『ゴーイングマイホーム』 第4話

だめな男・だめな父とさんざん突き放していたようなのに、いざ目覚めてみれば自分の名前を覚えていなかったことに拘り続けるYOUの“真性かまってちゃん”ぶり(そんな自分にちゃんと尽くしてくれる夫を得ているちゃっかりっぷり)。

主治医の穏やかでない病状説明にはおろおろし、怒ったり責めたりする娘に対しては夫をかばい、ホテルに戻れば親しい相手(姉だっけ?)とあれこれ長電話する中で「目覚めないほうがよかったわよー」なんて言ってみる、吉行和子のあの年代の人らしい母っぷり、妻っぷり。

脚本も芝居も超うまい。宮崎あおいが病室を出るや「顔は似てなかったわよね」と早速始め、小指を立てる娘に「やめなさい、レディーが」。あんな身も蓋もない娘に「レディー」扱いしようとする滑稽さよ!

良多(阿部寛)と萌江ちゃんの絡みが良い。娘っていいな、と思いながら見ている若い男性も多いんじゃ? ドラマ開始時には、母と一緒になって父の「図体に反した小ささ」をからかったりもしてた萌江だけど、長野に来てから父のほうと心が通じてきている。将来の夢を「科学者」、と言った娘に「へぇ。パパといっしょだ」と返したあとの阿部ちゃんがなんともいい顔をしていた。優しく、切ない親の顔。ラスト、萌江ちゃんの寝姿にうちの小さな息子2才が重なってきゅんときた。あんなに大きくなっても、まだ、寝てる時はやくたいもなくかわいらしいのね。

山口智子は芸風に無理のない役をもらっているんだけど、運転手サダヲの与太話を鼻で笑ってる顔とか、病室で「お嫁さん」をやってる姿とかうまくて面白かった。うちの夫は、病院のカフェテリアで阿部ちゃんと合流後、会話してるシーンにやたら感心。

このドラマにあって、宮崎あおいはやや“演技してる感”が過剰な気がする。子どもと話しているときはそうでもないんだが、阿部ちゃんや父(西田敏行)相手のふくれっ面な感じが少し浮いているような気がして引っかかる。服の着こなしはさすが。西田敏行が診療中にかぶっている手編みふうの帽子、最高だよね!

ドラマでは阿部ちゃん部分だけしか映らなかったけど、萌江も夏八木さんから千円札もらったもよう。母親が作ったお弁当を級友に売っていた少女が、クーナの話を聞いてくれたお礼に祖父からお金をもらう。胸がギュッとしたらしく、父にも同じかと尋ねる。祖父、父、娘、科学者になりたい(なりたかった)三代。なのにクーナなんているかいないかわかんないものに惹かれる三代。アシスタント嬢に「この仕事で一人前になるのが先でしょ」と会話の流れでさらっと言ってのける妻。そこには「自分はれっきとした一人前」という自負があり、彼女が言う一人前とは、「目に見えるものだけに向き合う」潔さや強さだなんだろう。味噌汁に砂糖をドバドバ入れたり、モノにこもった“思い”なんか切り捨てる強さ。

一見、散発されているようなエピソードが、せりふが、絡み合い、積み重なってゆくのを、お酒と一緒に味わいながら毎週見てます。阿部サダヲが扮する「クーナ風」のクーナの愛らしさがこのうえない。