『八重の桜』 第15話「薩長の密約」

ジョーよ、あれがボストンの灯だ…いや、朝だったけど。着いた。やっと着いたよー! 第10話のラストに出発したジョーが。1年ですって。いくらなんでも遅くね?!と思ったら、太平洋横断して西海岸をめざすんじゃなくて、インド洋まわって喜望峰経由して東海岸だったのね。そら遠いわ! 船の中で既に国籍不明の人になってるし。どう考えても八重と結婚する気がしません。もしかして、しないのか…?(←いつも言ってる)

新島七五三太(しめた)→ジョーになったのは、航海中につけられたイングリッシュネームからきたのね。奴ら、誰にでも、それ、やるけんな。今上陛下は幼いころの英語のクラスで、確か「ジミー」だったよね?

・・・ってなアバンタイトルでして、オダギリさんのクレジットはトメトップ。本格登場してからの位置が注目されます。今の尚さまのポジションにおさまるのか、あるいはあんつぁまを追い抜いて二番手にくるのかっっっ?! ちなみに本日、「沖田・永倉・藤堂」の新選組隊士がクレジットされたのを見て「ktkr!!!」と目を剥いたのは私だけではありますまい。今か、今なのか! 池田屋じゃなく、なぜ、今なのだ…!

そうです、「坂本龍馬がクレジットされない薩長同盟」で、なぜか新選組隊士が大量投入www いえ、いいんですけどねww ネタの一環ですかね? うす汚い紋付き袴の後ろ姿(のみ)と 「土佐の脱藩浪士の仲介で」 というナレに、一斉に色めき立つTL www モニカ西郷の「坂本サァに聞きもした」の一言は、明らかにスタッフからの燃料投下ですよねわかりますw

しかし、盛大に面白がりつつも、TLの大河クラスタでは「この物語は『八重の桜』なんだから、坂本某の扱いはこれで良し」とするのが大勢。ね? 視聴者は、こんなにも平静に、作り手の信頼に応える存在なんですよ? それともこれはtwitterやってる層の良識を示すエピソードなのかしら?

さて、肝心の薩長同盟ですが、近年の大河では「篤姫」「龍馬伝」と二度にわたって映像化され、しかも、両者は主人公サイドがかかわっていたのにもかかわらず、「食傷感がまったくなかった てか むしろ 今回がもっとも見ごたえがあった」のはなぜだ!!! いえ、もう、予想はできてたことなんですけどねw

土佐の脱藩浪士の仲介で(笑)会談の運びとなったものの、10日間、薩摩側は飲めや歌えやのおバカ宴会で饗応するばっかりで、本題の口火を切らない…ってあたりは省略され、ついに堪忍袋の緒が切れた桂さんが「もう帰る!」となったところから場面は始まります。

障子を開け放した濡れ縁に立つ西郷、大久保(小松の姿はなし)。旅装で部屋の中に端座している桂。
桂 「もう十日になる。これ以上長居しとっても貴藩と同盟の話はできやせん」
西郷 「まあ待っちゃんせ」
桂 「あんたがたは長州に幕府の処分を受けろと言う。同盟の話はそれからじゃて」
西郷 「毛利公の隠居と石高減知。いったん受け入れて謝罪すれば、戦は避けられるものと思います」
桂 「それはできん!」
西郷 「桂サァ」
桂 「禁裏に発砲した罪の謝罪は、ご家老たちの首を差し出してもう済んじょる。このうえ、いわれのない処分に甘んじては、長州の面目が立たん!」


西郷、桂の正面に居住まいを正して座る。「今は意地を張るときじゃなか」


桂 「長州は! 仲間たちは! あんたがた薩摩と会津を相手にして、一歩も引かんかった。ここで意地を捨てては、死んだ仲間たちにあわす顔がない。たとえ、防長二州を焦土と化しても、それだけはできんのじゃ!」


