2012 ロンドンオリンピック: 8月5日【陸上競技】

●男子100m準決勝: 1組目、ガトリン、いきなり9秒82の好タイムで通過。

2組目にボルト登場。スタートラインでの選手紹介では、ひとしきりシャドーボクシングみたいなアクション。それを見た朝原さん、「いやー、調子良さそうですね」。果たして、(スタートが苦手といわれるボルト的には)良いスタートを切ったあと50m手前からは“ひとり旅”。ゴール前には頭を左右に振って他選手を確かめる余裕。なのにタイムは9秒88! ちなみに、日本人で10秒切った選手はまだいませんよ〜。朝原さん、「きましたね〜」。ほんとに、ほんとに。盛 り 上 が っ て ま い り ま し た !

さて次の組には、慶大2年の山縣が登場! 予選で好タイムを出したため、5コースど真ん中に位置! しかもタイソン・ゲイヨハン・ブレークに挟まれてるぅぅぅ。もちろん常連ファイナリストたちは予選で力を温存、山縣は当然本気、という違いはあれど、こら、すごいこった! スタートラインではさすがに予選に比べて緊張した面持ち。しかしピストルがなると、「おー!」朝原さん、今大会に入って一番の大声キタ-------! 山縣、いいスタート、いい加速だ! 最後はガチガチになり伸びず、10秒10の6着となり彼のオリンピックは終わったわけだが、「夢をかなえてくれるような走りでしたね」と、レース後も朝原さんは絶賛。朝原からいいフレーズ出ました〜! これってもちろん、日本人が10秒の壁を破る夢、五輪のファイナリストになる夢ですよね。

「この大舞台でどんな走りができるか自分との勝負だった。硬くなって自分の走りができないのが一番イヤだったけれど、そこはOKだったかと。でも反省点はたくさんあるので今後に生かしていきたい」初の五輪でじゅうぶんすぎるほど立派な成績を残したハタチの若者は、直後のインタビューでも、少しも浮かれるところのない様子。なんと頼もしい。ちなみにこの組はブレーク9秒85、ゲイ9秒92。

●女子100m表彰式: 髪をおろしたシェリーアン・フレイザー。かわいい。国歌が流れ始めると、夢見る少女のような幸福そうな表情で目を閉じて聴いているが、途中で我慢できないというように目を開けてニコニコ、歌の後半では口を大きく開けた笑顔。んもうまったく、なんてかわゆらしい人だ! なんだか、ジャマイカ国歌の流れている時間が、とても長く、とても幸福なものに感じられた。歌が終わると、いち早くフレイザーに寄りそう同じ国のベロニカ・キャンベル。彼女の笑顔を見るのって今大会初めてかも。すてきな表彰式をありがとう!

●女子400m決勝: 混戦に! 無酸素で走るには長いこの種目、最後みんなの脚が止まったところをゆっくりと差して優勝したのは、サンヤ・リチャーズ・ロス! おめでとう、つねにこの種目の第一人者であり続けている彼女が、ついに五輪で金メダルだ! 2011テグ女王のモンショー(ボツワナ)や、おなじみのウィリアムミルズ(ジャマイカ)や、新鋭クリボシャプカ(ロシア)が殺到する中、2着で抜けたのは、なんとベテラン、地元イギリスのオールグーだった! 前五輪女王。立派!

●男子400m準決勝: 熾烈な戦いに! トリニーダトバコのゴードン、自己ベスト。最後、力抜いてるように見えましたけど…? ベルギーの双子、ボルリー兄弟は2着、3着でそれぞれ予選通過。

2011テグ王者のグレナダのジェームスは1着で、レース後、同組に出場した義足のピストリウスとゼッケン交換をしていた。うん、サッカーのユニフォームよりは場所をとらないんで合理的な気がするけどさぁ、ゼッケン番号だけじゃ、あとで見たとき、いつの誰のものかわからんよね? 裏に書くのか?名前を。はっ、最初から書いてあるのか? てか、安全ピンをとるのにお互いにもじもじしてる時間が長くてちょっと笑える。

さて、そのジェームズも確か19才だと思うんだけど、次の組で1着通過したドミニカのサントスは、まだジュニアの選手なんだそうですよ!? いや〜新時代!

●女子400mハードル予選: 日本の久保倉さんは、惜しくも準決勝進出ならず。彼女ももう30歳なのか〜。月日は早いね。てか、あれ? あれあれ? 私この種目、知ってる人があんまりいませんよ? ジャマイカのビッグスマイル、メライン・ウォーカーとアメリカのデュマスくらいかなあ。両者とも決勝へ。

●男子1500m準決勝: ケニアのキプロップ、キプラガト、それぞれ2着で決勝進出。あーっ、予選でサウジアラビアのアピールしてたシャウィーンさんはここで敗退。

●男子ハンマー投げ決勝: さて、今日の陸上競技の中継担当はテレ朝でした。つまり修造。同じように「ウザい系」だとしても、やっぱり織田さんとはちがーう! 万年、陸上のにわかファンやってる私にとっては、五輪は楽しいけど織田さんがいないんでちょっとさみしいわ…。随所で「ここで織田さんだったら」という思いが頭をよぎってしまうのよ…。

閑話休題、ロンドンのスタジオには鉄人の妹も来てましたよ〜。もちろん会場には鉄人の父が。相変わらず勝負師の顔してます。かっこいい。

試合は最初からなんとなくピリッとしない展開に。室伏の1投目は、本人も、解説者等も不可解なファウルをとられる。その後も、なかなかグラウンドを横切る許可が出ないとかいう普通では考えられない進行もあり、選手たちは試合に集中しづらい状態に。柔道然り、体操やフェンシング然り、今大会、多くの競技で問題になっている運営や審判側の問題が、ここでも出てしまった。

