『八重の桜』 第11話「守護職を討て」

中央の激震が徐々に波及しつつも、とりあえずのところは歴史の表舞台に出ることなく生活を送っている八重たち。それをつまんないっていう向きもあるようですが、いずれ歴史の波にさらわれていく人々を、史実というガイドのないところで描くのはそう簡単なことではない気がするのに、ものすごくよくできてるなーと感心しっぱなしです、私は。

「何から何までおまかせくださいませ」と請けあう”まつ”とか(利家とまつ)、猪突猛進で誰にでも直談判してなぜか成功しちゃう篤姫とか、女主人公にそういうものを求めてる人って結構多いんだなと、個人的には悲しく思います。それは好みの問題なのかもしれないけど、もしかしたら、そういうものに慣らされちゃったってことなんじゃないかなとも思うんです。いえ、テレビの中の物語でわかりやすくスカッとしたりゾクッとしたりしたいって欲望はごく普通のものだと思うんですけど、それ以外のものを受け容れる素地があまりになくなってしまっているように思えて、悲しい。

八重は変わった娘ではあるけど、その時代の会津の娘らしさも持ってるし、つまりは「運命の子」的なものはない。ほかの人たちも、だいたいみんなそうです。演技も、そういうドラマにふさわしく、(たとえば「清盛」比で)舞台的に派手ではないけど、みな地に足がついていて細やかで、役者のみなさんすばらしい仕事をしてると思います。登場人物ひとりひとりが作り物っぽくなくて、陰影とか息遣いとかがちゃんとある。私は、維新とか戦争とか何もない世界にあるこの人たちの物語をずーっと見続けたいと思うほどです。

今回も、自我に目覚めた末っ子に家族が翻弄されつつも最後は認める、という、こうして書くと普通にありそうな話なんだけど、ありそうだからこそ素直に受け容れられるわけで、繰り返すけど普通の家族なんですよね、この人たちも、隣の高木さんちも、山川さんちも、京都に行ってる会津藩士たちも、ひとりひとりは普通なんですよね…。

アバンタイトルから「ならぬことはならぬ!」の大音声を張り上げ(これが、かつてチビ八重に対して発したのよりもイガラっぽい大声で、老け演技細かいなあ!と感嘆。老けメイクの進行の仕方も細かいですよね)て、佐川官兵衛が指揮する次・三男以下部隊に志願する末っ子の頭を力ずくで押さえつけようとしていたマッチゲ父さんが、かまどの火を起こしながら言った言葉…よかったですねぃ(泣) 「何かを変えるのは、たやすいことでねぇ…(以下略)」。

婿養子として山本家を瑕疵なく維持することを第一の命題としてきた権八のスタンスは常にゆるぎなくて、重い。けれど頭でっかちのわからずやではなく、根にはありあまる親の愛情があり、成長する子供を認めることができる人物なんだよねぇ…。子どもたちがのびのびと(けれど野放図ではなく)育っていってるのがよくわかる父親像。今日の彼の言葉は、何かを変えることを甘く考えるなという叱咤としても、あるいは、ハナっから難しいことなんだから、焦らず腐らずじっくりいこうという激励としても、人生で時々思い出したいと思った。

三兄妹の造形についても、主人公の八重が型破りなキャラクターだから、よくあるドラマなら上はしっかり者で下は甘ったれにしそうなところ、覚馬は安定の瞬間湯沸かし器&鉄砲玉っぷりだし、三郎もかなりの頑固モンであることが判明。さすが兄妹、って感じもよかったなあ。尚さんにからかわれて、ツンケンしながらお針のお稽古に行って、後輩たちを軍の調練ばりにビシバシ鍛えちゃう八重もよかった(そこで意外や意外、見事な刺繍の腕前を垣間見せるユキちゃんもよかった)。

