『天地人』第31話 「愛の花戦(はないくさ)」

背筋がゾゾっとするようなお寒いサブタイトルだが、中身はそれほど悪くなし。というか、ここんとこ、以前より面白くなってきてるような・・・。脚本補佐が効いてるのか、私がこのドラマの世界に慣れたのか? でも、各人が背負うものを鮮明になり、説得力のあるキャラクターが確立されてきたのは確かだと思う。

豊臣政権の磐石のためなら手段を選ばず、そこに一片の迷いもない三成。小栗旬の演技はキレがあって心地よい。

嫡子をもうけることなく夫と離れて上洛した菊姫の孤独と気の強さ。秀吉の唯一の子をなした喜びも、たった3歳でその子を失った悲しみも無邪気にあらわす淀殿。このふたりのシーンはなかなか良い。比嘉愛未は声やせりふまわしが時代劇らしいし、かつらも似合ってる。深田恭子は、半ばアテ書きなんだろうけど今回の淀殿像にぴったりな華やかさで、「花には花の役目があってのう」というせりふなど、出色。

秀吉の愛情も、奥方連中の注目も淀殿に移りつつあるのを感じながらも、あくまで全方面に対して賢夫人たろうとする北政所。太閤たる秀吉に、ただひとり「おまえさま」と呼びかける権利のある正室の矜持をもって、朝鮮へ渡るならお連れください、と頼むが、秀吉は頭の上がらない正室にやや窮しながらも、「淀を連れて行くことになっておる」と言う。「心配するな」とかつてのように磊落に言うが、天下人も破滅の老境へと向かっていることを感じさせる笹野高史の微妙な演技、それを悟り、また己の立場の揺らぎや豊臣家の未来を案じるかのような富司純子の受けの演技、この辺はさすがに圧巻。

松方弘樹の、腹に一物もニ物もある老獪な家康、やや過剰な演技だが、このドラマの軽い作風に大河らしい重みを与えているし、今週からヒゲをたくわえた北村一輝の景勝は、最近やっと!まともなセリフを与えられており、越後の殿様らしく見える。この人はもともと相当な演技巧者なんだから、これまでの木偶の坊みたいな人物像があまりに役者の無駄遣いだったというものだ(怒)。

こうやって脇が固まっていくにしたがって、主人公夫婦にまったく魅力を感じなくなっているのは皮肉なもの。しょせん、主人公だからといってきれいごとばかりを言わせ、清濁の濁部分を背負うことからいっさい遠ざけた人物像に感情移入できるはずがないのだ。

菊姫の上洛にも秀吉の朝鮮出兵にも、何の手も打つことの出来ない兼続。いる意味、あんのか? 先週のお船の、夫婦仲に悩む菊姫に向かっての「うちの夫は頼りになるからダイジョーブ」発言に続いて、今週は兼続が、いまだに子に恵まれない主君に向かって、「子どもの顔を見たいから早く帰れるようにがんばります!」発言だし・・・。つまぶきくんがかっこよく見えるように、制作陣、なんとか修正して!!