『平清盛』 第33話「清盛、五十の宴」

今回は、45分をけっこう長く感じました。あっちでもこっちでもパーティやってて、その最中に招かれざる客が・・・ていう筋は、あまり練られてるとは思えません。

ま、8月末ってことかなーと。名作といわれる大河ドラマでも、一年間にわたっていわゆる「神回」が続くわけではありません。大好きだった『風林火山』も、後半は「ナンジャコレ?」と首をひねる回があったし、あんだけ視聴率を取りまくった『篤姫』だって、後半はけっこう息切れしてました(最後3回ぐらいはさすがに凄かった)。プロの脚本家とはいて、これだけ長丁場のホンを書く機会はまずないもの。一発勝負なんだよな。同じく伏線の鬼、キャラ立ちの強い三谷さんの『新選組!』は、9月ごろどんな感じだったんですかね?

さて、まずは後白河さんとこのパーティ。何のパーティだったのかは不明。ま、多分ここでは、年じゅう飲めや歌えやとやってるんでしょう。古今東西、宴も政(まつりごと)の一部・・・のはずなんだけど、後白河さん主催のパーティって、まったく政治のにおいがしませんね。列席者も超内々って感じ。いちお、院政敷いてるんだよね? 治天の君なんだよね? 

今回、重盛・宗盛が「朝議にて“音戸の瀬戸”開削決定〜!」と喜び勇んで父に報告する場面があった(清盛は太政大臣を辞しているので、オフィシャルな場にはもう出て行かないんですね)けど、そういうのも、どういう意思決定機構になってるのか、イマイチわかんないんだよな。前回、「これからも嫌がらせするよ♪」なんてやる気マンマンだった割に、後白河は関与してなさそうだし、藤原摂関家の兄弟は右大臣&大納言だから、当然朝議に出てるはずなのに、あとでグチグチ言いにきてたし。

朝議の出席者の過半数を平家一門が占めていて、民主主義の原則に則って多数決で決めてるんでしょうか・・・というのは冗談でも、ま、そんな感じなんだろう。しかし、現在、そういう人事権みたいなのを誰が握ってるんだろう? まあ何だかんだ言いつつも、後白河は財政的に弱くて、治天の君といえど、やはり平家の財をあてにせざるを得ないので、平家重視の人事を黙認せざるを得ない、てとこなのだろうか?

という補完ができたのは、以仁王のバックに“相続セレブ”八条院が登場して、「さすがのゴッシーも彼女はむげにできない」表現をしてたため。上西門院に続いてのお后でない女院登場、これも大河ではなかなかお目にかかれない人物だからうれしい。平治の乱のマロたちよろしく、記号的な人物として描かれる予感はあるものの・・・。佐藤仁美、『家政婦のミタ』に続いて性悪女って感じの役ですね。この人、私の1歳年下らしい、びっくり。鈴木砂羽と同年代ってイメージでした。

滋子ちゃんの舞は、NHKの公式アカウントによると「胡飲酒」の舞、大地から沸き上がってくる聖なる酒を神に捧げるイメージだそうです。舞を見て「なんと美しい」と褒めそやす近臣たちに、後白河が「滋子は大酒飲みゆえな」と答えたのは、そういう意味なんですね。途中で雨が降ってきたのに最後まで踊り通した・・・という描写に、「平家物語」にこういうシーンあったな、と思い出しました。確か、場所は熊野だったような気がしますが。

滋子ちゃんのほか、藤原マロ兄弟、末弟クマ盛、重/宗モリモリと、今回は踊る人が多かったですね。役者さんはこういうお稽古もやらなくちゃいけなくて大変だな。しかし直近に歌舞伎俳優の踊りを見まくってた私は負け組かも。比べるもんじゃないってわかってても、どうしても・・・。重/宗コンビが踊ってるとき、かつて舞をきっかけに、悪左府にロックオンされた家盛を思い出したのは私だけではあるまい。悪左府さん健在なら、重/宗どっちが好み(ry

滋子ちゃんといえば、単なる巻き毛美人、且つツンの大酒飲みかと思いきや(ってそれだけでもスゲー設定だが)、けっこう政治的な人物としても描かれてるんですよね。前回も、義兄・清盛と密談するシーンがあったし、今回は、以仁王親王宣下を阻止するよう、兄・時忠に指示してた。この辺も平家物語にある記述だと思います。

・・・が、「文句なしの美人で、センスが良くて、気配りが上手で、華やか。誰もかれもが憧れる宮廷のカリスマ」であっても、やはり我が子かわいさに政治的策謀・・・みたいな“業”が平家物語の滋子の面白さなので、前段部分が全然強調されていない今作の設定は、私としてはつまんない。みんなに愛されるお后さまって、たま子ちゃんとも得子ちゃんとも違うタイプだから採用したらよかったのに。

ハッ、ここまで書いて気づきました。「理想のお后像」設定は徳子ちゃんに使うのね?! そうなのね?!

