『平清盛』 第34話 「白河院の伝言」

清盛クラスタの中でも賛否両論わかれた回でしたが、面白かったです! 確かに、「表の歴史」は何ひとつ動いてないし、長い回想シーンに閉口した人があったのもわかる。大河ドラマとはいっても、ここまできたらさすがにそうそう時間を無駄にできないんじゃないの、あんなこともこんなこと控えてるんだし、とも思う。

でも、こういうことに重心をおきたい、というのが今作の作り手の意思で、意思があるからこそクオリティがついてきてるって感じがして好もしい。脚本家は熱情を書くのがうまいし、松ケンは言葉に熱情を宿すのがうまい。随所にネタがちりばめられてるのも良し♪

人間50年・・・といえば信長ですが、これは幸若舞「敦盛」の詞章で、敦盛は清盛が弟・“影薄盛”こと経盛の子なんですよね。つまり“人間50年メンタル”はたぶん平安時代から存在していたはず。50の賀の直後に病を得、生死をさまよう中で母の胎内に帰り、霊界の人である実父との対話を経て俗界に生還した、という筋書きはとてもドラマチックだと思いました。

ところで、最近、和歌に現代語訳をつけるような親切心を発揮しているのですから、清盛の病についてもちょっと字幕解説など出せばよかったのに。スバクって言われても脳内で漢字変換もできないよねぇ。「寸白=サナダムシ」の一言でもずいぶん理解が違ったと思うが(笑)。あと、先週あたりからさかんに「平相国さま」と呼ばれているんだけど、相国とは?!てのも、アバンタイトルでも解説やってないよねぇ? 

もとい、枕頭につきっきりなのが正妻でも侍女でもなく盛国ってのが香ばしい「平清盛」の世界です。ご丁寧に「殿が死んだら俺だって生きちゃいねぇ」的なことも言ってましたよね♪(←何この音符)

清盛重篤の報は内外に衝撃を与えます。家電関白は八条院−以仁の(義)親子と連合して清盛に対抗する気まんまん。弟の(つくづく兄弟の順序がわかりにくいわこのふたり・・・)相島右大臣は何やら微妙な顔をしています。過ぎし日に同じ源氏の義朝から平家に鞍替えした頼政は、清盛が死んだら再び寝返る気まんまん。裏切りに次ぐ裏切りを画策しながら、日和見でも、ノータリン(死語)でもなく重厚な宇梶さんっていう人物造型が面白いですね。

常磐は牛若に「そなたのホントの父は・・・」って、ナルホド牛若が勝手に清盛を父と思いこんでいただけじゃなく、常磐も敢えてその勘違いに乗ってたのね。実は滅びし源氏の棟梁が父で、しかも滅ぼしたのは母を意のままにしてた清盛だなんて知ったら、確かに教育上よろしくないもんね・・・・・・・・って、おい!!! だったら意志を貫いて! 百歩譲ってタイミング! せめて確実に死んでから!!

かくして、寸止め食らったあげく、「途中まで言ってしまったからには仕方ない・・・」と言わんばかりに寺ゆきを命じられる牛若ちゃんなのでした。このいきさつはなかなか奇抜でしたね(笑)。ま、憂いを帯びた武井咲ちゃんが超きれいだったんで、これでいいです、ってのは半分冗談だが、そらやっぱり常磐としては「誰に抱かれても心は義朝のもの」だから、その血を引く子どもを守りたい気持ちと真実を告げたいとはずーっと激しく葛藤してたはずだよね。で、これを見て思ったのが、先週、さらっと流してた「今は一条長成の妻に」のなりゆきについても、たぶんあとで解説やるな、ってこと。

ともかく、来週からは、桐島…じゃなくって、一男…じゃなくって、牛若…じゃなくって、あ、牛若でいいのか。神木きゅんが登場でっす! きゃいきゃい♪

源氏といえば、肝心の御曹司こと伊豆の流人・頼朝なんですが、今週も自宅警備員です。病みっぷりが真に迫っててコワイよ。メイクだけであんなにやつれるもんだっけ? 多少痩せた? 内外の誰もが「もう清盛だめぽ」とあきらめかけてる中、この人だけ「死ぬわけないじゃん」と笑い飛ばしてるのがコワい、いや、面白かったですね。てか杏ちゃん、早く助けてあげてーっ。挙兵は当分しなくていいから、とりあえずケコーンしてあげてー!

てか、金太郎みたいにかわいい少女・政子が、どうやったら第1話での妖怪チックな風貌になるのであろうか…結婚して眉を剃ったらいきなりアレに?

平家一門はいつものモリモリ困った会議です。「騒ぐでない!」と深キョン時子が一喝するのももはや見慣れた光景…あ、今日は女子部の会議もやってましたね。未亡人になった盛子ちゃんがお見舞いに来たのは「平家物語」でも読んだエピソードですが、11才で嫁ぎ、1年で夫を亡くす不幸に見舞われた彼女が気鬱の病になった説はとらないんですかね、このドラマ。

あー、いつかコイツが波風立てるんだろうなーと思ってたとおり、重盛−宗盛の異母兄弟の間に波風を立てたのは時忠だった! 「姉上のために言ったんですよ〜」ってセリフは、先妻・明子の死後、時子を後添えにしようとしてたときと同じで、確かに我が身かわいさもあろうが、実際、深キョン姉ちゃんへの愛情もあるんだよね、たぶん。それにしても、いるよね、こういう痛いトコ突く才能にあふれた人って。「腹を痛めた子と重盛、本当に同じなんですか」と聞かれて黙っちゃう時子…。宗子−清盛−家盛の関係を覚えているだけに、胸がチクチクします。

そして、元から暗い子だったけど(爆)、血の濃い3人がひそひそ話してるのを見て、すーっと表情を硬化させる重盛がぁぁぁ。てか、重盛には、盛国とか藤九郎とか弁慶的な、愉快な従者はおらんのかね? せめて元モー娘。の奥さん! 歌って踊って盛り上げてやって〜! そしていい加減に重盛のクレジットはピン(1枚)で定着させてやって〜!

