『勘九郎ひとりがたり』 中村勘九郎

勘九郎ひとりがたり (集英社文庫)

勘九郎ひとりがたり (集英社文庫)

図書館で借りた本。単行本は1992年の刊行。タイトルのとおり、親しい編集者相手におしゃべりをしているような語り口調で構成されている。
こういうの読んでも、やっぱり勘三郎(現)っていいなーと思っちゃう。人間味あふれる棟梁って感じ。なんかかわいげがあるんだよね。
大事な舞台やなんかのときに、必ず「蝿」が一匹あらわれて、それを死んだ父親だと信じているとか。
田中裕子、大竹しのぶ樋口可南子・・・いろんな女優さんが舞台を見に来てくれてうれしいとか。でも渥美清さんが客席にいたときは超緊張したとか。
上岡龍太郎と朝6時まで飲んだ日のこととか。笑福亭鶴瓶と韓国バーに行ったときの話とか。
酔っぱらいの話。洋服着たままお風呂に入った、しかもベルトだけはなぜか外していたらしいとか。
いつも前列で寝ているお客さんのことを雑誌上でさんざんクサしたら、本人から弁明の手紙がきてすごく反省してたりとか。
家族も友だちもお客さんも酒も大好き!て感じ、失敗しちゃったてへへ、みたいなのを。何でもてらいなく出しちゃえるのがこの人のキャラクター。実際、近くにいたら「はぁー」ってため息ついちゃうようなことも多々ありそうだが、芸能人と一般人としての間柄(?)だったら、愛すべき人だなーって思える。

もちろん、芸が大好きなのは言わずもがなで、

「不忠がかえって忠義となり、ア、粋な男にな」「中村屋」、ここだ、ここだよ(笑)。
「粋な男になりますぜ」「中村屋」じゃ遅いんだ。自分でせりふ行って、自分でかけ声かけるのって面白いな。

みたいに、芝居について熱く語ってるところも、すごくおもしろい。