桂、立ち上がって出ていこうとする。大久保、立ちはだかる。真剣な顔。西郷と頷き合う。

西郷 「わかりもした。そいでは、そっかい話をば始めることにしもんそう。幕府の要求はのまんでよか。こたびん戦に大義なかち、おいも思っちょいもす」
桂 「じゃが薩摩は萩の攻め口を任されとるじゃろ」
西郷 「うんにゃ。兵は出しもはん。戦が始まっても薩摩に同調して出兵を断る藩が出もんそう」
桂 「会津とはどうなっちょる? 薩摩と会津は結んじょったはずじゃ」
大久保 「既に手は切りもした」
西郷 「もしもん時は会津と一戦交えてでん、お味方いたしもす」



桂、首をひねる。「わからん。貴藩とは長年の敵同士。しかも、我が藩はいま、天下を敵に回しちょる。何で手を結ぼうとするんじゃ」


西郷 「もはや徳川だけに国を任せちゃおられん。そん思いは薩摩も同じごわんで。そんために組むべき相手は会津じゃなか」
大久保 「むしろ会津は都から取り除かねばなりもはん」
西郷 「桂サァ、手をば組みもんそ。お望みの洋式銃を薩摩名義で調達いたしもす。そいで信用しっくいやんせ」

よけいな装飾のない、緊張感あふれる、かつ説得力の高いやりとり! 山本むつみってこういうシーン書くのがほんとにうまいんですね。考証やサポートスタッフが(今年に限って)有能なのか? しっかし、これを、モニカとミッチーと平成の裕次郎でやってるってのもすごいよな・・・しかもちゃんと見られるし。15年前だったらネタでしかないぞ。

会談の最初に、薩摩側がまず「幕府の処分を受けよ」と持ちかけたというのが最近の学説らしいですね。一方、薩摩が銃を供給するのに対して、長州は米を提供する…てのもかつては通説でしたが、最近は見ない。淘汰されたのか。

ともかく、このドラマでは、桂さんが「これ以上の辱めは長州のメンツが立たん!」と激昂するのをまるで予想していたかのように、モニカと裕次郎が頷き合って「じゃ、肚を割って」的に話し始めるのが印象的でした。相手の出方によって様々なシミュレーションをしてきてる感じ。一方、桂さんは、交渉のテーブルにはついたものの、老獪な駆け引きなんかするつもりは全然なくて、結局のところは血がたぎってる。切羽詰まった立場にありながらも、顔を歪めながら「仲間」なんて言葉を吐くあたり、いかにも長州人。「防長二州を焦土と化しても!」なんてセリフもいいねえ。こういうのが時代劇、歴史劇の醍醐味よ。

及川さんは一貫してダイレクトな演技なんだけど、それが、良くも悪くも長州の理想家、革命家、激情家っぷりをあらわしてて、あまり違和感がない。対する吉川さんも、瞬きや目線で意外に細かい動きをしつつ(演出でしょうか)、セリフまわしはやはり大味なんだけれど、こちらもそれが良いふうに作用してる。なんたってモニカは大きな威厳にみちていて、しかもそれが現時点で「柔らかめの威厳」なのがイイ! それでいて、どこか得体のしれない雰囲気もある。「篤姫」の小澤征悦はウェットで大きさがなかったし、「龍馬伝高橋克実はブラックすぎて人望があるように見えなかった。どちらも作り手の意向でそうなったんだろうけど、なんとモニカの西郷が、近年で一番、英傑に見えるぞ…!

それにしても、会津サイドに立ちながらこれを見るのはなんとも悲しい。討幕までの考えはなくとも、新しい国づくりを明確に目指している薩摩。現体制をあと千年でも続けようとする会津となんて…ズッ友ではいられないのです(泣)

話は前後しますが、長州征討の勅命が下ったというのに、なかなか出兵しない幕兵は、京でジャージのヤンキー化。ほんとにジャージです。斬新。酔っぱらって暴れて、長州を「賊徒」呼ばわりしてますが見た目こっちがよっぽど賊徒です。・・・を見てる薩摩。これは「薩摩、幕府(および会津)を見限ったってよ」の念押し描写ですね? 

