『人のセックスを笑うな』 山崎ナオコーラ

人のセックスを笑うな

人のセックスを笑うな

人のセックスを笑うな 山崎ナオコーラ」 なんというインパクトでしょう。この字面を見てドキリとしない人があろうか。発表当初からずいぶん話題になっていたし映画にもなったので内容の概要はわかっていて、恋愛小説にも不倫小説にも自分探し・モラトリアムの類の小説にもたいして興味ないもんね、と華麗にスルーしてきたのに、近ごろふとそんな気分になって図書館で探してみたらあったもんだから、結局、手にとってしまったじゃないのよ。数年越しのナオコーラとの戦いに負けた気分。ちなみに蛇足ながら、「ふとそんな気分になって」って、別に恋愛気分とか、まして不倫気分とかになったわけじゃありません。まぁ「カーネーション」で周防さんとの件が佳境に入っていたころなので、不倫強化月間ではあったのかもしれない。

最初の一文がものすごく妙ちきりんなんで首をひねり、「入り込めるだろうか」と一抹の不安を抱いたが、なんのことはない、1時間たらずで一気に読み終えてしまいました。短い小説ではある。文章も、最初の一文は何だったの?!てぐらい(今読み返してもわからない)、シンプルで読みやすい。しかし、だから簡単に読みました、とは片づけられないものがある。ばっちり爪あとを残されてしまったよ・・・。

とにかくものすごくリアル。いったん幻滅したりしながらも、また盛り上がっていくあたりとか。抱き合ってなんとなくうやむやになってしまうとか。磯貝くんには若さというイタさが、ユリちゃんにはいい年して子どもじみたイタさがあるのだが、恋って本質的にイタいものだよね・・・と若かりしころの自分を思って身につまされた。この短さで、ひとつの恋の始まりから終わりまでを見尽くした感があるもん。アリだと思うわ、この小説。

大胆というか、なんかすごく荒っぽく書いているようで、随所にものすごくよく研がれた表現がある。これが才能、センスというものなのかしら。ナオコーラさんは、この作品をどれくらいの期間で、どれくらいのペースで書いたんだろうとすごく気になった。最後に著者紹介欄を見たら、お、同い年か〜。

追記。どうしても磯貝くん=松ケン、ユリちゃん=永作博美で読んでしまったけど、ふたりともすごくハマる気がする。この映画では蒼井優を絶賛する声をけっこう聞いた。てことは、けっこう脚色してあるんだろうな。