『泣く大人』江國香織

泣く大人 (角川文庫)

泣く大人 (角川文庫)

これも1年に1回くらい読み返す本。江國さんのエッセイ集の中でもとりわけ好きなもののひとつ。ちなみに、姉妹作品(?)として、同じく角川文庫に「泣かない子供」というのもあります。

江國さんの文章は声に出して読みたくなる。羞恥心の強い(それは“自意識の強い”と言い換えられるかも)年頃、はたちとかそれぐらいのときは、おしゃれすぎるというかナルシスティックなものを感じとって嫌いだった。でも、今はだいぶ好き。音楽を聴いているような感じがする。そして、この人は、確かに自分や自分の世界を愛しているけど、夢見がちだったり酔ったりする人じゃないんだなーと、今は思う。

この本に収められているエッセイでは、「貸し借り」や「刹那」を読めば、男友達といい友達づきあいをできる人だってことがよくわかるし、「タブー」にある男友達と一緒にできること、できないことの線引きも納得だ。また、「時の流れ」のような体験を読むと、この人のある種のスノッブさは生まれ育ちのなせる技なんだな、と頷ける。とにかく、ふわふわしたり不思議だったりエキセントリックだったりする作風はそれとして、実はとても現実を生きる能力と魅力のある人なんだなーと、大人になってからの私は思っています。

そういえば、キャロル・キングの「つづれおり」のアルバムは、この本で初めて知ったんだった。「You've Got A Friend」の詞が一部引用してあるんだけど、その紹介のしかたがとてもすてきで、ついアルバムも入手しちゃったんだよね〜。