ヤンキーの髷のみを切り落とす、という高等テクを見せつけるkjの斉藤一。・・・に目をつける獅童の佐川。このふたり、これがきっかけで練習試合してましたが、あれはいわゆるひとつのサービスシーンだったんですか? 結局勝負の行方もわからずじまいだったしね。さすがに腰がすわってる獅童と、“るろうに”っぽいkjの殺陣。 「人斬り剣だな」「オマエモナのやりとりが妙におかしいw あんつぁまの目の描写のためでもあったんですが…

で、いきなりレベルアップした長州軍に負け戦続きの幕軍。容保(会津)・定敬(桑名)の高須兄弟を前に、怒り心頭の孝太郎ケーキさん。この人、アバンでは得意の「辞める辞める詐欺」もやってました。そこへ上様発病の知らせ! 「篤姫」では何でいきなり倒れたのかさっぱりわかんなかった松田翔太の上様でしたが、今回はちゃんとナレが「脚気」って言ってました。抱き枕みたいなの抱いて苦しむ姿になぜか萌え。

会津本陣では、あんつぁまが長州の新兵器をご説明。ゲベール銃>>>ミニエー銃なのです。で、視界がぼやけて弾が手にとれない…と、ここでも(泣)。朝敵という立場上、正規ルートで武器取引なんてできるわけない長州の軍備増強に不審を抱く面々。あんつぁまが土方に探りを入れるよう依頼していたのと同様、ここでも薩摩への疑惑が生まれる。ともかくこっちも銃器更新せねば…とは言うものの、国元ではすでに困窮しているうえ作柄が悪く、先立つものがない。政治力も国力も薩摩>>>会津を見せつけられてこっちが泣きそう(薩摩は農業というより既に商業国家)。

B作に長崎出張を命じられるあんつぁま&修理さま。あんつぁまは、新式銃の入手ついでに目の治療。これは、B作を始めとするおえら方の意向だろう。修理さまは(ここで「殿のおそばを離れたくありません」とゴネるところがよかった←記憶に多少の妄想が入っています)、渉外ついでにリフレッシュ&遊学で、これは殿じきじきのご慈悲。どっちもスゲーいい話だけど、時勢を考えるとスゲー悠長な話でもある。「金の工面に時間がかかるから秋になったらな」とか。ともあれ、B作は最高。B作ってライトな役しか見たことなかったからスゲーうれしい。

で、その後の上様薨去慶喜の宗家相続→節刀下賜→舌の根も乾かぬうちに…の流れは圧巻! まず容保さんですが(ネットではタッパー公という呼び名が定着しているらしい。薄くて透明そうでなんかしっくりくる!)、上様亡くなってそんなに自分を責めてたらどうなっちまうんだ、今後、お上がムニャムニャ……

まあそれはだいたい想像がつくとして(笑)、ケーキさんwww(タッパーとケーキwwwww) 春嶽との黒会談! 相変わらず黒々とした春嶽さんである。しかし史実、春嶽さんはこの時点で慶喜を将軍に立てようとしていたんですかね…? むしろ逆だった気が…? 最近の学説…?まあドラマ的には非常に見ごたえのあるシーン。慶喜は、春嶽と薩摩の接近も、相手に貧乏くじをひかせることにかけての春嶽の手腕も知り抜いたうえで、容保と同じ轍は踏まぬとタカをくくっている。この人は、別に黒々としているわけではなく、単に「俺以外はみんなバカ」ぐらいに思ってるんですね。で、「そろそろ本気出す」って感じで、諸侯の前で「たとえ千騎が一騎になっても云々・・・!」の一大アジテーションを展開するわけですが(こういう演技の空虚さが、孝太郎の芸風とよく合ってていつも良い)、このときシラーとシラけきってるあんつぁまの顔がよかったですw

