『昨日・今日・明日』 曽我部恵一
- 作者: 曽我部恵一
- 出版社/メーカー: 筑摩書房
- 発売日: 2009/11/10
- メディア: 文庫
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彼の音楽を聴いて、彼の書く文章を読む。そこにはまったく違和感がない。それがまた、うれしい。やっぱりどんなものにしても、プロじゃなくても、その人が生み出すものって、その人自身を表しているんだろうな。
引用したい箇所を挙げていけばキリがない本書なんだけど、今回はここを。
はっぴいえんどはぼくが世界で一番好きなロック・バンドのひとつだ。ぼくらが『若者たち』や『東京』というアルバムを出したころには、インタビューなんかでホントによく「はっぴいえんどに似てますねぇ」と言われた。それも、ちょっとした皮肉のつもりで言ってくる人が多かったので、ぼくははっきり「はっぴいえんどが大好きで、とても大きな影響を受けている」と答えていた。好きなものが好きで何が悪い? こっちは「愛している」と声を大にして言える幸せを知っているんだ。
太字はわたしが付けたもの。くーっ、わかる、この感覚。手の届かない対象にキャーキャーいってると、「あ、醒めた目で見られてるな…」と感じるときって、ちょいちょいある。いい年して恥ずかしい、と思われているような。「すいませんね、おたくでミーハーでガキっぽい(もしくはおばさんぽい)人間で…」なんて、ちょっと卑屈になってしまうときもある。
でも、好きなものが好きで何が悪い?だよね! 声を大にして言うよ、「愛している」って!
私は、好きなものがある、というのは、「自由を獲得している」ことだと思う。自由があるから、人は元気で強くいられるのだと思う。私はパンもケーキも焼かないし編み物もしない、サッカーやオートレースにも、BLやラノベにも詳しくない。でも、それらを好きな人が、好きなものを一生懸命語ったり、つねにそれを追究しているのを見ると、なんだかいい気持になる。自由だなあこの人、と思う。自分も、自由でいたくて、いつもこのブログを書いています。
ところでこれは、出産後初めて読んだ本である。いま、この本を再読していると、1歳7カ月になっているそのとき産んだ子が、やたらとちょっかいを出してきた。ふと思い立って、素敵な一節を読みあげて読み聞かせてやると、しばらくじっと聞いていた。そして、私が本を置くと、自分の手にもって、適当にページをひらき、「むにゃむにゃむにゃむにゃ」と宇宙語で読みあげていた。