ファイナリスト12人が3投ずつしたところで、上位8人に絞ってさらに3投ずつやるのが投てき種目の決勝。3投したところで室伏は3位。結局、それ以降、8人の順位は最後までひとりも変わらないという珍しい大会になった。優勝は下馬評も高かったハンガリーのパルシュ。2位は北京王者のコズムス(ロシア)。この人は北京五輪後、1年以上休養し、去年競技会に復帰したとのこと。再び五輪に照準を合わせてくるのはさすがだね。6投中3投はファウルだったのに銀ってのもスゲー。

解説の小山さんも「長年見てますが、技術的に、こうもばらつきのある投てきをする室伏は初めてですね」と首をかしげる状態だった室伏は、銅メダル確定にも喜びを弾けさせるようなことはなく、でも笑顔のウイニングラン。恒例の、「試合が終わったらノーサイド」で表彰台の3人、仲良く並んで走るシーンも。

インタビューは、中継中には間に合わなかったけれど、あとでwebで読んだところによると、「メダルの色はともかく、やってきたことに満足感がある」とのこと。戦前には、「37歳でメダルに絡めるというポジションにいることをうれしく思う」とも言っていた。ほんとにそうだよー! この知的でまじめな人がどれだけストイックに打ち込んできたのか、ちょっと想像しただけで震える。ま、小山さんには直後、「室伏くん、リオで金だ!」とエールされてましたけどねw アナウンサーが引き気味に、「室伏選手はリオ五輪では41歳になりますが…」と言うも、「彼ならできる!」と断言ww きっと織田さんも同じことを言うだろうww

その他、ハンマー投げこぼれ話。小山解説は今日もにわかファンに楽しく、「助走には2種類あって、パルシュと室伏は同じ高速回転。コズムスは別タイプ」というような、しろうとが目で見てもわかんない解説とか、「コズムスは“ハンマーに乗るのがうまい”」という、競技独特の表現とか。あと、タジキスタンのナザロフについて、テグ世界陸上でも印象的だったエピソードがまた紹介されてた。タジキスタン陸連の会長だ、って話。選手会の会長じゃないよ、陸上連盟の会長だよ?! 現役選手で、30歳なのに! 彼は今回は10位。

●男子100m決勝: つ、つ、つ、ついに来ました〜! 眠い目が一気にあく。当然ながら、会場も異様な熱気に包まれている。おびただしいカメラの数。たった10秒に世界中の目が注がれるのだ。弾丸の走りに刮目せよ! ←フジ風煽りw

スタートラインのボルト、スタジアムを揺るがす声援を、ターンテーブルで盤をさばくDJみたいな振りでいなしてみせる。もちろん、眉毛をなぞって(これ何でやるの?)雷神に祈るポーズも。ブレークは地中から蘇るモンスターみたいなポーズ、ガトリンは敬礼、まじめなゲイは(なんかふざけた表現みたいですが違う!)片手を高く挙げて答え、パウエルは今日も謎のちょび髭。おまいら役者じゃのう。そして強そうじゃのう!!! 

スクリーンに大写しになったボルトが唇に人差し指を立てると、それを合図に観衆は静まり返る。本当にね…こういう瞬間って、選手は、どういうテンション、心情なんだろうね。想像を絶する。

On Your Mark」がかかる。セット…ゴー! ブレーク、パウエル、ガトリンいいスタート! ボルトは、「彼はこんなもん」なスタート! ゲイが、ブレークが加速する、そこへ徐々にボルト! ボルト来たー! 伸びる伸びる、体ふたり分くらい後続を払って1着でゴール! 強い強い!

スタジアム、地鳴りのような轟音!!! 私も(ついでに起きてきた夫も)早朝6時前に両手を頭上で叩いて歓声! トラックから観客席近くに走り寄ったボルトがうずくまって地面にキスをすると、大勢のカメラマンたちも同様に地に這いつくばって撮ってるww すぐにブレークが駆け寄ってきて抱き合い、ふたりでジャマイカの観客席に頭を投げ出してもみくちゃにされてた。

強い強いボルト! 接戦て感じじゃなかった、抜けてた。朝原さん、「こんなにゴール前でガチガチにりきんだボルトは初めて見ましたね」 アナ「北京のときは、言い方は悪いですが『遊ぶように』ゴールしましたが…」 朝原さん「今回は、渾身の力をこめたゴールでしたね」 ほんとにそう。そこが泣ける。彼がどんなに、この「ここ一番」で勝ちたかったのかを思うと。けがに勝ち、持病に勝ち、世界中の目という未曽有の重圧に勝ち、そして自分との戦いに勝った。なんたる強さ! 戦後、「俺が負けるとか言ってた奴がいたな」なんて超訳が出回ってましたな。そいつら全員土下座させますから許してくださいwww。

100mの五輪連覇はカール・ルイス以来。ルイスの2回目の金は繰り上がりだったのよね。それをのぞけば、1904年くらいまで遡らないといけないらしい。たった10秒に満たない勝負のために4年間。途方もない話。この凝縮感があるから、人は100mを見るのに熱狂するのよねぇ…。

さて、以下は大接戦。2位はブレーク、3位はガトリン、4位はゲイでした。ガトリンも何気に偉業ではないのか? 2004年アテネの王者。その後、ドーピングにひっかかって長らく出場停止、2010年から競技会に復帰。そしてここへきて銅メダルって。2011テグ、ボルトがフライング失格となったレースでの優勝といい、今回の2着といい、ブレークが現状、3本の指に入るランナーであることに疑いをさしはさむ人もいるまい。しかし、なんといっても、勝った人が強かった。そんなレース。満足。

●女子マラソンは別項。