面白いドラマをありがとうアワード2012

id:einfall さんの企画(面白いドラマをありがとうアワード2012)に、今年も参加させてもらいまっす!

1.2012年にテレビでオンエアされたドラマで面白かったもの3つ

● 『ゴーイングマイホーム』(10−12月クール)
日本映画界の宝・是枝裕和が、脚本・演出・編集を一手に請け負った奇跡のドラマ! 毎週まいしゅう「ごちそうさまでした、贅沢しました」 「お金も払わず、すんません」とテレビの前で額づいてました(嘘)。豪華キャストはもとより、音楽担当のゴンチチ、売れっ子フードコーディネーター飯島奈美の容赦ない使いっぷり、どこの世界遺産?!的なクーナの森での撮影…そして激務の是枝さん…この贅沢すぎるドラマが通常比どれくらいの予算で作られているのか、関テレは詳細を開示してほしいです。もしや、「是枝さんとできるなら」と、ギャラめっちゃ安かったんじゃ?! 

笑いとペーソスのバランスが絶妙で、父、倒れる→死去以外、たいして何も起こっていないようなのに確実に何かが変わっていって、いつのまにか阿部サダヲのクーナ劇場にキャッキャウフフし、「見えるものだけでできてるわけじゃない」とか、「後悔するとは、そこに愛があるということ」などのトンデモ論まで全肯定してる自分がいました。新井浩文笹野高史阿部サダヲ新井浩文バカリズム笹野高史、そして加瀬亮…脇の脇まで完ぺきな世界観ができていた。終わった後も大切に大切にしたいドラマに巡り合える幸せ。ドラマ界の明日のために、記録的低視聴率を覆す高評価がもっともっと必要です!

● 『リーガル・ハイ』 (4−6月クール)
自分の周囲では4才の女児からアラフォー男子に至るまで古美門のマネしてました。ちょっと毛色の変わった法曹コメディかと思いきや、一点、爪で引っ掻かれる感じが快感だなーという掴みだったのが、回を追うごとにエッジが鋭くなってゆき、水戸黄門木枯らし紋次郎のBGMの多用、「滝川クリステルの真似や長澤まさみのエロスと比較してクサされるヒロイン新垣結衣」、「離婚した妻役で出てきた鈴木京香が見せたビターなラストシーン → 次回予告が盛大なオチに(「八ツ墓村」パロディ色満載、しかも最終回でもないのに予告が超長い)」などやりたい放題に。

なんといっても度肝を抜かれたのは、第9話、堺雅人の独壇場! 「あなたたちは国に棄てられた民、“棄民”なんです」 「これがこの国のなれ合いという文化の根深さ」 「大企業に寄生する心優しいダニ」 「きっともう問題は起きないんでしょう。だって絆があるから!」 今年のっていうより、ドラマ史にとんでもない1ページを刻んでしまいましたよね。テレビはここまで踏み込めるのか、と震撼とさせられました。それでいて、あの最終回ラストのくっだらねードタバタwww 

● 『最後から二番目の恋』 (1−3月クール)
キョンキョン中井貴一の豪華顔合わせが実現! とはいえ、はじめのころは大人の女子会で嬉々として交わされるセックスだ閉経だの会話に「岡田さん、イイコちゃんに終始した『おひさま』の反動がここで一気に…!」とチョイ引いてたんですが、回を追うごとにどんどんステキドラマに。キッチリ作りこんだ中井貴一、自然体のキョンキョン、まさかの暑苦しくない坂口憲二、不思議ちゃんなのにかわゆい内田有紀…年を重ねることへの肯定感にみちていて、登場人物たちみんなが愛おしくなってゆきました。

仕事に遊びにと飛びまわる都会も、美しい自然の中で暮らす鎌倉も、どちらも映像がきれいで、劇伴音楽も洒落たものが多く、宮本理江子の演出ってやっぱり好きだなーと再確認。さみしさを抱え、それでも前を向いて生きてゆく、かわいくてデリカシーのある大人たちの会話を、生活を、これからもずっと見たかった。なのに、秋に放送されたスペシャル版を見逃したアタシ、撃沈。再放送はいつだーっ!

