南極料理人


堺雅人主演。ほか、生瀬勝久、きたろう、豊原功輔、西田尚美など出演。
シネ・リーブル博多にて8/30(日)鑑賞。87席のミニシアター、35人くらいのお客さん。意外に入ってると思った。客層も、老若男女いろいろ。

舞台は南極、登場人物は南極越冬隊。あの有名な昭和基地から、さらに1,000キロも内陸に入ったところにある「ドームふじ基地」。ペンギンもアザラシも白くまも、ウイルスすら生息できないマイナス70度の世界。食料や資源の補給もなく、もちろん人の出入りもなく、およそ1年半を、たった8人の男たちだけで過ごす。

気象やら雪氷やらの学者さんだったり、あるいはその研究を支えるための医療や通信、車両といったプロフェッショナルだったりする男たちが集まっている。主人公の堺さんは、タイトルの通り、このチームの食事を支える調理のプロ。

自然環境も、行動範囲や人間関係も極めて限定された閉塞的な状況も、与えられたそれぞれの使命も、あまりにも特殊な小集団。

なのに、
「この映画は、胸躍る冒険譚でも、プロジェクトXばりの成功秘話でも、涙ナミダのヒューマンドラマでもないんですよー。」
ってことを、冒頭のシーンから存分に見せてくれる。

ここで営まれるのは、あるひとつの「日常」なんです。俗世間と隔絶されきった空間の中で、彼らがいかに「俗っぽい」生活を送ったか。その「俗っぽさ」がどんなにすばらしく、頼もしくて、時に切なく、かけがえのないものか。楽園なんてどこにもないし、南極に行った人も、それを見送って日本で生活する人たちも、ぜんぜん聖人君子なんかじゃない。それでも、人生って美味しくて楽しい! 重ねられるエピソードを見ていくうちに、私たちはそれを感じるのであーる。

いい映画だったー。南極の男たちのボサッとしたたたずまい、過剰さをとことん廃したシーンの数々、すごく工夫されてるけどするーっと見れる構成。生瀬さんや豊原さんといった濃い役者の中で、特に大活躍するわけでもないのに、そこにいるだけで目を引く、堺さんの押しつけがましくない主役っぷりもすごくよかった。あと、高良健吾さんという若手俳優さんもすごくよかった! 整った面構えを完全に殺してた。帰ってきた空港のシーンで、初めて「うわー、イケメンさんやん・・・!」て気づいたもん。

しかもこの映画、沖田修一さんという人の初監督作品。この人はなんと、31歳なんだって! すごいなあ。ほとんどみんな彼より年上でキャリアある役者さんたち。スタッフさんたちだってそうでしょう。それで助けられた部分がたくさんあるにしたって、できあがったこの映画は、全然面白いよ?! 

あと、「はぁぁぁ」って満足のため息をついて終わったところで流れ出したエンディングテーマが、ユニコーンの新曲だった! エンドロール見てたら、音楽監督自体、阿部義晴さんだったらしい。ユニコーンはほんと、いい復活の仕方してるよなあ。幸せな気持ちになった。

より具体的な感想を省いてるのは意図的なもので、それぐらい、ぜひたくさんの人に見てほしいし、誰にでもオススメできる映画です!

それにしても、こういう映画って、確実に需要あるよね。私なんて、ド真ん中のターゲットだと思う。なんせ、ここ数年、映画館で見たのは『天然コケッコー』に『グーグーだって猫である』だもんなあ。