【いきなり氷上列伝】羽生結弦

セクシュアリティを(ことさらに表現しないことも含めて)どのように表現するか」

というのが、フィギュアスケートを見る際の私の興味のひとつなのだが、その視点は、ジュニア時代の羽生選手によって与えられたようなものだ。当時の日記(2009-12-06 - moonshine)より。このときの金メダリストが、羽生くんと村上佳菜子さんだったのですね。

ジュニアでは男女とも日本選手が金メダルを獲ったらしく、その演技もすごかった。なんという手足の長さ、しなやかさ。日本人もここまできたかって感じ。

で、ジュニアの演技を見て、フィギュアスケートって、フェミニストの人から見たらどうなのかなってふと思った。ジュニアは、男女とも性別のない妖精のような演技でそれほど性差は感じない。でも、大人の部(?)になれば・・・・(後略)

その後、ジョニー・ウィアーの『白鳥の湖』や、高橋大輔の『道』、浅田真央の『鐘』を見て、「現代のフィギュアスケートって、男はマッチョ、女はフェミニンだなんて単純な世界じゃないんだなあ!」とますます感興を得ることになるのだが、それはここでは割愛。

今シーズン、シニアに参戦してきた羽生選手が、どういうスケーターになるのか、私にはまだわからない。わからないところが今の彼をとても魅力的に見せている。

すでに高い技術がある。度胸もある。四大陸選手権では、上位陣の中で唯一、4回転ジャンプを成功させて2位に入った。

試合で見せる『白鳥の湖』や『ツィゴイネルワイゼン』のようなバリバリのクラシックがお好みかと思いきや、エキシビションU2でのはじけっぷりもすごい。インタビューの受け答えに芯を感じる。体力はまだ向上中みたいで、演技の後半に息切れして、終わった直後、無防備にしゃがみこんじゃったりする。

次のシーズンでは、どんな曲を選び、どんなジャンプを見せてくれるんだろう? 語る言葉ももっと聞きたい。身長はまだ伸びる? 筋肉はどんなふうにつけるのかな?(←我ながらキモいw) 

もちろんセクシュアリティ表現についても注目だ。ユニセックス路線か、フェミニンか、ヒューマニズムか、それとも細マッチョ。とにかく、高橋とも小塚とも織田とも、世界の誰とも似ていない表現を身につけたスケーターになって、世界で戦うんだろう。
興味は尽きない。

そんな羽生くんが東北高校に通っており、練習中に震災に遭って避難所暮らしも経験したのは、すでに広く報道されたところである。私は以下のリンク先を読んで、ちょっと泣いた。

世界選手権を前にチャリティーショーの中心に立った高橋大輔、すでに被災地の避難所のお見舞いにも行っている荒川静香センバツを戦った東北高校野球部(クラスメイトもいたとのこと)。いろんな人の姿が彼を励まして、そして彼のスケートで、また多くの人が励まされるのだ。