『gift』 古川日出男

gift (集英社文庫)

gift (集英社文庫)

「最近、はやってる小説を読んでもピンとこない。」なんてつぶやく私に、友人がすすめてくれた古川日出男。それで買ったこの本、ずいぶん長いあいだスタンバイさせた。買ったのは出産よりも前。息子は今や2本の足で立っているのだから。

古川さんの代表作も長編小説なんだろうけど、物語の世界にどっぷり浸かる能力の後退を感じていたころだったので、それはいったん避けて・・・と、短編小説より短いやつばかりが集められたのを買いましたよ。

そう、掌編小説集。昔は書店でも「需要あるのか?」なんて横目で見ていたけど、はたちを過ぎたあたりから、その魅力がわかるようになった。小さなびっくりや小さなほっこりを味わいたいときに手にとればいい。忙しいときでも、1編は10分もあれば読める。続けて読めば、次々に与えられる小さなびっくり・ほっこりは、いつしか「本を読むって楽しいなあ」という大きな喜びになる。

で、この本。『gift』というタイトルがぴったりだった、つまりとってもいい掌編小説集だった。作者はありあまるアイデアをもっていて、それをみずみずしい口調で語ってくれる。私は彼の思惑どおり、いろんなふうにドキドキしながら読んだ。最初と最後の話が特に好き。作家ってすてきな商売だな〜と思った。それにしても、作家って(犬より)猫派が多いように思うのは気のせい?