で、真打ちのゴッシーですフフフ。うなじにおできを作ってます。おできのひとつやふたつ、ものともしない、すげー麗しいうなじです。快癒祈願と称して熊野旅行です。滋子ちゃんも一緒。と、そこに清盛倒れるの知らせ。「すぐに帰る」と滋子ちゃん即決。「清盛が死ぬ…?」とゴッシーは茫然自失です。続いてさめざめと泣いてのたまうことには、「清盛が死ぬのが怖い、清盛がいるからこそ自分も生きていられる」って、エエエエエエエ!♪(←なぜか音符もつく) 熱烈な愛の告白を聞かされるお妃の立場ナッシング。

取り乱しまくりのゴッシーを見て、近臣の西光と成親の胸もざわめいています。しかし西光は清盛のこと怨みすぎのきらいがあるな。叔父を殺すハメになっても信西のまつりごとを支持し続けた清盛はどう考えても志あるだろ。んで成親、金がすべてだなんて、オマエは正直すぎ!

相変わらず盛国に看病されながらエビぞりになって苦しんでる清盛は、いつしかあたたかな母の胎内へ…。ここから長い回想シーンなんだけど、編集もうまいし、新撮ともしっくり馴染んでて、すごくよくできてると思いました。既撮の分はもちろんすべて覚えていたけど、全然退屈せんかったな。なんせ、第1話はどこを切っても意味深い、長い物語の壮大なプロローグだったんだなあと感慨深い。

初回では最初から“おたずね者”扱いで、ぼろぼろの姿で登場してた舞子。あれ以前には、ささやかな幸せを満喫していた日々があったんだね。若くて、身分もなくて、おそろしい人のおそろしさを知るよしもなかくホヤホヤと笑っていた彼女を見たあとでは、暗転した運命の中、必死に逃げまどい、たったひとりで産んで、なんとかして子どもを守ろうとする姿が、なおさら胸に刺さった。その分、貴一パパ盛がなおさらかっこよく、救いの神に見えた♪ このときの貴一って本当に青々しい若さがあるんだよね。

そして矢ぶすまになって倒れた舞子を顔色ひとつ変えず見下ろしている伊東四朗白河院が超こわいー。やっぱ、大河ドラマにはこれぐらい怖い人が必要だ。

で、ここからはサイコーによかった! 位人臣を極めるところまで昇ってきた息子に、伊東四朗が「もののけの血」の流れていることを認める。清盛はもちろん抵抗するんだけど、その中で、保元の乱で叔父を斬ったこと、平治の乱で親友を滅ぼしたことを、血の涙を流しながら話す。連戦連勝のひとり勝ちで栄耀栄華をほしいままにしている清盛。保元も平治ももはや遠い日の出来事だけれども、深層心理では少しも風化されていない。そう、清盛ってこういう奴なんだ。

「私を上へ上へと駆り立てるのはもののけの血ではありません。この身に浴びてきた血がそうさせるのです!」というのも、まさに渾身のせりふ。そう、たくさんの人の血を浴び、志を継ぎ、恨みをも背負って、巨大な存在になった。誰ひとりのことも忘れていない清盛に胸が熱くなりつつ、けれど、それだけの重荷を背負ってのぼり続けることのできる類稀なる力に、やはり血を感じずにいられないのも事実。

「そちはまだ知らぬ、昇りきった果ての景色を」白河院にそう言われれば、涙も渇き、ぎらぎらとした目でさっそくに賽を振る清盛。うーん、このもののけ論争が最終的にどこに落ちつくのか、すげー楽しみだ。果ての景色・・・それはやっぱり荒涼としてるんでしょうか。それとも、金色に輝くものがあるのでしょうか?!

「追い越してみせまする!」でガバっと起きたら、そこには雨の日に捨てられた犬の目をしたゴッシーいましたあああ!! 学生時代、「衣服の乱れは心の乱れ」なんて標語がありましたが、「烏帽子の折れは、心の折れ」たるこのドラマ。ゴッシーの烏帽子は折れてるどころか濡れすぎて縮んでるようにすら見えます〜。つーかオマエ、あの雨の中、輿を降りて走ってきたのか?! 

そんなションボリした風体のゴッシーと、HPほとんどゼロでフラついてる清盛とで、
ゴッシー 「生きて戻ったか」
清盛 「勝手に死んだりはいたしません。あなたさまとの双六遊びが終わっておりませぬゆえ」
ゴッシー 「この死にぞこないが!」
って、完全にツンデレの教科書に乗せたいぐらいの問答ですありがとうございました。

清盛は、「互いに生まれ出る前より続く長い長い勝負・・・」とも言ってて、ちょっとハッとさせられた。そうか、清盛は、白河院に忌まれ殺された舞子の子。ゴッシーは、白河院に溺愛されたたま子ちゃんの子なんだよね・・・。

「誰の胸にも塞ぐことのできない穴を開けた」でしたっけ? 回を締める頼朝くんのナレーションが今回も印象的です。ともかく、熊野から急ぎ引き返してきた後白河院、着替えもせずに危篤の清盛の床に飛びこむ。この描写は確かに平家物語にあるものなんだけど、それをこうも香ばしく味つけした大河ドラマ平清盛』に乾杯♪ つーことで、不穏な動きも多々ありつつ、なかなかに音符の多い第34話でございました♪