『八重の桜』 第2話「やむにやまれぬ心」

今年のOPは、綾瀬さんのPVみたいな映像が斬新すぎて、慣れるまでに時間がかかりそうなんだけど、最後、緑の草原にピンクの傘がひらいてゆく絵はすっごくきれいで、目を奪われるのみならず、胸にくるものがありますね。みんな後ろ向きだから顔は見えないんだけど、つまり、名もなき多くの会津の人々が故郷に花を咲かせる…て感じで。そのバックの音がささやかで落ちついたピアノだけってのも、いいですよね。…と見とれていたら、トメグループのクレジットに注意がまわってなかったようで、吉川さんが出てきたときはびっくりしました。

そう、吉川晃司の西郷どん、初登場。これはこれでいいのかも、と思わされた。まず体が大きい。挙措もゆったりしていて、とにかく大きな印象。塾生や少年に対して柔和さ、大らかさを示しつつも、佐久間象山と相対すると既に相当な切れ者っぷり。「つかみどころのなさ」が個人的な西郷像と合っている。吉川さんの端正な容貌からは鋭さも漂うんだけど、会津を描く今回の大河で西郷はいわば敵の総大将だから、それも計算上なのかも。

吉川晃司という人はもともと相当の歴史マニアらしく、本業の役者でなくして、2009「天地人」以来、こう早く再び大河に呼ばれたのは、歴史に対する敬意が仕事ぶりに現れているからじゃないかな、と想像する。

初回、あれほど魅力的な繁盛ぶりを見せていた佐久間象山塾が、もう事実上の休業…諸行無常でごぜぇやす。勝さんが額をもっていくくだりはなかなか粋だったと思う。数多の志士が道半ばで斃れようと、志を継ぐ者の絶えなかったのが幕末だ。

中の人は途中で大人になりましたが、八重ちゃんはまだまだ小さな娘っこ。いまだ特に何をするでもなく、鉄砲への思いだけを募らせています。兄の覚馬がその思いを汲んで道を開いてやる、という流れに説得力がありましたね。国を出て広い世界を見、さまざまな人の「やむにやまれぬ思い」に触れた彼。それが必ずしも成就しないこともまた、見てきたわけだが、それでも「やむにやまれぬ心」の尊さに対する価値を少しも減じていない、否、だからこそ「本当の、やむにやまれなさ」に尊さを見出したかのように、妹に鉄砲を渡す・・・という。

この「やむにやまれぬ心」は、一見、先週の「ならぬことはならぬ」と対立する概念なんだけど、初回、会津戦に臨む八重は「ならぬことは、ならぬのです」とも口にしていたわけだから、両者の相克だけでなく、いずれは両者を両輪として進んでいく八重を描いていくのだろうなあと予想。

八重を見て「やむにやまれぬ心で描いている」とつぶやく覚馬の脳裏に浮かぶのはそう口にした少年…つまりのちに八重の伴侶となる新島襄で、多少わざとらしくはあったけど、こういう序盤で登場させるのは定石だし、黒豚騒動、面白かったですよね。映像。2話めでああいうわちゃわちゃした映像を作るのも、大河ではよく見られる気がします。

ともかく、最初の夫となる尚之助とも、のちの夫となる襄とも、覚馬が導き合わせるような演出(実際にそうだったんだろうけど)。八重に鉄砲を指南することといい、よくよく、大きな役だ。

父母が鉄砲をやることを簡単に許さない描写で、スイーツがのさばらない(失礼)ことを喜んでいたら、「あんなに止めてるのにどうして八重が鉄砲をやりたがるのかわからない、説明不足」という感想をちょいちょい見て、ええっそうなの?と驚いた。

そもそも好きって気持ちを他人に理性的に説明することなんてできないし、みんなに理解されないのにやりがたるってのこそ、やむにやまれぬ心。そういう性質をもった人だから歴史にも残っているんでしょうよ。と自然に理解できる展開になっていると思うけど…。

それにしても、鳥を撃ってとどめを刺すところを見せ、あきらめさせようとするのも重みがあってよかったが、その裏での、総領息子とのシーン…よかったねえ、マッチゲさんお父さん。ど、ドリフ?!みたいに八重の落書(勉強)の山が頭を直撃するのに、苦虫をかみつぶしたような顔をぴくりとも動かさない絵も良かったし、その後、洩らす述懐にぐっときた。八重の願いをむげに却下してるわけじゃなく、彼女の素質を認めた上で、だからこそ、へたにモノになったら「いずれ、せづねぇ思いするだけだ」。「切ない思い」って表現に親ごころを感じたわー。脚本の山本むつみさん、こういうところ本当にうまいよね。

お城パートでは、意外なことに、2話目にして西田敏行が欠席。つーことで、クレジット大トメは奥田瑛二でした。同じくトメグループに入る稲森いずみが登場したんだけど、2008年「篤姫」から5年経ってるというに、稲森さん老けないな!! 時が止まっているかのようだ。で、この照姫って人のことも、妹の敏姫も、わたし全然知らんのやけど、何なの!? いずみ様ご吟詠のお歌といい、あの3人にみちみちた切ねぇオーラは?! 

西島・綾野両氏の月代のすがすがしさ。獄中の小栗さんのくるぶしの無防備さ。(←だからどうした)

一途な思いを口にする綾瀬はるかはすごい安定感。と同時に、「早く八重バージョンの福田彩乃が見たいな」なんて思いも胸をかすめる…。