●その他、所感。『カーネーション』の後半もとんだ面白さだったんですが、去年、前半に票を投じたので、今回は遠慮してもらいました。清盛? ああ、大河ドラマは私のライフワークなんで(え)、ちょっと別枠ってことで。朝ドラと大河は主催者さまが統括してくださるようですし。選んだ3つは、いずれも「とっつきやすいのに深さも備えた、大人が見ても面白いドラマ」だと思います。それでいて、それぞれカラーが全然異なっていて、どれも新鮮に楽しめました。しかも、あにはからんや、すべてフジテレビ系での制作・放送ではありませんか! 「ハングリー!」とか「結婚しない」とか月9とかやってるからって、あんまり悪口ばっかり言うもんじゃないですね(苦笑)。来年もバラエティ豊かにやってほしいもんです。あと、自分の好きなドラマが軒並み視聴率が低くてうれしいのは、最終回が通常枠(拡大なし)で終わることですね。次点はNHK『負けて、勝つ』です。



2.2012年ベスト脚本家
古沢良太を挙げます。ヘタな社会派ドラマなんか足元にも寄せつけないド迫力の長セリフ!だけでなく、すべての回において批評意識の高い人間観察・社会観察を完全無欠のコメディに落とし込む手腕。脱帽でした。その他、「カーネーション」の渡辺あやは、3月のマリネーションまで含めて完ぺきだったんじゃないでしょうか。映画畑の人がいきなり連ドラ、というハードルをいとも軽々と飛び越えたのは是枝監督も同じです。才能ばんざい。



3.2012年素敵だった役者さんたち

松山ケンイチ平清盛) 、個性的な演者が多い中、あのドラマの独特な世界観にあまりに自然に溶け込んでいた松ケンさんの評価が二の次になっていましたが、大河ドラマの主役を担うにふさわしい人材であることを一年間かけて証明してくれました。晩年のエロボケクソ爺ィっぷりには「あれ? 上川隆也より年下だっけ?」 「てか20代?」と驚愕する視聴者続出。

堺雅人リーガル・ハイ、大奥) キャラ芝居のうまさは予想できたものの、まさかここまで徹底してくるとは! 第9話の長セリフのこなしっぷりは、他局の安住アナをして嫉妬させ、番組でみずから再現せしめる完ぺきさ。リーガル・ハイ終了時点では、これで3か月後に有功って言われても無理でしょ、と思ったんですが、こちらもさすがでした。守備範囲広すぎ…!

窪田正孝平清盛、大奥、リーガル・ハイ) 今年のマイ新人賞 アンド、薄幸 オブ ジ イヤー。平清盛では「三つの平」や「忠ならんと欲すれば…」など、あの若さで古語の美文を次々と聞かせつつ胃に盛大な穴をあけ、大奥では愛すべきお調子者として見事な上様キックを誘発。しかも両方で涙なしには見られない死に際を演じ切りました。そういや私は未見ですが、「走馬灯株式会社」では縊死まで演じたそうじゃないですか…! リーガル・ハイにもゲスト出演してました。ジャンゴジャンゴ東久留米でしたっけ?

玉木宏平清盛) 今後軽く20年、源義朝といえばこの人の顔が即座に思い浮かぶに違いありません。考えてみれば、頼朝や義経や悪源太(義平)や範頼、個性的すぎる息子たちをもうけた男が英傑でないはずがないもんね、という説得力が全身からみなぎってました。御曹司で、野性的で、種馬的で、悲劇的で…武将オーラをこれだけまき散らしてくれるとは嬉しい誤算。見てるだけで妊娠しそうでした。

天海祐希カエルの王女さま、結婚しない) あまみんにこんな仕事ばっかりやらせて恥ずかしくないのかフジはーーー!と声を大にして言いたいですね。来年の『女信長』が危惧されてなりませんが、姐さんはどこまでも頼もしく、看板しょって矢面に立ち続けるのです。「あの鐘を鳴らすのはあなた」の独唱ではステージを掌握するトップスターの貫録を見せつけてくれて胸熱でした。

中井貴一平清盛最後から二番目の恋) 清盛初回での童貞臭い演技(20代設定)、吹石さんのオパーイにドギマギしてるとこなんかがうますぎる50歳! 「王家の犬」なのにとんでもなくエレガント。最後から〜では、出てくるだけで何か笑わせてくれるんじゃないかとわくわく。月9にサラメシにNスペ中国文明に、そして映画も、と大車輪の活躍で、一年間にわたって熟練の技を見せつけてくれました。

麻生祐未カーネーション、大奥) かつて豊満な肉体を水着に押し込めてグラビアも飾っていたお嬢さんが、まだこの若さ、この美貌にして、次々と老婆の役を引き受けるとは、誰が想像したでありましょう。カーネーションのかわいらしい千代さん、大奥の恐ろしい春日局も、それぞれまったく違う芸達者さで、忘れ難いものを残してくれました。

綾野剛カーネーション) DV男だったり変人だったりヘタレだったり、およそ好感度とは無縁の役者、朝ドラで主人公と不倫を演ず。清新さあふれるフェロモンの攻撃力は甚大で、女性視聴者たちのハートはまんまと撃ち抜かれてしまったのでした。あれ?「おいも好いとっと」は、どーして、流行語大賞にノミネートされてないんですか? 

●その他、投票外の次点として挙げておきます。今年のドラマの顔、というにはちょっと違う気がするけど、個人的なツボでした役者さんたち。

以上、来年もおもしろいドラマが見られますよーに!