『雨はコーラが飲めない』 江國香織(新潮文庫)

5回目くらいの再読。

雨はコーラがのめない (新潮文庫)

雨はコーラがのめない (新潮文庫)

私は基本的に簡にして要を射るようなタイトルが好きなので、この長ったらしく持ってまわったようなタイトルには、まず「うへェっ」とくる。でも、さすがは江國香織。読み終わったあとではこれ以上にないくらいしっくりくる、すばらしいタイトルだと思えるのだった。

“雨”とは江國さんの飼っている犬のこと。いくら吠えないからって、犬との暮らしについて書かれたとあれば、はぁはぁと荒い息遣いが聞こえてきそうなほどであっておかしくないのに、しかも、さまざまな音楽についても章ごとに触れているのに、おどろくほど静謐にみちたイメージのエッセイ。「ひとりと一匹」という独立した目線からさみしさを見つめ愛情を手繰る手法もこの人らしく、いいなあと思う。