サクことば28 満2歳9か月

みなさんは、歌舞伎の演目「白波五人男」で弁天小僧菊之助が言う
「知らざあ言って聞かせやしょう」
をご存知でしょうか。4月、建て替えられた新歌舞伎座こけら落としでもかかっていて、当代菊五郎が絶賛されていますが。

サクはいろいろな洗脳(笑)によってこの名台詞を覚えていて、「しらざあいって〜…」となかなかの節回しでやるんですが、これがかならず、面白いことに「きかせましょう」と言うんですね。いなせに啖呵を切る本家はハッキリと「きかせしょう」と言ってるんだけど、サクの耳にはその江戸弁的活用が受け入れられないらしい。いつなんどきでも、キッパリと「きかせましょう」。しかし、「聞かせましょう」にしたって、そんな言い回し、普通の会話では、ついぞ使わないのに、ちゃんと標準語で正しく活用してる。まぐれかもしれんけど。

博多弁はやはり受け容れられるらしいです。こないだも、夫「もう、テレビ消すよ」 サク「けさん!」(消さない)のやりとりを延々とやってた。

でも、否定の活用(未然形)ってやっぱり難しいんですね。夫が子ども用の爪切りを持ち出した瞬間、「きないよ! きない!」(切らない)と言って逃げ回るサク。「やめとくよ、あしは〜」とも言ってた。足の爪を切るのスゲー嫌がる。痛くないのに嫌なんだよね。

痛くないのに嫌なのは髪を切るのも同じで、夫に切られている間じゅう、固く目をつぶりながら必死に「チョキチョキしないよ!」と繰り返し叫んでいた。「もう きれいになったじゃない? きれいになったでしょ?」とも言っていて、創造的だな〜と感心しながら体を押さえつけている私であった。

機嫌の悪いときに、「サクちゃん、○○楽しかったね〜」と声をかけると、「たのしかってない!」と返された。「おいしかった?」と聞くと、「おいしかってない!」も言うな。形容詞の否定については、「おもくない」とか「ちいさくない」とか正しく言うこともあるし、同じ形容詞でも正しかったり間違えたりで、まだルールが定まっていない感じ。

否定の命令形。こないだ、「つくえに すわっちゃ だめでしょ!」と、ひどく正しく怒られた。自分が叱られるときとまったく同じ、非常に正しい文法でした。「○○したらだめ!」「○○しちゃいかん!」みたいな言い方と同じくらい、「○○しなくていいよ!」と、よく言う。「ママ、たべなくていいよ!」 「ママ、テレビみなくていいよ!」 「ママ、たいそうしなくていいよ!」 機嫌が悪いときはママのやることなすことが気に食わないらしく、片っ端から否定されるww

よく聞く言い回しは、意味がよくわかってないようでも、そのまんま、すらっと口をついたりするもんらしい。「そろそろパッコロリンのじかんだよ」(註:パッコロリン=子ども番組の名)とか、「あっ、こんなところに かみひこうき」とか、「どっちですか!! ママ、かんがえて!」とか。

「あれ、あのオレンジのやつ」 やつ=もの=英語のone=代名詞 みたいな使い方をマスターしてる。

「なんで○○○なの?」みたく尋ねると、「だって・・・」と答えるようになった。「なんで嫌なの?」 「だってサクちゃん イヤなんだもん」とか、たいていオウム返しで、正確な理由を言語化できるのはまだまだ先だろうが、「どうして」「なんで」と「だって〜〜〜だもん」が呼応することに気づいたことに感動。

そしてほぼ同じくして、「ママ、なんでないてるの?」と尋ねるようになった。「泣くな、はらちゃん」を見てボロボロ泣いてるときだったと思う(笑)。「だってェー」と言いかけたけど、むずかしくてとても説明できません!

「こうやってー、ここにゴロンして、するんだよ」 「こうやって、おはな(鼻) フンってするの?」 どちらも実演しながら。正しい。

私「サクー、お風呂入るよ〜」 間髪入れずサク「だれと おふろ はいるの?」 こういうの聞いてたら、もう一人前だなと思う。感心するけどちょっとつまらん。

日が暮れるころ、外を見て「どんどん くらくなった」と言う。「そうだねー夜になったね」とあいずちを打つんだけど、「どんどん暗くなった」って、日本語の表現として、ちょっと不自然な気がするのは私だけか? 「だんだん暗くなってきた」、あるいは「どんどん暗くなってる」が自然な感じ。そして両者の意味は違う。サクがどっちのニュアンスで言ってるのか、まだよくわかんない。今後に注目する。

「○○(に)なる」で変化を表す、ということはわかっているみたい。前述の「きれいになった」発言もそうだし、風船がふくらむと「おおきくなった」とか、どこかを痛めたとき「いたいいたいなった」とか、正しく言う。