『平清盛』 第9話「ふたりのはみだし者」

はれ〜なんという修羅場、あのパーティ。「これが御子さまご誕生を祝う宴か!」と、あの清タンがまさかの視聴者の代弁を。

それもそのはず、つい先だって、自らの血をわけたかわいいかわいい子が生まれたもんだから、ついつい比べちゃうね。前回、子どもができた、と聞いたときはワーッと叫んで飛び回って喜び、今回、生まれたばかりの子を抱いては、言葉にならず、ハラハラと涙を流す…っていう描写もよかったですね、対照的で。

そのときの清タン館の宴で、盃片手にふらふら千鳥足で元海賊の親分・兎丸(加藤浩次)にからみまくっているそこの盛国(上川隆也)ww なんだその酒癖の悪さwww てか、今までも宴シーン何度かあったけど、泥酔キャラじゃなかったよね? おめー、清タンの息子誕生を喜びすぎだろwww その後、松田聖子が訪ねてきたときに赤ん坊を抱っこしての、懸命のあやしっぷりを、俺は見逃さなかったぜ! こーゆーのが、セリフもなしに背景としてシレッと演出されてるのが楽しいですよね。さあ突っ込め、と言わんばかりで。

閑話休題、この大河ドラマはつねに「対比・対照」を意欲的に使ってますな。そして、歴史モノならではなんだけど、その後の道筋や着地点を想定した上での描写。もちろん、積み重ねに重きをおいているのは言わずもがな。

臣下がぞろぞろのあんな宴での、上皇方のあの醜態なんて、本来、到底ありえないんだけど、これまで毎週毎週、鳥羽をめぐるトライアングルの凄まじさを見せられてきた積み重ねがある(なり子出産直後の「ついに御子さまをお産みしたぞ!!」の叫びもすごかった)から、テレビのこっち側としては「あーあ、やっちゃった…」て感じで受け止められちゃう。や、ドン引きしたけどねw

祇園女御―清盛タッグでの「双六は面白き遊びよの」のシーン直後に、義朝が語る「木登りのなんたるか」のシーン。イチかバチかの博打に滅法強い設定の清盛に、一本ずつ枝を選び、一歩ずつ足をかけて登って行こうとする義朝…。この人、どうも、その術を極めてはいないらしいんだけど、でも最終的に武士の争いは源氏の勝利で終わるわけで…。対比と暗示とが相まったふたつのシーンだった。

順番がめちゃめちゃなんだけど、お祝いに来た家盛くんの大笑いに、清盛は「おまえ、俺をからかってるな〜」と解釈できても、視聴者にはできない。先週のあれを見てしまったから。彼は言えない思いを抱えているのですよぉ。でも、それでも兄のことは好きなんだよね、本気でお祝いしてる顔だったし、岡田くん*1の「平氏一門は概して兄弟仲が良かったらしい」のナレーションもあった。ここも何気に対比なんだよね、源氏は頼朝/義朝、二代にわたって、兄弟仲最悪なんで(爆)。

崇徳帝の御製「瀬をはやみ〜」の歌は、本来、もっと後につくられたんだろうに、やけに早く出してきたなーと前回思っていたら、なるほど、ここでまた使うのか!と。リスクとりすぎの義清にびびった。白河法皇のまき散らした呪いにかかってるのは、今んとこ、清タンよりも君だ〜! 

んで、やっとここまでたどりついた、角髪(みずら)に結った童形も麗しい松田翔太の雅仁親王ですよ〜! 真っ赤な着物がなんとお似合いですこと。骨の髄からクレイジーなのに、高貴な血が流れている…っていうアンビバレンスをこうも自然に醸し出しますか、あなたは。ガキんちょのころの清タンに負けず劣らずのアホの子なのに、その大物感はなんですか〜!

“無頼の高平太”時代、博打には連戦連勝だった清盛と違って、こちらは同じく街中で博打をしても勝ったり負けたりと忙しい描写。初手で持ち上げといて落とす、とカモにされただけかもしれないけど、この吉凶混合ぶりがまた、のちの後白河天皇っぽい暗示の描写である。

そんで身ぐるみ剥がされた翔太さんを清タンがいったん自分の家に連れて帰る、てのはもちろん創作なんだけど面白くって、そこで清タンが言う「その笑い声、私には、赤子の泣き声にしか聞こえませぬ」のくだりに、日本中が「オマエどの口で!」と突っ込んだわけだけど、同じ道を通ってきた清タンだからこそ、赤の他人*2で知り合ったばかりで言う「ただのガキだろアンタ」のせりふが、深い意味をもって響くんだと思う。その言葉を口にしたときの、松ケンのなんとも自嘲的な顔も印象的だった。

そして、清盛と後白河、最初の対決で、すでにふたりの間に清太(のちの重盛)が座ってるってところが、またニクい。なんという「この先ありき」の脚本・演出…! この対決はすげー見応えありましたね。「賽を振れ」と静かに命じる翔太さんの恐ろしかったこと。野性味あふれる松ケンと、体温の低そうな翔太さんとは、これまた良いコントラスト。

さあこれで、だいたいメンツはそろった感じですかね。しかし、最近の大河では類を見ない風呂敷の広げっぷりには戦慄が走ります。

あ、最後に! 阿部サダヲの奥さんが浅香唯だった。そのナイスキャスティング、どこで思いついたんだ〜! ふたり並んだ絵面で、色気に乏しく所帯じみた夫婦関係が、何も語らずとも伝わってきましたよ!

*1:おっと頼朝だってこと忘れかけてるぜ…

*2:ん? ご落胤説採用のこのドラマでは、清盛はいちお、血筋の上では後白河の大叔父にあたるのか?