『平清盛』 第11話「もののけの涙」

※超長いス。清盛に興味のある方であっても、3回くらいに分けて読んでいただいたほうが良いかと思料。

アバン・アバンタイトルの「きょうのみどころ」が微妙に体裁を変えていましたね。内容的には「得子の野心」とテロップを出しての(きょうのみどころ+解説)というところでした。うん、「きょうのみどころ」というモッサいタイトルを排除しただけでも進歩では? ドラマはこれからいよいよ敵味方忙しく入り乱れることになるので、ここに解説をおくのはいいにせよ、ともかく本編の雰囲気を壊さないようにお願いしますよ。

そこからOPを挟んで、そのまま朝廷パートに入ったんですが、冒頭10分間の濃かったこと! 清盛と崇徳帝、実は異母兄弟のふたりが対面。崇徳帝の皇子・重仁誕生(ここで赤子を抱いてハラハラと泣くのは、清盛が初子を得たときと同じ描写でしたね)。崇徳 vs 鳥羽の初バトル。得子の謀りごと。そして崇徳帝退位。

鳥羽タンがつるりん化すると時を同じくして、得子のほうは国母化。これが最強! こないだ関白忠通に取り入ってお酌をしてたと思ったら、わずか1週で立場逆転。こけつまろびつしながら焦って目通りに来た忠通を下座に据え、昼間っから酒を飲みながら、「面白うない男じゃのう」と余裕たっぷりの笑み。

もののけ化し始めた崇徳帝の尋常ならざる眼光や挙動も怖けりゃ、いったん別パートを挟んで挿入された、あの呪いの人形もガクブルもんでした…! 日曜8時のお茶の間にあのアイテム、ここのスタッフはまだまだチャレンジングです。

で、すっかり人間化した(って妙な表現だが、そうとしかいいようがない笑)たま子さんは妊娠8カ月らしいりょう@堀河局と出家してしまったんですが、実際の断髪シーンでなくイメージ映像みたいなのを映しながら、ナレーションが「髪をおろしてしまわれた…」と言うのを見て、「昔の物語っぽい!」となんか感心してしまった。

源氏物語はもちろん、今昔物語でも、平家物語も…かな? 「これこれ、こういう出来事があって、○○さんは、すっかり世をはかなんでしまい、出家なさいました」みたいな書き方で場面を締めるのが、この時代の文学のスタンダードだよね。

いっぽう、源氏のほうに目をやると、義朝はなんと種牡馬化! 盛んです。強そうです。家来も愛妾も、そして子どももどんどん増えてます。や、史実ですからねぇww  悪源太義平と朝長、ふたりの庶子の名がドラマに初お目見え。亡くなったり出家したりで去る人あれば、こうして生まれてくる命もあり…という循環がドラマに躍動感を与えている。

もとい、義朝。「武士は強くあるべし、そして源氏が武士の頭たるべし」という子どものころからの理想を、こういう形で体現していく、という描写は面白い。実際、平家に伍していくためには、家来にせよ子どもにせよ一族の数が必要、富や財力も必要なわけです。かといって彼は独り相撲をとっているんじゃなく、荒くれ者の坂東武者たちにやたら慕われてる。また、先にババッともろ肌脱いで「さっさとこっち来て横になれ」的な態度をとられた女も、ドギマギこそすれ、あまり嫌そうじゃない。魅力的な男に成長してるんですね。

そんなこととはつゆ知らず、京でひたすら待ってる田中由良姫&小日向ダメ義のコンビがおっかしい。泣きだした由良姫を見て、さっきまでのぶすくれ顔はどこへやら、驚きつつ親バカ表情になる小日向さんの演技が最高! 

さ、やっと平氏について書くとこまできました。

まず、崇徳帝に対して、また平氏一門の新年会で、得意の「面白く生きたい!」を口にする清タン。周りは「このバカ、まだ言うか」てな耳タコ状態で聞いてるんだけど、視聴者たる私の気持ちはちょっと違ってて、つまり、鳥羽タンや得子さまにせよ、藤原白塗り親子たちにせよ、どこをとってもろくなもんじゃないってのは、ドラマを見てる私たちはもう、嫌というほど知らされてるわけです。でも、清タン&パパ盛以外の平氏の面々は、昇殿も許されていないから、噂や又聞きの世界で権力争いについて喋っているにすぎない。

腐った上つ方の誰に尻尾を振るか、というのは現実的ではあれ、まったくスケール感に乏しい話。一族郎党の多くが「王家の犬」であることに終始している中で放たれる清タンのオモシロ願望は、確かに、家来も女もオノレの力でもぎとりつつある義朝ほどの具体性は未だないにせよ、かつてのバカ中学生の放言ではなく、「真の革新」に向かっての助走とでも言うべき域に入ってきたように思います。