ともかく、ドラマを見る限り、どうも描写が薄くて、どーしてあんなに寵愛されるのかよくわかんない滋子ちゃんなんだけど、そこは後白河側の設定が効いてるよね。なんたって、以前はあの塚地デブ頼さんとラブラブだったんだもん。彼の好みは常人とはかけ離れてる、って説得力がすごい。

さて平家のほうは、重盛タンの笑顔が何度か見られてうれしかった☆ いつのまにか子ども3人も作ってたんですね☆ って重太・重次・重三郎かよ〜! このドラマ、源氏の幼名は妙ちきりん、平氏の幼名は超テキトーで通してますな。や、武者丸も鬼武者も史料から伝わってる名前なんでしょうが・・・。重太=のちの惟盛ですよね。武勇の者・忠清が乳父でも、ああなってしまったのか! めっきり白髪も増えた忠清さん、これから苦労する描写があるんでしょうか・・・

もうスルーでいくのかと思ってた末弟・忠度が、ここでまさかの初登場! しかもまさかのクマー! これはきっと、ラストのムムム・・・から逆算した人物デザイン(泣) 相島さんとの恋唄対決(「お題は恋です」とうれしそうに告げる時子が相変わらずでかわゆい)は、正直ちょっと眠かったかも。

この宴は、まさに内輪ウケの世界なんだけど、見ているほうには「こんなにのんびりと謳歌してられるのもこれが最後だろうなあ」という確信があって、ドラマが平和であればあるほど、華やかであればあるほど、逆に哀愁、無常を感じてしまうんですよね。

清盛が扇で招くと、沈みかけた陽が戻ってきた、って「日招伝説」ですっけ? 平家の権勢、清盛のカリスマを示すこのエピソードの使い方も見事で、「日が沈みかけている」点に着目してのアレンジに瞠目させられました。

映像上では、「日が戻ってきた」については、ちょうど扇で仰いだところで雲間から夕陽が覗いただけの偶然・・・のように見えるんだよね。それを、その場の皆は清盛に心酔してるもんだから「おおっ」って真に受けちゃって、尾ひれ背びれがついて都中に広まっていく。ほんとは、音戸の瀬戸の工事中の伝説なんだけど、制作上の都合として多分そのロケをやる予算もないし(笑)、宴で昂揚した気分を皆が共有して・・・ていう中での出来事にしたのは、うまかったなーと思う。

しかも、その直前に清盛に向けられた注意が戦慄! 「もはや日が暮れますから」「足元が危ないですよ」怖ェ〜! それ言ったの、盛国と時子のふたりなんだよね。あとの皆さまはホケホケ楽しんでるだけ・・・。重盛タンは多分、苦々しい顔で見てたんでしょうが、この人はこの人で運命があるし。そう、ここで我が世の春を楽しんでいる面々の皆がこの先どうなるかを想像すると、ガクブルもんです(しかも頼盛がいない説明をここでしてたのもうまい!)。

宴には牛若も乱入してました。常磐も再登場し、すでに一条長成の妻になってたことが判明。この大胆な省略は気に入りました。確かここらへんは、2005年『義経』で詳しくやってますよね(清盛:渡哲也、常磐稲森いずみ一条長成:蛭子さん爆)。そうでなくても、けっこう有名なエピソード。なんでかって、ぶっちゃけ、下世話な話で、好奇心を煽られるからですよね。

このドラマでは、なぜ清盛があのとき常磐をモノにしたのか、というのを非常に面白く見せた。作中の清盛&常盤それぞれの人物設定(&義朝との経緯)があって、あの28話最後の場面があって、今回の省略。けっこう筋が通ってたように思います。ま、今後、牛若→義経と成長するあたりで、省略した部分を説明するような気もしますが。

このドラマ、たま子ちゃんまわりとか、悪左府さんまわりとか、種牡馬・義朝とか、変態ゴッシーとか、淫靡なシーンがいちいちちょっとひねってあって、不必要にド直球に下世話なシーンを盛り込まないんですよね。そういうとこ好きです(ちなみに『風林火山』の親父くさーいエロエロ路線も説得力があって、あれはあれで大好きでしたww)。

省略した部分の説明、といえば、聖子ちゃんが再登場したわけ、清盛のとこにも後白河のとこにも平等に顔を出してるわけも、来週、語られたりするんだろうか。伊東四朗が予告で映ってたしな! 

今週の頼朝は、予想どおりの鬱状態でした。そこに頼政が絡んできてるのが面白い。てか、今週、頼朝のナレーションなかったよね?! そんなことしてる場合じゃないもんな! 作り手、細けぇー! てか、こうしてつらつら書いてると、多少退屈なようでも、相当いろいろ盛り込まれてるってことがわかるな。