ、高岡早紀は芯から大河が似合う年増の美女っぷり。「汚い虫なのに遠くから見るとあんなに綺麗」とは単純に解釈できない示唆的な言葉でした。

そして初陣! これがすごく良かった! 平成大河において、初陣がこんなにまともなのは出色です(涙)。出陣前、官兵衛−武兵衛の主従で「初陣じゃー!」「おーーー!」「手柄立てるぞ!」「おーーーー!」と気合入れまくる、緊張と興奮とでテンション振り切れた姿が最高。「風林火山」の「武者震いがするのう!!!」てセリフが久々に脳内再生されましたよね。野営の本陣が狭く、机とか床几とかを置くわけでなく、皆、主君の足元近くに跪いて軍議してるのも、いかにも戦国中期の小大名の戦って感じで面白い。てか、益岡徹・上杉祥三・磯部勉のいる小寺家中が、それだけでツボなんですけどーーーっ! やっぱ大河の華はおっさん家臣団だ!!!

華といえば、職隆パパの弟、官兵衛の叔父にあたる休夢も良い(ちょっと、このおっさん談義のくだり、みなさん、ついてきてくれてます?笑)。坊主頭のほうね。演じるは隆大介。特に物語に絡んでもこなくても、こういう心根のまっすぐそうな武辺者が味方にいるだけで時代劇の雰囲気がありますよね。

この休夢さんに守られつつ、岡田くんも馬術に殺陣にと頑張る頑張る。さすがって感じでたっぷり見せてくれます。左京進を誘い込んだ敵が上からいっせいに矢をかけてくるとこ、そこから岡田くんのお手柄でかけつけた味方勢と激闘。なかなかの迫力。桶狭間とか関ヶ原みたく大規模な戦でなくても、じゅうぶん面白いんですよね。官兵衛くんの「今日の軍師の一言」は孫子から。セリフも早口、テロップもものすごく一瞬なのが好感でした。これ見よがしに毎回たっぷりやられると萎えるコーナーなので。

で、戦の現場を見て体を震わせ、でも敵を前にすると無我夢中で戦い、終わってみると血みどろの死屍累々に顔色を失くし・・・と、初陣のショックを受ける官兵衛なんだけど、そこで顔色を失くしてるだけで、泣いたりわめいたりしないのがほんとにいいですね。職隆パパは「帰るぞ」の一言。この前回のリピートも良かった。

そのあとには、幼なじみと楽しく海辺デートなんかもしちゃったりして、初陣が変なトラウマになってないとこもすっごくいい(ホントに、私の“悪しき大河”トラウマのほうが深刻よww)。人質の件といい、戦といい、「そういうものだ」という感じで現実を受け止められる、その時代・その身分の「基本的生存能力」みたいなものをちゃんと持ってるのがいいですね。まあ、それが遠からず一度は危機的揺らぎ方をするんでしょうけど、初手からいきなり「戦はダメ!絶対」とか、「薬物か!」みたいな反応じゃないだけ、やや安心できる。

栗山善助の登場は黒田家臣団結成の萌芽を感じてわくわくさせる。良いキャラに育てよ〜!

信長のシーンは、ちょっとどういうテンションで見ていいのか非常に悩ましいんですが、まあ「命からがら敗走しつつ、彼の歩んできた修羅の道を回想で見せる」という主旨を淡々と受け止めることにしました。あと、柴田勝家と藤吉郎秀吉との対比ね。「今回は負けたがいずれ天下に号令するために必ず稲葉山城を落とす!!!」だっけ? 非常に説明的なセリフを吐いて撤退する信長さまでした笑

そして秀吉の「あの城には相当の軍師がいるな…」と、記念すべきこの大河(本編)初となる「軍師」発言に導かれて登場したのが、もちろんタニショー半兵衛です!! きゃーーーー! どんどんどんぱふぱふぱふーーーー!(昭和) ほんっと、何やってもハマる御仁だよ。

「悲劇的に終わる初恋相手」分野では、「風林火山」において貫地谷しほり嬢が金字塔を打ち立てていますので、どうやっても後進は不利になるところ、「浦上に嫁ぐ、そしてそこが襲われる」というシチュエーション勝負で来たのには少々驚かされました。てっきり、一話同様、あの広峰神社が野武士まがいの赤松勢に襲われるんだろうとばかり思ってたんで。twitter情報ですが、浦上の祝言の日に赤松の襲撃があったのは史実なんですって? だとしたら面白い創作ですよね。

「身分違いで黒田家に嫁いでも肩身の狭い思いをするだけ、ならばいっそ養女になって浦上に…」とかなんとかいう理屈はわかったようでわからんもので、「養女なんてウルトラCは、官兵衛に嫁ぐために使わせればいいじゃん」て思っちゃうんだけどね。どーせ先代は目薬屋、大した家柄じゃないんだから、そのへんの外様武士仲間にでもしばらく預けて花嫁修業させたあげく、そこんちの養女になって黒田家に嫁げばいいじゃん。いくら小寺家に年頃の姫がいないからって、わざわざ外様の黒田からお嫁に出さんでも、譜代の家臣らだってあんだけいるのに…

と、どうにも苦しい言い訳の「離別」になったんですけど、まあ初恋エピにそもそも大して興味がないんで別にいいです。大事なのは、官兵衛もおたつも、ここでもやはり「これがさだめ」と受け容れて泣いたりわめいたりしないとこですね。こういった「抑えめのリアクション」を「退屈だ」と称される方もいるかもしれませんが、わたくしとしては、この抑制のきいた第2話に「大河の作り手としての良心」を見た思いがして断然、安心しましたね。次回以降、初恋の「悲劇的な結末」で若い官兵衛が泣いたりわめいたりするときに、この第2話があったのとないのとでは、私の心証は天と地ほどの差があると思うわ。

P・・・やっぱりPの差かしらね。と、OP終盤でクレジットされる「制作統括 中村高志」を思い出しながら頷く私なのでありました。放送開始前の「50ボイス」で彼の姿を初めて見ました。クレバーそうな人であった。

あ、ナレーションだけど、確かに滑舌には多少の心配がある。ただ抑揚についてはあれは演出だよね。死屍累々の戦場で「花の命は短い」じゃないけどなんかそういう講談調の文章でのナレが入って確信したし、「なるほど、こういう味なのね」という感じがあった。不評と騒がれているだけに、今後この演出を続けるのかどうか、気になるところ。