『軍師官兵衛』 第1話「生き残りの掟」

大河の初回、大事! てのはこのへんにも書きました。さて今年の初回はいかに。

・・・・・・・・・・(見てる。)

(見終わった)。
・・・・うーん、まあまあッ!
って感じです。クオリティっていうより私の趣味嗜好に照らしての感想ね。

見どころはいろいろあるんですけど、大筋はとてもオーソドックスなんですね。どこかでPが「王道の戦国大河」的なことを標ぼうしていた気がするんですが、王道というよりむしろ既視感バリバリという感じもありましたw 「子どもが悪気なく軽はずみな遠出をしてみんなに迷惑をかけ、親にきつく叱られ諭されて成長する」譚ね(長い)。プラス今回は「美しく優しい母親が病気で早すぎる死」と「信長と秀吉の出会い・桶狭間」つきです。安心感の大サービスです。でも心惹かれるってわけではなく、むしろこれで15分延長をやられると「長ェ…」感はところどころで否めませんでした。

が、ベタ一辺倒かというとそうではなく、細かいところに工夫や特色がいろいろ感じられました。まあ第一回の感触が良かった「清盛」や「八重」が、一年間通じてそのクオリティを保てたかというと残念ながらNOなので、これぐらいベタが基本ならば、目を瞠るものはなくとも、大筋で大崩れすることはないのかな、という気もします。ていうか後半で大崩れしない大河が見たい(切実)。なので期待というほどではないにしろ「王道(ベタ)の戦国大河」だ、という頭で見ていきたいと思います〜。うん、ハードル上げすぎるの、良くない。

で、万吉クソかわえぇぇぇぇ。

NHKの子役発掘能力の安定感たるや。私、子役エピソードってあんまり興味ないほうなんですが、実際に見ると、ついつい吸引されちゃう。子どものかわいさ、ひたむきさ、けなげさに。ショタ歓喜で沸くTLでは田辺誠一説がやや優勢、ほか窪田正孝宇野昌磨(高校生フィギュアスケーター)説が見られました。

「夢中になると漏らしちゃう」属性にはちょっとびっくり。これは巷間伝わるエピソードなのでしょうか? 創作だとしたら必要なのか悩むとこだけど、これは「知恵は回るが肝心なとこでうっかりも出る」て性質を表わしたかったのか?

一般ピープルの女子との初恋エピ」も大河の鉄板でありまして、これまた放送前はうんざりしてたんだけど、「小さいころからの幼なじみ」てのは新しかったですね。こちらも子役ちゃんかわゆいし。

途中、製薬工房でいきなり大合唱が始まったのには目がテン。「黒田家の由緒を説明したいんだけど、どーしても説明セリフになっちゃうから、いっそ割り切って歌で説明しちゃおう!」て感じですかね。こーゆーのは、歌が良ければとても面白くてリピートポイントになったりするんですけど(例:「ごち」の焼き氷の歌)、いかんせん、歌がひどくて乗れず、残念。てか、歌詞がそもそも現代語なのに、そのまんま字幕が出るという親切設計に驚愕した。

でも黒田家の由緒は面白い。「目薬屋」とも呼ばれた祖父。それを巡って、父と祖父とに小さな相克が感じられるのも面白いつくりでした。播磨時代のことも私はほとんど知らないので、それだけでも興味深く見られそうです。

なんたってなかなかの迫力だったのは、アバンタイトルから見られた「戦」の描写ですね。甲冑をきっちり着こんだ将に統率される大軍ではなく、ワーッといきなりやってくる野武士まがいのものども。触れを聞くや農作業の手を止めて心ばかりの防御を固めようとする…が、間もなくダーッと襲われ何もかもが奪われ蹂躙されていく。モノや女の略奪、火付け。柄杓か?!みたいなのが武器だったりして。終わった後の無残なありさまも、映るのは短いながらすごく作りこまれてました。

「命を粗末になさるな。生きられよ!」「乱世を終わらせる」。安定のNHK的平和主義掲揚大河ですが、戦の凄惨さを描写してからのそれならば、まだ見られるのかなと。

おたつのお父さんの「御師」や僧侶など、神社や寺の関係者が「無縁」の者として国境を自由に行き来できる(普通この時代はできないものです)、そして各地に情報をもたらしたり外交官の役割を果たしたりと、歴史の面白い部分をとりあげてきました。桶狭間では首をとった者より情報提供者のほうが多くの褒美を授かった、というのも有名ではありますが、いかにも「軍師の物語」らしい視点です。

ちなみにこのお父さん(尾藤イサオだった。あまりの若さに驚愕! ほんとしばらく、誰だかわかんなかった)、襲撃で早々に死ぬだろうと思ったら普通に生き延びてるのね。「生き残りの掟」なんてサブタイだから、誰かが“戦で”必ず死ぬと思ったんだけど…。

そういうディテールは興味深いのですが、繰り返しながら大筋はあくまでオーソドックスです。三傑まわりは特にそうなりそうですね。でも、それが視聴者の「安心感」につながるってことなんでしょうね。まあ、作りこみがすごくて変に視聴者を選ぶ大河ってのも良し悪しなんで…。厚化粧だしベタだしで「見てられない」感がちょっとあったんですけど、シーンが短いからなんとか乗り切った! そこらへんのバランスはうまく頼みます、中村P。

方針としては何となく、

  • オーソドックスな戦国ネタ(キャスト)でお茶の間にすんなり入り込む
  • 「今日の軍師の一言」では原典をテロップで示し、「PHP」系好きのお父さん視聴者にアピール
  • 岡田くんの美貌で女性視聴者を籠絡。麗しい夫婦愛でさらに籠絡。
  • 歴オタ向けにもディテールちょこちょこ凝っていきますんで

って感じですかね。

戸田菜穂、美しい…。もっと見たかった。でも、ああいう造形なんで、ずっと出続けたら食傷するのかな。叱られる万吉がだんだん顔を歪めて泣き顔になっていくのにきゅんとくる。でも散々「人に迷惑かけるな」とお説教したあとの「まっすぐに生きるのですよ」がちょっとピンとこなかった。

柴田恭兵。竹中、江口を退けての大トメおめ!! 出てきたとき、「空飛ぶ広報室」とほとんど同じセリフ回しだったんでだいぶ気になりました。公の場(主君や赤松の前)では武将らしく喋ってるんだけど私的な会話では現代のお父さんみたいで。江口のクレジット位置が中トメっていうか中トップっていうか、あそこは、常設でぼっちなの?

OPテーマ&タイトルバック、ナレについてはいずれも違和感ありましたが、これは「初回ゆえ」もあるかと思うので留保します。

何はともあれ、今年も大河ドラマが放送されて、視聴しては良いの悪いの好き放題言えるささやかな幸せをかみしめております。