『不毛地帯』初回2時間18分スペシャル、覚悟のシリアスっぷり!

見たよ、今日の午後、『不毛地帯』初回。視聴率14.4%という衝撃を各所に与えた初回。

確かにねー、私も録画で見たわけで。そもそも、このドラマはキャスト的にも明らかに30代以上をターゲットにしてる時点で、初回の2時間18分というのは、いかにも無謀だったのかも。働きざかりだったり、子どもを抱えてたりするこの世代にとって、木曜といえば世俗の疲れもたまってきたころ、なおかつ翌日も仕事。そういう状況で、あんなにも重苦しいものを、映画1本分もの時間にもわたって見ようとは、なかなか思えないわけよ。

翌日、会社の後輩女子(24歳)に聞いてみた。「昨日、『不毛地帯』見た?」って。「イロモネア見てました」って言ってたよ。まーそりゃそうよね。「中村敦夫って知ってる? 橋爪功は? 原田芳雄は?」・・・・いずれも知らないんだって。上司(41歳)、「えー、原田芳雄知らないの・・・なんかすごいショック・・・あの人、有名な鉄ヲタなのに。。。」と、ちょっとズレた方向で衝撃を受けてた。ていうか、そんな情報は私だって知らなかったよ! 

これは「フジテレビ開局50周年記念ドラマ」で、5年前に「45周年記念」でやったのが、同じく唐沢寿明主演で半年間放送された、同じ山崎豊子原作の『白い巨塔』だったわけだ。平均視聴率23%超をとったとかいうあのドラマを思えば、今回の初回の数字はいかにも無念だったろうけど、まぁねぇ。大学病院を舞台に繰り広げられる闘争、と、なんとなく一言で括ることのできる「巨塔」とは違って、いまいち大筋の見えない今回の話だったわけだしねえ。

大本営陸軍参謀部、とか、シベリア抑留11年とか極東軍事裁判とかが、いくら「テレビ放映」を前提としているにしても、かなりギリギリまで描いていて、重いどころか思わず目を背けたくなるほど悲惨だったし、その後、商社で始まる経済戦争についても、低視聴率にとどまった『官僚たちの夏』よろしく、先が見えない感じだった。

とはいえ、録画で、CMをちゃっちゃと飛ばしながら腰を据えて見ると、確かにひきこまれた。昭和30年代になっても、もどかしいまでに防衛庁にかかわる仕事に対して逡巡する唐沢寿明の葛藤も、エリート軍人として迎えた終戦、そしてシベリアで非人間的な重労働に明け暮れた11年間を執拗に描いたことによって納得できたし、妻・和久井映見や、娘、多部未華子(かわいすぎるー!!)、自決した軍人の父をもつ小雪、終戦後、そのまま防衛庁にとどまり、その腐敗と戦う柳葉敏郎などという、周囲の人間の抱える重みにも説得力が生まれるところとなった。

とにかく、10代20代の役者は徹底的に排除したような、大河ドラマよりもよほど重厚な面々をそろえており、視聴者に迎合するような下手な笑いをとることもなく、堂々と「王道」を歩もうとする制作陣の心意気には恐れ入る。しかし、やはり視聴率とってナンボの世界だろうから、こういう正統派で、しかも予算をふんだんに使ったドラマが数字的にコケることによって、今後のドラマが逆に軽薄化するかもしれないと思うとなー。なんとか今後もちなおしてほしいな。

それにしても唐沢寿明の演技は見事! こういうシリアスドラマで、また唐沢かよ〜、と見る前は思わんでもなかったが、これだけの“戦中戦後時代と同化した重み”をかもし出す俳優は、やっぱりなかなかいないよな。同世代の演技巧者なら中井貴一堤真一もいるんだけど、やはり、そうそうたるキャストをそろえた中での主役の華という面では、唐沢に軍配が上がるし。江口洋介では、ここまでの繊細な演技は望めないし。真田広之は、しっかり映画界(および米映像界)に行っちゃったしなー。

とにかく、来週以降も期待です。