2012 ロンドンオリンピック 【あれこれいろいろ】

●女子レスリング: 吉田沙保里の強さがハンパない。朝起きたら、案の定(笑)金メダル獲ってた。三連覇。その影には凄まじい努力があっただろうに、オクビも感じさせないところに痺れる。優勝を決めた直後の監督へのタックル! 父親を肩車! インタビューでも表彰式でも、涙の一粒もなし! そのあまりのかっこよさにこっちが泣けてくる。霊長類最強女子の称号は長らく彼女のものであるだろう。

今回、日本選手のユニフォームには、胸に牙をむく虎。最初はヲイヲイと思ったもんだが、今やこれほど彼女らにふさわしいデザインはないと心から思える。てか、伊調馨にせよ吉田兄貴にせよ、胸の虎がかすむくらい強いし、かっこいい。もはや日本のお家芸は相撲でも柔道でもなく、レスリングであることが明らかになった今回の五輪であった。

なでしこジャパンの決勝戦と表彰式: アメリカに負けて銀メダル。だけど試合を見た夫によると、「W杯の決勝よりもよほど互角に戦っていた」とのこと。試合終了後、ピッチに仰向けになって泣きじゃくる宮間選手の元に、かわるがわるいろんな選手がやってきて体を撫でるところ、それでも立ち上がれないのを、ついに佐々木監督がやってきて声をかけ、よっこいしょ、と体を起してあげるところに泣ける。その数十分後の表彰式にはなでしこトレインで登場し、みんな笑顔満面、カメラに向かってピースの連発なんかしておどけまくってたんだけど、さらにその後、個別にインタビューを受けると、言葉に詰まって再び涙する選手も多くて、これまた泣ける。

宮間選手が言った「最後は笑顔で終わりたかった」という気持ちも、「こんな素敵な仲間たちとのゲームはこれで最後」と思うとやっぱり泣ける気持ちも、どちらも偽らざる気持ちだろう。飾らないなでしこたちが好き。試合後、ピッチで輪を作って、選手たちに向かって「すばらしい試合だった、君たちを誇らしく思う」と言ったという佐々木監督にも泣ける。

●思うこと: やっぱりイギリスって伝統がある国だなーと。自分はいつものとおり、陸上競技を中心に見たんだけど、スタジアムはつねに満員御礼。地元の選手やボルトが登場するときだけじゃなく、どんな競技でも大歓声。日本では完全にマイナー扱いされている800や1500といった中距離も人気競技だし、十種競技の選手は鉄人として敬意を払われ、投てきや砂上の試合もすごく盛りあがる。

これはベルリンで世界陸上があったときも同じで、大阪やテグでの同大会の会場が閑散としていたのに比較すると、やはりヨーロッパ人は生まれ育っていく過程で、スポーツや音楽の楽しみ方を自然と知っていくんだなと。もっといえば、民族のDNAに組み込まれてるって感じ? 音楽もそうだよね。クラシックなんて、日本人にとっては敷居も金額もお高いものだけど、ヨーロッパでは、まるでフジロックとか、或いは「おかあさんといっしょ」の親子コンサートみたいな感覚で聴きにいける一流コンサートもたくさんある。

や、もちろん、だからイギリスはすばらしい国で、その他の地域がそれに劣る、って言いたいわけじゃないよ。イギリスこそユーロに与していないものの、ヨーロッパの経済状態は相変わらず危機に瀕しているわけだし、アジアやアフリカ、南米の国々の伝統が蹂躙されたのは、欧州の帝国主義によるところも大きい。陸上やサッカーがさかんなのと、野球がさかんなのと、どっちが文化の程度が高いか?って議論に決着はつかないでしょう。私、野球も大好きだしさ。だいたい、イギリスでは上流階級の人はまずサッカーなんてやらないという。サラ王女が五輪選手として登場したのだって、もちろん馬術だったよね。イギリスだってアメリカだって、今でも厳然と階級社会たる面がある(らしいではないか)。

でも、陸上好きの自分としては、ヨーロッパの観客はいいな〜って思ったし、あの盛り上がりには、日本にない伝統の強さ、重みを感じた。マラソンコースが惜しげもなく見せた重厚かつ華麗な町並みにもね。GDPがどうとかユーロ安がどうとかいっても、数字では測れないものってあるよなー。それはこれからの日本にも通じる話なのかもしんない。日本だって、客観的に見たら国家財政的にも経済競争力的にも、立派に「衰えた大国」だしその潮流は止められないんだろうけど、ヨーロッパとも、アジアの昇り龍たる中国ともまた違う伝統が、きっとあるから。つーか今回の五輪ひとつとってみても、柔道であんだけ逃しまくったのに、どんだけメダル獲れるんだ、と。

だからといって陸上を捨てないで〜水泳に比べると断然メダルは少ないけどさ〜各種目、強靭な肉体をもつ肌の黒い人や白い人たちに交じってすばらしい健闘を見せてるんだから! と、そこは強く願う陸上ファンのわたくしでした。まあオリンピックの割に、陸上もいろんな種目を放送してくれたほうだと思う。たぶんメイン種目が明け方3〜6時という競争率の低い時間帯だったことが功を奏したんだろうけど! 

あと、こんなに陸上に特化して書いてたのに、連日けっこうなアクセス数だったのがうれしいことでした。ま、みなさん、ほかの記事目当てに立ち寄って、「なーんだ、また陸上か」って感じで読まずに去っていかれてたのかもしれませんがね…笑

好きな競技とはいえ、毎日記録をとっていくのはけっこう大変だったりもするのだが、誰に頼まれてるわけでもなく、当然自分のためにやってること。今大会が始まったころ、過去の日記をひもといて、北京やベルリン、テグでの陸上競技について読み返したらスゲー面白くて、やっぱりできる限り書いておこうと強く思ったのであります。

結果はしっかりデータベース化される現代だけど、試合の経緯とか、選手たちの表情や言葉とか、どーでもいいようなこぼれ話とか、自分が見たもの、感じたことを記録しておくと、付随して立ちあがってくるものの鮮やかさ、手触りの確かさが違うな、と。書くことで記憶が定着するし、定着した記憶がまた、次の試合をさらに面白く見せてくれることにもなるのだ。

一銭の得にもならない、愚にもつかぬ作業であることは認めるが、同時に一銭のコストもかからない娯楽って面もあって、私はこういうストックをつくるのが大好きです。