『平清盛』 第39話 「兎丸無念」

先週は、キャストがふたり、「スタジオパークからこんにちは」にゲスト出演するのを見ました。

まずは森田剛くん。終始はにかんだ笑顔で質問に答えてた。ほんとはこーゆーの恥ずかしいんだけど、嫌がってるわけじゃないんだよ、て感じの照れくさそうな応対に、いろんな仕事・経験を積み重ねてきた大人の男のかわいらしさがあった。蜷川幸雄演出、三島由紀夫金閣寺」の舞台化のときのVTRが少し流れたのが見られてうれしかった。ホントすごい顔しますねこの人。「これからの夢は?」とか「30代にやっておきたいことは?」みたいな質問に軒並み「ないです!」ときっぱり答えていたのもなんか良かったですね。紋切り型でお茶を濁さない正直さ。時間が空くと、四国の八十八箇所を廻っているそうで、それも個人的に好印象でした。

次に神木きゅん。きゅんきゅん。今春、高校を卒業して社会人一年生なんだって。長い芸能活動でスレきっててもおかしくないところ、ほんとにフレッシュマンそのもので、背筋をぴしっと伸ばして座り、「ハイ、ハイ」とさわやかな相槌。これまでの道のりや、やってきた役についても饒舌に話す。演技をすること、演技プランを考えること、現場にいること、すべてが楽しくて仕方ないって感じ。うんうん。君の未来は無限に広がっているよ!!! 森田くんのときは、時間が短縮ver.で共演者やスタッフの登場がなく残念だったんだけど、神木きゅんには、相棒の弁慶役・青木崇高さんがメッセージを寄せていた。仲良く絡んでいるようです(笑)。

さて、今日の本編はそんなふたりの出会い(正確には再会)から始まりました。アナウンサーによる「今日のみどころ」はなしで、8:00と同時にいきなりべべん、と三味線が鳴り、「大河ドラマ」と右下にテロップが出て五条大橋。絵巻物さながら扮装で対峙するふたりが、静から動へと転じ、立ち回りを始めると、しわがれた声の義太夫(って義太夫はこの時代まだないですよね)が「五条大橋のうんたらかんたら〜」と謡い出す。激しい殺陣、緊密さを増す三味線・・・! 焦らされただけあって、すげーかっこいいシーンでした。あとでまたリピるよ☆

下駄を脱ぎ捨てる弁慶、被り布を払い、弁慶の刀を奪って橋の欄干に飛び乗る遮那王、力で圧倒する弁慶と速くて軽やかな遮那王。最後は泣き所をビシッと打たれた弁慶がコミカルによろけて、勝負あった・・・という流れは基本的に「五条大橋」のセオリーに添っていたんですが、途中、赤い禿の群れが現れたかと思うと散っていったのには意表を衝かれました。言ってみれば、ある種、苔むしたような、カビくさいようなお約束の物語が、あの一幕によって、非常に鮮やかで幻想的なシーンに仕立てられたと思います。

ところで弁慶、どーして君が源氏再興なんか夢見ているのかね? いまいちよくわかりません。確かにこの人、ダメ義時代から源氏に執心だったが・・・弁慶だけに、義経が生まれる前から”判官びいき”を地でいってる、ってことなんでしょーか。

さてオープニングテーマを挟んだ後は、今日はひたすら陰鬱でした・・・最初の万灯会は、さすがは「平清盛」のスタッフ陣の仕事で、とってもきれいだったんですけどね・・・そこで妻子と仲良く灯を灯している加藤浩次の姿が、加藤浩次なのに、なんだか切なくなってくるぐらいに、最初から不吉な予感にみちみちていました・・・

てか、ARATAさんの一世一代・崇徳院怨霊化公演のときより、ずっと怖かったですよね? ホラーでしたよね? 壁に耳あり障子に目ありの禿さんたち・・・摂関家のマロ兄弟・弟が「清盛入道の作りたい国の形がさっぱり見えません」と言ったあと、兄の家電が今日はどんだけ口汚く罵るのかと思いきや「口を慎め」と袖で口元を覆って・・・ギャーッ、御所(または摂関家の邸宅)の床下から禿がふたり、顔を出して目を光らせてる〜〜〜!って、あれマジで気持ち悪かったわ。子供のころに見たらトラウマだったと思うわ。