何より、三郎エピソードにちゃんと、八重&尚之助カップル誕生(笑)への布石が刻まれているのがいいよね!(結局そこ)。尚之助さんが、いずれくっつく八重とだけでなく、最初はあんつぁま、今はまた三郎と、兄妹みんなの理解者になり、同士になってから八重と結婚するっていう展開はいいなあ。や、だからこそ、後がよりドラマチックになるんだろうけど…。

今回の八重&尚之助のラストシーンよかったですね〜、

八重「忘れ物です!」
尚「えっ?うん? なにかあったかな?」(と小芝居)(違)
八重「忘れ物したのは私です。言い忘れたことが。三郎のこと、ありがとなし。いってきらんしょ」
笑いあい、振り返りあうふたり。

って、どこの「カリオストロの城」〜〜〜!!って感じでニヤニヤが止まりませんでした。よかったね尚さま、「将を射んと欲すればまず馬を射よ」作戦が大成功したって感じで(違)(尚さまはそんな姑息な人ではありません!)。

そんなこんなが奏功して(だから違うって)、来週の予告でついに二人はめおとに・・・!? 「あんつぁまだと思ってた人が旦那さまだなんて」とかなんとか八重はホザいてましたが、兄が夫になるってのは、源氏物語を挙げるまでもなく、古今東西変わらぬ、恋に恋する子猫ちゃんたちのフォーマットなのだよ!(鼻息)

また、居候生活もすでに数年に及んでいるはずですが、権八や佐久が彼をどう思って、どう接してきたのかはあまり描かれずにきたので(山本家程度のお給料の家なら、食客を長々と置くのって、やっぱりちょっとレアだよね? 途中から非常勤講師に就いたし、食客とはちょっと違うけど…)、来週はその辺にも触れられるのかなーってのも楽しみ。今回、山本家の食事風景に尚さまの姿はなかったので、やはり居候としてお台所かどこかで一人で食べてるんですよね? 祝言挙げたら、晴れて食卓に登場するんだろうなーとか、今から妄想が止まらない! それとも、そのころには山本家はそれどころじゃなくなってるのだろうか…(泣)

さてっ! 正気に戻って、すでに厳しい京都情勢を見ていかねば…。

放送直後、2-3話遅れて録画視聴してる友だちとやりとりしてたんだけど、(以下、腐女子全開トークにつき閲覧は個人の責任でお願いします)

  • 友「孝明天皇は容保の事がそういう意味でお気に召したんでしょうか…((((;゚Д゚)))))))」←どういう意味だwww
  • 私「思想云々じゃなく単に惚れたとしか思えない展開が続くよ」
  • 友「8話見た。完全に両想いやん!」
  • 私「あんつぁま×尚さんが離れ離れになったとたん、帝×容保って激熱カップル登場だもんね…完全に狙ってる……(((゚Д゚)) ) ...」
  • 友「ぎゃあ!狙われている(((゚Д゚)))ヒィ  けど、けっこうわかりやすいくらいにカップルを提示してくるよねwww」
  • 私「殿×修理さんの麗しい主従も地味にエロくていいよ。あんつぁま×秋月さんの渋さも好き」
  • 友「激渋! さすが、高レベルフィルターをお持ちですな!www」

や、ノリですよ、その場のノリの会話ですよww …ってわけで、先週で退場したとすっかり思い込んでた秋月さんの名前がオープニングにクレジットされてるだけで望外の喜びだったんですが、あんつぁまとサシの場面もあって狂喜でした(←全然正気に戻ってない)。

秋月さんがいるからこそ、若手〜中堅会津藩士たちのイケメンぞろいっぷりのありえなさが緩和されてるし、双方がそれぞれにより輝いて見えるんですよね。プロのキャスティングはさすがだわ…! 修理さまや大蔵さんは、ふとしたときに斉藤工くんであり玉鉄なんだけど、秋月さんはもはや秋月さんにしか見えない…。ちなみに、途中で合流した広沢さん(岡田義徳さん)の滑舌が微妙に悪いのは、これも味なんでしょうか?

