『あやつられ文楽鑑賞』 三浦しをん

あやつられ文楽鑑賞 (双葉文庫)

あやつられ文楽鑑賞 (双葉文庫)

4回目とか5回目とかの再読。あれ?この本についてブログの記事にしたことないみたいね。

文楽が大好きな三浦さんの取材本。三味線さんや人形遣い、太夫(浄瑠璃を語る人ね)にインタビューし、劇場をレポートし、上演前の楽屋にお邪魔し、四国は香川、内子座での地方公演を見に行く。名作とされる「仮名手本忠臣蔵」や「女殺油地獄」のあらすじの一部始終を解説すると同時に自分の解釈や感想も述べ、文楽から派生した芸能である歌舞伎や、重なるところのある落語を聴く。江戸時代の人が書いた文楽の本を読む。…など、さまざまな角度から文楽にスポットを当て、その魅力をあますところなく語ってゆく。

まだまだライトなファンで詳しいわけではなくても歌舞伎が好きな私だから、もともと平均的な日本人よりは文楽に近いところにいるのかもしれない。それにしても、これ1冊読んだら、文楽が見てみたくなった、というか、むしろすでに見たことあるような気分になった、しかも昔から大好きだったような気にさえ…。ここまでお調子もんの読者は私だけにしても、きっと、読み終わったあとは、読む前より文楽をぐっと身近に感じること請け合い!

それにしても、三浦さんて、取材する能力(聞き出す能力)にも優れているんだなあとつくづく感心する。また、名作の詳説・レビューは、感受性と思い入れの鬼・三浦しをんの真骨頂。読者をぐっと、文楽の作品世界に近づける。歌舞伎と文楽とを比較する章もすばらしく、分析力と表現力とに舌を巻いた。