7/25放送「中田英寿が見たワールドカップ」

気づけばNHKの番組ばかり・・・。そんなにまでして元を取りたいってわけでもないんですが。

結論としてはタイトルどおりの内容だった。でも、思ってたのと違った。日本人のサッカー選手でもっとも“ビッグな”中田が、ワールドカップ、特に日本代表の試合についておおいに解説し、(見る人によってはしたり顔で)批評する番組だと思っていた。要するに「ワールドカップ」主体の番組。

実際は、2006年W杯で「自分の実力を発揮できず、仲間の良いところを引き出すこともできずに」引退した、というVTRから番組は始まる。本人のインタビュー付き。「サッカーをやっていても楽しくなくなった」。敗北者としての中田英寿

彼はもちろん日本の試合を見ている。「勝ち点3は大きいけど攻撃の形が見えてこない」みたいな、まああちこちで聞き慣れた内容の解説。競技場までのすごい渋滞に巻き込まれて、車を降りて歩いたり。それにしても、相変わらずキメキメの服装ですこと、ヒデったら。

人道支援みたいな活動も紹介される。南アフリカの、小学校や、エイズで身寄りのない子どもの施設にサッカーボールをたくさん持って行く。底抜けに明るい子どもたち。生まれたときから感染していて、今では寝たきりの子。「この子は(おもちゃ等を持ってきたヒデに)“ありがとう”と言いたいんです。でも喋れません。以前はみんなと一緒に元気に遊んでいたんですが・・・」スタッフの言葉にうなずくヒデ。泣いてしまったけどね、ここ。なんせ子どもを抱っこして見てるからさ・・・。

スペインのMF、シャビに注目するヒデ。ほとんどすべてのパスが彼を通る。首をものすごくよく振って、ピッチの状況を把握している。スペインが優勝した直後、解説席でコメントを振られて思わず言う。「またサッカーを(現役で)したいと思わせられるような試合だった」

メッシやCロナウドルーニーなどのスターは活躍しきれずに大会を去った。「個人の力だけでは勝てない。だからといってチームのために個人を封じるのとは違う。個人の力を引き出すためのチームプレイが理想。」と言うヒデに、インタビュアーが問う。
「またやってみる気はありますか?」
「飽きて、“やーめた”って感じでやめたわけじゃないんで、そう簡単にまたやろうってことにはならない」
それが実質の番組のエンディング。

つまりこれは、徹頭徹尾「中田英寿」主体の番組だった。若くして、富と名声を自らの実力で得て、その財力で世界規模の“自分探しの旅”ができているヒデだけど、彼の旅はまだまだ続きそうだ。

こうして見ると、分析力や批評眼に長け、高い理想とたぐいまれなオシャレ感覚(?笑)をもちあわせていても、ヒデの孤高さって何だか大変そうだなーという感じがする。志を同じくして一丸となって戦っていた(なんか幕末の志士みたいな言い方だが)日本代表チームを(試合だけでなく、その後のいろんな番組等でも)見てきたあとだと、なおさら。

穿った見方だけど、この番組は、もしかしたら、「日本代表チームが1次リーグで惨敗・敗退するのを」見越して撮っておいたんじゃないかしら。そういう仮定で見たほうが、説得力がありそう。お祭り騒ぎの裏にあるもの、W杯の意義とか、人間そう簡単にどこかに辿りつけやしないってこととか、今の中田英寿は、そういうものを見て伝える人だから。ただ、あのとおり日本は超善戦してしまった(?)ので、どうもお祭り騒ぎに終始してしまう傾向が自分にもあって、それで一見ちょっと肩すかしにあったような気分がしたんだなー。