サクことば 40 複合語

名詞で終わる複合語は子どもの周囲にもあふれている。おもちゃ箱。牛乳パック。急行電車。Eテレの子供向け番組では「やぎさんゆうびん」が出てくるし、「ピタゴラスイッチ」だって考えてみれば複合語だ。

それらについて、「おもちゃの箱だからおもちゃ箱だよ」とか「ヤギさんが運んでくる郵便だからやぎさんゆうびんだよ」なんていちいち説明する親はまず、いまい。それどころか、「とんがり帽子だよ〜」とか「ふわふわケーキ、どうぞ」のように、子どもに話しかける言葉の中には、その場で口からでまかせた(ってわけじゃないけどw)即興の複合語がじゃんじゃん混じったりする。

子どもはいちいち教えられることなく、その意味をなんとなく理解していく。アンパンマンカレーパンマンバイキンマン、食パンマン、おむすびマン…「マン」の意味は知らなくても、「○○+マン」で構成されていることは直感的にわかっているはずだ。

義父の畑で芋ほりをしたときに、じゃがいもの大中小いろいろな形を見て、「おとうさんじゃがいも」「おかあさんじゃがいも」「あかちゃんじゃがいも」と比喩表現をしたのが、サクが初めて自分から口にした複合語だったと思う。その少し前に、「たまごみたい」とか、「あかちゃんみたい」のように「〜〜〜みたい」という比喩のアスペクトを使うようになっていた。2歳5-6か月のころ。

2歳7か月。日常的にヤクルト飲料を与えていたのだが、あるとき、チチヤスのりんご青森を買って与えた。こんなの。

ヤクルトとそっくりの容器に入っているのである。ひとくち飲んで、サク「りんごジュースヤクルトだ」と言った。へー、と思ったね。「ヤクルトりんごジュース」じゃないのか、と。あまり間のない後日、頂き物の缶入りリンゴジュースを飲ませると、今度は「りんごジュースビールだ」と言った(いかに缶飲料=ビールと刷り込まれているかが窺える発言ではあるww)。

解釈するなら、「りんごジュースが入ったヤクルト容器」「りんごジュースが入ったビール缶」ってところだろうか。だけど、「ヤクルトみたいなりんごジュース」だという解釈(cf おとうさんみたいなじゃがいも=おとうさんじゃがいも)で「ヤクルトりんごジュース」って言ってもおかしくない気はする。。。。 

それ以前から、日常的に、アルミ蓋の色を見て「きいろいヤクルト」「あかいヤクルト」「みどりヤクルト」と言っていたので*1、その流れで「今日はどんなヤクルトか? りんごジュースヤクルトでしょ!」ってことになったのかな。

3歳0か月。ちょくちょくお邪魔している友だちの家で、変種の積み木のような、ブロックのような、外国製のおもちゃを借りて遊んでいるときのこと。不意にサクが「ふたあそび しよう」と言い出した。へ? 何それ? その意図するところは、箱の蓋にたくさん付けられている凸に、ブロックの凹を刺していく…という遊びだった。あーそうだったそうだった、前回、そういう遊び方をしたのを覚えてたんだね。

でも「ふたあそび」なんて命名は、そのとき誰もしなかったぞ。つまりサクが今の今、考えた造語だ。あそぶ、じゃなく「あそび」と名詞の形でちゃんと複合語にしている、子どもの言語直感に軽く感動。まあ、「○○あそび」という複合語は、あらかじめ知っているわけだもんね。「砂遊び」とか「どろんこ遊び」とかで…。

と思っていると、「ふた遊び」に満足したサクが次に言ったのは「たかあそび しよう」。今度は、ブロック同士を縦に高く積み上げていく遊びをやりたいらしい。うんうん、それも前回やった…そしてこちらも、「たかあそび」なんて漠然とした命名は、前回、誰もしていない!

「たかいあそび」じゃなくて、「たかあそび」だってことに、相当、感心してしまった。「おもしろ絵本」「うれし涙」のように、複合語として名詞に付くとき、確かに形容詞の「〜〜い(〜〜しい)」は取り除かれ、語幹だけになる。そんな法則が、この造語にちゃんと現われている! 3歳0か月、まだ、自宅以外のトイレでは怖くて排泄できないような子どもには不似合いな言語能力ではないか! 

いえ、うちの子が天才って言う気は毛ほどもありません。今ではあまねく支持されている、チョムスキーが唱えた「普遍文法」を示す一例だよな、って話です。人は生まれながらにして言語機能を備えている、という、あの説。そうでなければ、言葉の複雑な仕組みを、いまだ未熟な幼児が、こんなにスムーズに獲得していけるはずがない。はー、すごいよ、ヒト。面白いよ。ヒトの言語獲得。

*1:ヤクルト社のじゃなく他社のヤクルトもどきも与えてますのでww