『大奥』7巻 よしながふみ

大奥 7 (ジェッツコミックス)

大奥 7 (ジェッツコミックス)

江島生島事件の裏に政治的陰謀があるのはお約束だけど、ふたりの関係が超プラトニックっていうのは新鮮。プラトニックどころか、江島が布団かぶって生島の挙動を反芻してるだけっていう・・・まさかの純情くん。毎度のことながら一本とられる。江島かわいそうだぁぁぁ

この事件を経て、物語は冒頭・吉宗の時代に追いついたわけだが、今後の展望がまったくわからなくなってしまった。

剛毅果断な将軍として颯爽と1巻に登場し、やることなすこと読者の胸をすく痛快さだった吉宗は、ここに至って別の側面も見せる。経済的政策の失敗についての「人の心が読めないから」という理由づけには、江島生島事件の解釈よりもびっくり。ある方面には高い能力を有しながら、このウィークポイント。高機能自閉症・・・とか、アスペルガー症候群・・・とかあたりを意識しているのか。それにとどめをさすかのような、嫡男・・・じゃなくて嫡女の家重の存在。

当初は、時代が巡って吉宗に戻ってきた際に、すべてを知った彼・・・じゃなくて彼女が先鞭をつけることにより、幕末に男女逆転が逆転する(つまり元どおりになる)萌芽を感じさせる・・・みたいな終わり方かと思ってた。でもねえ。この巻に出てきた小石川養生所がその先鞭になるのは間違いなかろうけど、巻末に家重を登場させて強い「引き」を得たってことは、まだ終わらせるつもりないんじゃない?て気がする。

かといって、幕末はまだまだ遠いわけで、さすがに15代すべてを描き尽くすのは骨じゃないかとも思うし。もちろん、個人的にはとことんやって、漫画史に金字塔を打ち立ててほしいけど! たいして印象のない家治や家慶はともかく、50人子どもがいたという家斉時代の大奥をよしなが版で見たいし、もちろん男女逆転の幕末には誰しも興味があるはずだ。

よしながさんが描くなら、きっと天しょう院はごつごつした烈女・・・じゃなく烈男だよね、とか。最後の将軍・慶喜はたぶん超絶美形だな、とか。勝海舟は女、龍馬や西郷といった幕末の志士達は、たぶん男として描くんじゃないかな、とか。妄想は広がる・・・

連載しながら展開を考える、というたちの人ではないだろうだから、よしながふみの頭の中には、当初から構想がきっちりできているはず。あー、よしながさんと友達になりたい! こうしてじっくり1冊ずつ味わうのはもちろん読者の幸せだが、一方で今すぐラストまでを語って聞かせてほしい!という激しい欲望も。ともかく次巻には大注目だ。