『大奥』 第1〜2話

原作の熱烈ファンである私。近年のぬるーい大河を見ながら、「んもう、こんなことなら、よしながふみの『大奥』を1年かけてやらんかい!」と、何度テレビの前で叫んだことか。しかし、吉宗編の映画がどーもイマイチ、原作の感動を体現しきれていなかったように感じたので、今回はかえって期待してなかったんだよね。キャストも、なんとなくことごとく、イメージと違うというか、まあ原作に親しみ過ぎてるんで誰がやると聞いても違和感が拭えないってだけだろうが。

でも役者さんたちはさすが。有功に堺さんとは、いくらなんでもトウが立ちすぎてる気がしてたんだけど、実際、あの清冽さを出せる大人の男、となるとなかなかいないもんねえ。しかし、ちょっと、顔、塗りすぎじゃね? あと、鬘がちょっと変…。月代つくればよかったのに。麻生さんの春日局は、そういう声色でくるか!!ていう新鮮な驚きが。原作の枯れ木のような春日に比べると、いくら老けメイクしててもやっぱりお綺麗な麻生さんなんだけど、すばらしい迫力で見入っちゃう。多部ちゃんの家光もちんくしゃなお小姓姿とキレのいいセリフまわしがいいですね。けどタイトルバックの女装してるときの口紅のどぎつい色が下品でイヤだ! 誰か柘植さん(「平清盛」の人物デザイン)連れてきて〜!

田中聖の玉栄は原作に比べると初手から精悍だけど雰囲気が良く出てる。出番は少なかったものの駿河太郎の明慧が原作よりも印象的だった。

ストーリーは熟知しているのでまったく冷静に見てしまってるわけだが、かなり原作に忠実に作ってる。というか、そもそも原作があまりの完成度なので、下手に弄ったりしないほうがいいにきまってるもんね。有功に女を抱かせるときの春日のセリフとか、すばらしいよな。

「その法衣の下には、弾むような若い男の肉体が熱く熱く息づいていること…」

「先ほどから女たちの白粉のふんぷんたる香りを嗅がされて、さぞその若いお体には男としての欲望がむくむくと…」

テレビドラマの職業脚本家もようよう書かないような迫力のあるセリフであることよ。麻生さんの抑揚も見事だった。「種」の連呼や、玉栄のレイプも仄めかすあたり、これ、ある種のローティーンの女の子とかがドッキドキしながらドはまりして見てそうだなあ。

惜しむらくは、これは吉宗編の映画もそうだったんだけど、真面目に作ってあるのはいいんだが、ちょっと真面目すぎるというか“息つく”ところがほしいな、と。原作ももちろんシリアスなんだけど、よしながふみのマンガって、ところどころで細かい“抜き”があって、それがまた見事な緩急につながってると思うのだ。あと、家光編だけで、3か月作れるもんかね? 濃密だけどすごいスピード感なのも原作の良さなので、間延びしちゃったら嫌だな。