『横森式おしゃれマタニティ 産後篇』 横森理香

シリーズ前作(? 感想はコチラ→2010-06-02 - moonshine)同様、真におしゃれな妊産婦さんは、このタイトルでこの本を買うことはないですよね。でも、だからって即・忌避するのはもったいないです。私はこの本にずいぶん助けられました。何がいいって、なにからなにまで具体的に書いてあるのがいい。

「母は強し」とよく言うが、私が母になって実感したのは、「母は弱し」だった。現代の女性はホント、こういう状況には弱いのだ。
赤ん坊の世話が大変なのは覚悟していたが、産後の心と体がこんなに大変だとは、誰も教えてくれなかったし、どの本にも書いてなかった。
(中略)生まれたばかりのウリは新生児独特の可愛さと清らかさでそのお世話をするのは喜びに満ちていたのだが、自分の状態はもう最悪!
(中略)私は書かねばならない。恥知らずの作家として(笑)。まっこと、産褥の褥は屈辱の辱に似ている。今、こうしているあいだにもどんどんお産を終え、新しい命を育む喜びと同時に屈辱の日々を迎えられる同胞たちに、少しでも快適な産後ライフを過ごしてもらうためにも、書かねばならぬと思った。

上の引用は「まえがき」からだが、ここから既に「おしゃれ」どころか「恥知らず」「屈辱」なんて言葉が舞っている(笑)。

そして始まる本文では、筆者の産褥期について、セキララもここに極まれりといった具合で書いてある。「ドバーッと大失禁」とか、「サボテンの花のような脱肛」とか、「お産より痛いおっぱいマッサージ」とか。

おまたも、尻の穴も痛いのに、さらに乳まで痛くされるのである。お産はほんとに、いろんな意味で痛い!

入院中、このフレーズを思い出して、ひとり、胸中でぶんぶん頷いてたよ。産むときだけでなく、産んだあとも痛いところだらけだったもん。ほんと、「男はいいよな、何ひとつ体に負担をかけないでかわいい我が子を得られるんだから」とも思った。

痛みや恥ずかしさに対する恐怖ってやっぱりあるので、妊娠後期に読んだときは、下半身に関する記述のインパクトに目を奪われ、また覚悟もしていたが、実際にお産を終えてみると、私の場合そっちの回復は早く、今度はメンタル面のほうでお世話になった。

40年近くも責任のない暮らしをしてきた者にとって、子どもが生まれたのは嬉しいけどほんとにキツかったのを、私はこの「リバウンド現象」で確認した。

その現象とは、産後初めてひとりで外出したときに、ナイキエアのブーツや、ブリトニー・スピアーズのCDなんかを衝動買いしてしまったこと。それらが欲しかったというよりも、“自由で、毎日が楽しいだけで、なんの責任もなかった頃が懐かしかったのだろう”という。わかる。物欲はともかくとして、その心境。そして、

産後はこういう心理状態を誰しも経験すると思うので、周囲も思いやって欲しい。誰だって、大人になりきるのはつらいこと。たまには自分が甘えたり、責任の、心配のない時間を過ごしたいものなのだ。

と締めてある。ほんと、そういう状態って、周囲も想像の及ばないところになりがちで、誰からも思いやってもらえないんだよね。「母親になったんだから、自分の自由を犠牲にするのなんか当たり前でしょ」と言われそうな気がして、実母や夫にも具体的には相談しにくかったりする。実際に相談したらそんなこと言われず親身になってくれるのかもしれないけど、(言われるかも・・・)と勝手に思ってしまうのがブルー状態というものなのだ。だから、ここら辺を読んだときは、「うんうん、そうだよね。横森さんがそう言ってくれるだけで、いくらか楽になります・・・」と涙を拭ったw

もちろんつらい話ばかりではなくて、そんなこんなな中にもドタバタと楽しい育児生活や、育児グッズ、サービスなどについても、すべて固有名詞やエピソードを添えて具体的に書いてあるし、カラー写真も多くて楽しい本です。

うまく言えないけど、「おしゃれであるためにおしゃれをする」ようなスタイル本が多い中で、横森さんははっきりと「快適のため、楽するため、そして楽しむためにおしゃれを選んでいる」感じがして、その堂々とした感は異彩を放っています。