そんで兎のおっさんはね〜。先週のあのラスト、そして予告を見た時点で、「ああ、禿の手にかかるんだな」と予想はついてたよね。この流れできたら、それが一番ドラマチックだしね。それでもなんか、けっこう悲しかったよね・・・見た目も演技も加藤浩次なのに・・・。や、メッタ刺しになるとこもなんですが、その前の、清盛に失望して、見切りをつけるシーンから、もうだいぶ悲しかったんだよなあ。

しかし、考えてみれば、加藤より15才も年下なのに、フツーに「何十年も一緒にやってきた」感をかもし出してる松ケン。すげーな。

最初は今作における飛び道具・・・ていうか、キワモノ・ゲテモノだと思ってたのに(一概にけなしてるわけじゃないです。大河には例年、そういう枠があるもので、それも楽しむのが大河ファンの王道だと思ってるんで)、いつのまにか、兎一味をフツーにあの世界の構成素として見てたんだなー、と。ま、正直、これで(アバンタイトル以外の)一話をまるまる費やすか?と思わんでもなかったけど・・・。桃李(松坂くんじゃないよ)が清盛を睨む目つきがすんごかった。あそこで、「恨みます」とか「あんたのせいよ!」とか「どうしてこんなことに!」的な、へたなせりふを言わせなくてすごく良かったなあと思います。無言の睨み。痛ましかった・・・・。

そうそう、凶行の現場はこちらも五条大橋ってことになってましたね。ちょっとあざといけど、でも印象づいちゃったぜ! これから先、どこで「牛若と弁慶の橋の上の出会い!」てなったときも、兎のおっさんが赤い禿にやられたこと、セットで思い出しちゃいそうじゃないですかぁ・・・

「禿のこと、あれでいいと思っているのか」と兎丸に聞かれて「いい」と答える清盛。「やれやれ、海賊のお頭さまは義に厚すぎて困る」とこぼす清盛。これが主人公のせりふか!と、近年のなまっちろい大河を見続けてきた身には、主人公の黒さがうれしくすらあるんだけど、やっぱり私が求めているのは、カタルシスに続く極悪非道なのかも。

大病をして、白河院の伝言「そちはまだ知らぬ、昇りきった果ての景色を」を受けて蘇ったあと、清盛は独りよがりなんだよね。みんなのための孤高じゃないの。俺が俺がの福原引きこもりちゃん。大事なものを置き去りにした、からっぽの志。死んだ忠盛(や信西、義朝ら)の志を継ぐため、「この国の頂に」と言い続けているけど、いま生きている者のことは見えてない。兎丸のことも、死んだらやっと大事にできるの(この辺、人柱じゃなくて経を埋めたエピソードとのからめ方はうまかったよね)。

おかげでみんなボロボロですよ。亡き父の話までして諌めようとした盛国も、一門の姿を正しく見ている時子も、結局、巨大なるもののけの影に飲み込まれて「ともに落ちる」覚悟を固めるのみ。重盛の打たれっぷりは言わずもがな。そして時忠・・・あんな悲愴な顔で「平家にあらずんば」と腹を決めていた男が、あっさりとお役御免になった今、何を思っているのか。赤い羽衣を火中にする表情がまた、すごくてね。来週以降、彼はどう出るんだろう、と。

兎丸を殺した禿たちが、「うふっ。僕らやりましたよ。褒めてもらえるんだろうな〜わくわく」といった笑顔で、柱の影から平家をのぞいている姿も怖かったですね・・・。「禿は始末しろ」って、どうやって始末したのか具体的に描かないところも! 事を分けて話したところで通じるわけもなさそうな、あの純粋で残酷な子供たち。時忠はどうせざるを得なかったのか・・・。

このまま、「驕る平家は久しからず」路線をひた走るのはつらいなあ。重盛がムムムのあたりで目を覚ますんですかね。「これじゃ、滅ぼされるわけだよ・・・」じゃなくて、「やめてやめて滅ぼさないでー!」て感じでいってほしいよな。黒くても坊主でも、最後まで主人公を魅力的に描いてほしいものだ。