それに気付いているのは、あの座の男たちの中で、たぶんパパ盛だけ…というような雰囲気でした。いつもながら、中井貴一の「平氏の棟梁」感たるや! ただ座って、言葉少なに見てるだけなんだけど、なんという重厚さ。あんだけ好き放題、ギャーギャー議論し飲み食いしてても、誰ひとりとして貴一に心酔していない平氏の男はいねぇな!と思わせるもんがある。

弟、家盛も良かったね。髭も伸びて衣服も微妙に垢じみてて、多少むさ苦しくなったのは、親に言われた妻をめとったことで、無垢な少年時代を過ぎ、平氏の子ども…ではなく、平氏の男、になったということなんでしょう。純情を通した兄・清盛に比して、結婚=ひとつの挫折、になっているという対照ですね。向後に心配はあるにせよ、ああやって抱え込まず、自分の意見をまっすぐに兄に伝える姿を見ると、まだホッとする。意見は対立しても、心根では認め合っている…というのは、パパ盛と叔父正の兄弟と似た図式になるのかな。

で、あとはもちろん明子さんです。明子さんのお命危うし〜〜〜!のフラグが立ちに立ちまくるんですが、わざとらしかったか? 私は普通に面白がり、感動し、泣けちゃいました。まあ、自分が愛する夫と小さい子たちを残して先立つ…ってのに感情移入しないわけにいかない立ち位置にいる、ってのもあるんだけど。

「そなたはまこと、琵琶のようなおなごじゃ」という、予告で見たら、「ナンダソレ?」なせりふも、意外とイケたし。てか、そのシーンが良かった。昼間、家来たちがいる前では、いつもうるさくて小汚くて…な清盛なんだけど、夜、妻と過ごすときは別の顔になってる、てのがいい。背を向けたまま静かに喋って、ひととき、流し眼で目を合わせて微笑み合い、また向かい合わせに戻る、て演出がいい。雅な琵琶の音色もあいまって、すでに2人も子を生しているんだよなー、という、夫婦の信頼感と艶めかしさが同居するシーンだった。

今のところ、ひたすら汚い松ケンなんだけど、すごくきれいな加藤あいとのミスマッチがやけにいいんだよね。で、そのシーンの前には深キョンとの再会もあったんだけど、そこでのふたりの感じも良くて、そういうのって松ケンの不思議な魅力じゃないかと思うんだ。誰と並び、誰と絡んでも変な感じがしない、むしろ素敵。

あっという間にはかなくなってしまった明子さんだけど、予防接種もペニシリンもない、手術も通院もできない時代、流行病とはあんなふうにあっけなく、人の命を奪っていくんだろうなーと思った。加藤あいさん、おつかれさまでしたー。最高に綺麗で演技もよくて、いやぁ、この人がこんなに時代劇をこなすとは、まったく想像してませんでした。大河ドラマ(の猛者たる私)は、またあなた様をお待ちしていますw

明子という最初の妻が、身も心もこんなに美しく素晴らしい女性、心底清盛に愛された女性として描かれたのはちょっと意外ですらあった。でも、深キョン時子のハードルをこんなにも上げてしまって大丈夫?という心配を凌駕する期待が、今あります。明子臨終の際、悲しむふたりの幼子に時子が膝を貸し、寝かしつけてしまった…という描写はすごくうまいなと思った。あ、時子まわりでは、今週、滋子がお目見えしてたね。かわいかった〜! これまた、奔放な感じがのちの姿を彷彿とさせてね。

その臨終。サブタイトル「もののけの涙」って何? 死んだ白河? 鳥羽タン? 新もののけ王に名乗りを上げたダークホース崇徳院? 等いろいろ想像させといて、「清盛だったのかーーー!」と発覚する驚愕のラスト、荒ぶる清盛にもののけの血を感じる忠盛のなんともいえない表情も深いものがありました。

んで、「恨みなら朝廷を恨みなさい、あなたが新しい世を作りなさい!」という盛国の説得は強引に思えたんだけど、あらためて考えてみると、この回の盛国の結婚話。あれは、明子がいかにすばらしい女性であり一族の北の方であるか、を示すだけではなくて、「盛国=漁師の出身」であることを視聴者に思い出させるためのエピソードでもあったんですね。

うんうん、盛国ったら、平氏一門の中にいても見劣りしないどころかダントツで風格があるもんだから、思わず忘れかけてたよ、そんな前身。彼は鱸丸時代、本当のお父さんを、やはり朝廷の無茶な施策が元で亡くしたんだった(マジで忘れてた)。ずっとその悔しさ、無念を胸に秘めていて、だからこそ、同じく最愛の家族を亡くした清盛に、あの言葉をかけたのね…。と、脳内補完して、あのセリフに納得した私です。

そして、大河に○年ぶりのジャニーズキターーーーー! 松寿丸から20年ぶりくらいの森田剛くんようこそ〜〜〜!な時忠の登場に、早くも後添えの話?や、再びダダ凹みの清盛の前にあらわれて焚きつけてくれるんだろう義朝との再会、義朝にはツンデレ姫との再会もあるし、次週予告まで含めて、まるまる45分、超楽しめた今回でした!