本陣でも「どうもあいつだけは信用ならねー」と意見が一致。「長州征伐で華々しい軍功をあげて、己の価値をつりあげてから将軍職を継ぐ気じゃなかろうか」など、ダテにこれまで散々振り回されてきたわけじゃねーのよ、てところを見せる面々。二心殿の心中を正しくおもんぱかってる。うんうん、この人たち、決してバカじゃないんだよね。ただ、時代に先んじようとか、時代を変えようだなんて思ってないわけで・・・って思って見てたら殿、「帝から節刀を賜ったんだから必勝のお覚悟だろう」。って、バカー! そんな忠義バカはおまいだけだ、バカー!

ってわけで、さっそく征伐とりやめです。朝令暮改のお手本です。

一方、サブタイが薩長同盟だから京中心かと思いきや、会津の国元のシーンも交互のように挟まれていて、しかも、これはこれでちゃんとひとつの物語になっていて、平静には見られません。・゜ ・(/Д`)・゜・。

慶応2年(!)、山本家のお正月。女たちは、祝言の時とはまた違ったふうの、明るい色目の華やかな着物。いくつものお重に詰められたおせち料理。まんをじして、尚さま食卓に登場〜! ただし、川崎家当主!てな感じの気概はいまだなし。桜のころに祝言あげてたのでもうすぐ一年、こんなシーンを描いたのはもちろん意図だよね。尚さんはもともと象山塾で学んでいたぐらいの俊才(設定)だし、会津京都守護職を引き受けた際も「いずれ恐れられ憎まれる」と正鵠を射た発言もしていた大局を読める人。求婚の際にも会津に根を下ろして、鉄砲の改革も・・・と意気ごんでいたけど、実際はこんなもん。国元はいまだにこんな感じでのんびりしてるっていう…。八重さんとは仲睦まじげでおめでとうございます(棒) 

もちろん尚さまだけでなく、誰もが「長州征伐は成功裏に終わり、そうすればみんな帰ってくる」と信じて疑ってない。そして、ここであんつぁま=おとっつぁまから届けられたお年玉の「ぽっくり下駄」が登場。みねちゃんはご機嫌で、そのお行儀の悪さを見てもうらさんは優しく抱きしめながら注意するだけで、とどめに柱に傷つけて背比べまでしています(泣)

しかしやがて戦局の悪さが伝えられ(ただしあんつぁま直筆の手紙だったので、字がおかしい=目が思わしくないことはまだわかっていないのだろう)、もとより困窮しているところ、さらなる長逗留が・・・ということになりそうな国元は、暗いムードに包まれる。うらさんの顔色もみるみる険しく。まあしかし、気持ちわかるよね、自分のダンナさまは4年も帰ってこないうえまだまだ帰国が延びそうなところ、翻って小姑の妹は出ていかないどころか、ダンナと実家で来る日も来る日もラブラブガンプレイしながら暮らしてるわけで、これでカリカリすんなってほうが無理です。あえて口出しせず、大らかに見守っている風吹さんがマジいい姑。

みねちゃんも超かわいい。叱られ続きで「おとっつぁま、いつ帰ってくるの〜?」からの、「おかっつぁまに怒られませんように」が泣ける〜。そうだよね〜。顔も覚えてないもんね〜。おとっつぁまが帰ってくる=おかっつぁまがニコニコになる、てイメージしかないんだよね〜。負け戦の報ばかりで、剛力さんの日向さんちも閉塞感漂ってるそうです。「悪いことばっかりが続くわけねぇ」のセリフが超つらい。あと15話くらいは超鬱展開を続けるくせにこんなセリフ入れてくるとこに、作り手の本気を感じる。

そして火事! みねちゃんのぽっくり下駄がここに結実するとは! 史実と全然関係ないけどスゲー気になるのは、これが会津戦争の予行演習みたく思えてしまうから…。しょんぼりしつつも普通に暮らしていた八重さんたちが、炎を目の前にするのだ。どうなるのこれー!