ことば・2 満1歳8カ月

お昼、いつもサクが使っている青いプラスチックコップに牛乳を注いで見せて、「はい、牛乳」と言って渡した。飲みながら、さかんに「ぎー、ぎー」と言うサク。「うん、そうだよ、牛乳だよ」。

夜、そのコップに今度はお茶を入れて渡した。「はい、お茶」。サク、「ぎー、ぎー!」。「や、これは牛乳じゃないよ。お茶。ちゃちゃ、だよ」。サク、聞く耳持たず、「ぎー、ぎー!」

推論

  • 1.コップのことを「ぎー」だと思っている
  • 2.飲み物の一般名詞として「ぎー」だと思っている
  • 3.飲み物を飲む行為を「ぎー」だと思っている
  • 4.この青いコップで飲み物を飲む行為を「ぎー」だと思っている

実験

  • 1.別のコップに牛乳を入れて「牛乳だよ」と渡す → ぎー、ぎー言った
  • 2.牛乳パックを見せて「牛乳だよ」と言う → 無言
  • 3.専用容器に入ったヤクルトを飲ませる → 無言
  • 4.牛乳を注いで見せて、「ママ牛乳飲むよ〜」と言って飲む → 無言

その他

  • 後日、公園で、例の青いプラスチックコップと同じシリーズで色の違う(ピンクの)コップを、砂遊びの道具にしている女の子がいた。当然、そのコップには砂が入っている。それを持ち上げてうれしそうにサク、「ぎー!ぎー!」

→味覚で理解している「ぎー」と、あのコップの形状とが、混沌としている状態?

大学のころに勉強したことを思い出した。たとえば、とある赤いコップを見せて「コップだよ」といっても、言語獲得過程初期の子どもがそれを完ぺきに認識するのはとても難しい。なぜなら、

  • [コップ][だよ]と、語句の正しい切れ目の認識
  • コップの「取っ手」など、コップの一部分を示しているのではないという認識
  • 「the コップ」ではなく、「a コップ」という認識。つまり赤いコップも青いコップも透明なコップも、プラスチックのもガラスのも、大きいのも小さいのも、すべて「コップ」であるという認識

など、さまざまな理解が必要になるからだ。