『今朝子の晩ごはん 仕事も遊びもテンコ盛り篇』

ブログの文庫化第5弾。上半期と下半期に分けてちょうど半年分ずつ、春と秋に規則正しく刊行されています。

松井さんは現役の小説家にしては珍しく日記で時事問題にも具体的にバンバン触れる人なので、ブログで読むとリアリティがすごいんだけど、文庫化のタイミングも1年後とそうブランクがあるわけではないし、やっぱりまとめ読みすると迫力がハンパじゃない。時事問題にしろ、劇評にしろ、趣味の馬術のことにしろ、相変わらず舌鋒鋭くて面白く一気に読んだ。サブタイトルのとおり、これだけ仕事して遊んでもいながらも、ほとんど毎日ちゃっちゃと自炊してる「晩ごはん」の様子も、読んでいてもちろん気持ちいい。

昔は右寄りの人は、左寄りの人に比べて、たとえ愚かでも、人としての美学だけはしっかり心得ていたはずなのに、美学のなくなっちゃった右寄りの日本人なんてそもそも存在意義がまったく認められません。

2009年の2月の日記より、支持率が低迷する中、なかなか辞任しない麻生総理と周囲の自民党員について評した一節。この極論というか決めつけというか、ちょっと大げさなくらいの物言いが、癪にさわる人には耐えられないかもしれないけど、私は好き。

一般に、自分の職業や置かれている立場についてはプロ意識にあふれたパフォーマンスを見せるような人でも、こと政治だとか経済だとか教育だとかの社会問題になると「興味ないから」「わかんないから」と無関係を決め込むことって日本人には多い。

ややもすると、そういう態度のほうが「かっこいい」ように見られがちだし、自分もそういうふうに思っている時期もあった。でも、それは結局、臭いものに蓋をしているだけともいえる。人前で何をどこまで語るかどうかは別にしても、世の中のことに自分なりの考えを持つって、大人に求められることのひとつなんじゃないかなーと、一周回って、今はまたそう思っている。