「あさイチ プレミアムトーク」中井貴一

そういえばこんなに長いキャリアのある人なのに、トークって聞いたことなかったかも。冒頭、視聴者からの「中井さんはどんな人なんですか?」という身も蓋もない質問に答えて「この仕事を長くやってるので、自分がどういう人間なのかわからなくなってるんですよね」という答えに妙に感心してしまった。

確かに、口調から仕草から思考回路から、その人間を役者自身の中に取り込んでいるからこそ「何をやっても役そのものに見える」わけで、次から次にいろんな人間を演じる間、もとの自分は隅に追いやられるのかもしれない。意外と、役者に限らない話にも思える。私も、長いこと経理をやってた間、会社(特に営業まわりの人)では細かい人、几帳面な人だと思われて、自分でもすっかりそのつもりになってたもんなw

とはいえ中井さんの場合、「こういう場(トークにしろ舞台あいさつにしろ)では、必ず自前でコーディネートしてきます」という格好は頭(メガネ)からつま先まで超おしゃれだし、喋りは凄いし、すごくきちんとした、真面目な人だということは丸わかりだ。ちょっともう、ややもすると教条チックなんじゃないかっていうぐらい、穏やかな口調ながら、確固たるご自分の信念を滔々と語ってらした。

その間、この偉大な俳優の言葉から何かを学ぼうとばかりに真剣な表情で相槌を打っているイノッチと、「もっと軽ーい、面白ーい話が聞きたいなー、視聴者の奥様方もきっとそのはず〜」と、隙あらば話の方向を変えようと企んでいるような笑顔の有働さんとが対照的で、久々に見たけど、相変わらずいいコンビだと思った(笑)。

話の中で印象深かったのは、若いころ半年以上まったく仕事のないことがあり「こうやって引退していくのかなあ。これからどうやって生きて行くんだろう。」と本当に追いつめられたということ。その後初めての仕事がNHKのドラマで、「仕事があるって本当にありがたいことだ」と感じたということ。人間としての引き出しを増やすことを心がけているということ。役者は生業(なりわい)、食っていくための仕事であって、ひとりの人間として生きて死んでいくんだということ。

後半では多少、茶目っ気のある部分も見せていたかな。「サラメシ」の台本にどういうアドリブを入れているかというのがわかるフリップがとても興味深かった。アドリブも人間としての引き出しだよね〜。