ところでこの飲み屋(?)では蝋燭じゃなくてランプでしたね。ランプだと、やっぱりかなり明るいんだなと印象的でした。やってきた広沢さんが提灯の火を消して上がってくるとことか、細かい所作があると楽しい。

しかしあんつぁま・大蔵・平馬の「町人コスプレ道中」は、なんですかあれw 大胆すぎるだろww 視聴者サービスしすぎだろwww てか、イケメンがそろってるのに、みんな妙にダサく見せる扮装術がさすがです。決起した長州藩士たちをのぞき見すると(って、ともかくすごい設定だなww)、須賀さんの血気盛んな様子はだんだん久坂っぽく見えてきました。てか、会津の久坂(じゃなくて平馬ですが)のなんちゃって京都弁www 「だてに祇園をうろついてないから」ってなんだそのドヤ顔www しっかし、これ単にその場限りの応酬じゃなくて、真面目一徹の奥さんが背後に透けて見えるようなものがありますな、平馬さんの「遊び歩いてる」設定…

来島又兵衛にすんごいイケメンがキャストされててびっくりしました。そして真木和泉祝詞をあげてるとか、なにげに面白い。彼は久留米藩の神官の家出身ですもんね。

殿はといえばおかげんがよろしくないようで。そんなに咳き込んだら肋骨が折れちゃうよーって思わせる、綾野くん病弱設定の説得力です。自らも病身でありながら、帰国する江戸家老・横山さんの身を重ねて案じ、秋山さんのことも気にかけて、優しいお殿様じゃのう…・゜・(つД`)・゜・  ま、照姫さまは松の葉で咳止め薬を作ってくださるし、帝はここぞとばかりの権力行使で自分の主治医にかからせてくれるんだから、にくいね、このォ、色男ッ! 終盤、朝議にて、笏をトントン→御簾がスルスルあがっていく・・・ってとき、もう、「キターッ帝と殿のラブラブアイコンタクトタイム!」て思ったもんね。

てなわけで、私が萌えまくってる間にも事態はいっそう深刻化しつつ進行してまして、といっても、将軍家やら薩摩やらを割愛して、会津と長州と象山先生くらいなもんで状況説明をしてるので、だいぶあっさりしすぎてて逆に切迫感が伝わらないのでは?て感じにもなってきましたが、実際、当時の会津は全体を俯瞰してどうこうっていうよりあんな感じだったのかもしれない。目の前だけを見て対処するのが精いっぱい、ってうちに事態が急展開していくっていう…。

当初はただ「帝および都の治安を守るためにただ粛々と」という感で入京した会津藩士たちが、今や別のありさまだ。秋月さんが「去年の8月を無駄にしないためにも会津が京から追われてはならない」と言ったり、有象無象の会津藩士たちが今すぐ戦うべしと沸騰したり。先週は容保も、長州への武力行使を自ら口にしていた。それはもちろん、長州の過激派たちが思い切り容保を狙っているからではあるんだけど、ああ、誰もそんなことを望んでいなかったはずなのに、すっかり、渦中の人になっている。

中村獅童演じる佐川官兵衛、彼には勇ましさや脳筋的な煩わしさだけでなく、どこか愛嬌も感じられてなかなかいいなと思うんだけど、三郎を意気に感じた彼が山本家にやってきて、「十六の子に命を捨てろとはいえない」というシーンがあった。明らかにのちの白虎隊を視聴者に想起させるセリフだ。もう、そう遠くない(泣)。

頼りにすべき一橋慶喜は「うわーこういう奴が一番最低なんだよね!」て対応に終始。今回会津藩上層部が「一橋公の尻を蹴り上げてでも…!」と言うシーンには「そーだそーだ、蹴り上げろ!」と熱く首肯したが、息巻いて参じた会津藩側を苦も無く煙に巻く慶喜のカミソリ頭っぷりにはそれはそれで痺れた。小泉孝太郎の人でなしっぷりも板についてきました。