世界フィギュア2011 エキシビション その2
今さらということになってしまいますが、安藤美姫選手の世界選手権Vは見事でしたよね〜。限りなく黒に近いグレーであるジャッジの採点基準のあいまいな部分でまともに勝負せず、後半にジャンプを固めてくるというモロゾフコーチのの見事(と言い切っていいのかは多少迷うが)な手腕も大きいとはいえ、シーズン通して安定した成績を残したうえでということもあり、誰もが納得の世界女王ということになりました。
そのエキシビションで彼女が流した涙は本当に美しかったし、エキシビションの演技そのものも胸打たれるものでした。『ホワイ・ドゥ・ピープル・フォール・イン・ラブ』ですっけ(なぜカタカナで書いたんだろう私)?も良かったし、アンコールの『レクイエム』からは彼女の祈りがこの日本まで伝わってきました。10代のころの安藤選手はダイナミックなイメージがあったけれど、今は「祈り」の表現力に長けている気がして、なんだか時の流れを感じます。
高橋大輔選手の『アメリ』も大好きだ。初めて見たときは、妙に沈鬱な雰囲気に盛り上がらないなぁなどと思ったのだが、見れば見るほど味わい深いと感じられる好ナンバーなのだ、これが。「わかりやすくなさ」が良い。何を表現しているのだろう、とじっと見てしまう。まさに、表現者高橋大輔の面目躍如。今回のエキシビションも、メダリストでないのが不思議なくらいすばらしい演技だったと思います。
さてさて、それで、ガッチャンですよ。男子シングルで銅メダルを獲得した、アルトゥール・ガチンスキー選手のエキシビション。ああ、期待のななめ上どころか真上って感じだったじゃないですか!! なんだよあれは!
ちょっと調べたところ、あの『スザンナ』って曲は'60年前後に活躍したイタリアのロックンロール・キングと呼ばれた男が歌っているそうなのですが・・・それを、わずか17才で表現してみせるガチンスキー。末恐ろしい。これが芸術の国ロシアの英才教育を受けたスポーツエリートってわけね!!!
最初と最後に両手で胸にハートをつくってみせたことからして、恋について表現した歌であることは間違いないと思うが、両手を手首からぷらんぷらんぷらん、と振るあの特徴的なふりつけや、ジャンプのあとの「どう?」と言わんばかりにパッと両腕をあげる様子、音楽が終わったあとに高速スピンというユニークなラスト、どー見ても、ウブな少年の秘めた思い、なんていう種類の恋でないことは明らかですね、はい。
地元ロシアのお客さん相手だからといって、あの余裕しゃくしゃくのあおり方にしても、まったくまぁ、なんて早熟で、自分の若さや力を良く知っていること! この、生意気な愛すべき若造。この世界選手権だけで、ほんとイチコロ(死語)でやられちゃいました。来シーズンからもついていくわ!