『坂の上の雲』 第11話「二〇三高地」

すすすすんごかった。何が凄いって90分間まるまる二〇三高地。例外は冒頭の好古兄さんのシーンくらい(「わしは米さえあればじゅうぶんじゃ」かっこええーーー! あれ、米、じゃなくて、これ(=酒)か?)で、あとは、総司令部にせよ、ロシア軍側にせよ、誰も彼もが二〇三の戦いの当事者。高みの見物を決め込んで批評家気取りの口をきく海軍将校の何某は、怒り心頭に発したモックンにしたたか殴り倒される始末。ああ二〇三高地、徹頭徹尾の二〇三高地。二〇三から逃れられる者などひとりもいないのである!!!

生半可な戦いではない。激戦に次ぐ激戦。こ、ここまでやるか・・・の戦闘映像に司馬遼太郎の原作の文章がかぶせられて、強すぎる印象を残す。「近代国家が庶民に強いた犠牲」とか、頂上に立った40人を史上もっとも悲惨な勝利者、「撃つに弾なく、飲むに水なし」とか。白襷決死隊や北海道からやってきた第七師団の大迫師団長や、列車の窓から見える雪土にずらりとならんだ墓標の絵も印象的だった。

どこをとっても見応えありすぎな90分の中でも屹立しているのは、今回はやはり乃木と児玉!

長男に続いての次男の戦死の報を受けての、「そうか。よく死んでくれた。で、二〇三はどうなった」はすごかった。そんな乃木に向かって「おまえのように戦える者は誰もいない」という児玉。この、児玉が、自身すばらしい参謀で、乃木の“まじめな戦ベタ”を知り抜いていながら、それをもって彼への評価を少しも下げていないところが泣ける。戦況どうあろうと古くからの友人(ここでふたりの幼少期のカットまであったのには驚き!)を変わらず尊敬しながら、児玉は「指揮権を譲れ」と迫るのだ、ううっ(泣)。そして、ここでもまた顔色ひとつ変えず、「あの若き日の戦を覚えているか、私の命はあのときからおまえに預けている」と応える乃木、うううっ(泣)。てか、柄本明高橋英樹ってことを忘れるくらい萌えるんですけど〜〜〜! やおい好きのみなさん、今、二次創作すべきは、乃木と児玉ですぞ!!!

高橋英樹なんて何をやっても高橋英樹にしか見えないと思っていたのに、いやあ、かっこよすぎて、参った。熱い男でありながらきわめて切れ者で冷酷な決断・指示もできる、かといって人間関係の機微にも通じ、乃木のようにまったく違うタイプの人間を尊敬することも出来る・・・児玉源太郎って男を、視聴者は深く胸に刻んだだろう。

そしてあの「そこから旅順港は見えるか」「丸見えであります」のやりとり・・・! こたえる兵士の声の裏返り方がもう、すごいリアルでね。ここで終わっても鳥肌もんだったのに、最後の、「爾霊山」のくだりで、なんと申しましょうか、もう、絶句しすぎて昏倒しそうになった。