2019.7.23「耕論」より「社会運動家らの課題提起 ようやく光」稲葉剛

参院選2日後の朝日新聞「耕論」、最後は「日本人全体の貧困化と、その克服」について。
特に、私のような子育て世代~それ以下の若年層の方々におすすめの記事です。住宅費、教育費、そして老後資金など自分の人生に大きくかかわる社会構造を理解することはとても大事だと思います。よりよい投票行動や社会参加を助けてくれると思うからです。

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・年金2千万円問題によって、日本社会の「中間層」が経済的に痩せ細っていることがより明らかになった。

・この十数年間に、日本では貧困の問題が拡大している。

・日本で貧困が可視化されたのは、十年ほど前、派遣切りにあった人たちを支援する「派遣村」がきっかけ。

・それから10年で、「絶対的貧困」は改善した。支援が広がり、路上生活者は約1/5に減少。

・一方で、「相対的貧困」は拡大。生活が苦しい人が増えている。

相対的貧困の深刻化の要因は、政府の政策で非正規労働が拡大されたこと。

・非正規労働の拡大の目的は、企業の人件費負担の圧縮。

・現役世代にとって2大・重い負担は、住宅費と子どもの教育費。そのどちらも、正規労働者を中心とする「日本型雇用システム」が前提だった。
 終身雇用と年功序列(の賃金上昇)によって、30年もの長期住宅ローンや重い教育費を払うことができた。

・かつて老後が安定していたのは、ローン完済した持ち家と、夫婦2人の生活を支える年金があったから。

・非正規労働が広がることで日本型雇用システムは崩壊し、住宅費も教育費も、賃金収入で担う方式は無理になっている。

・にもかかわらず、政治は人々の生活を支える新しい仕組みを提示できていない。これが日本を覆う「行き詰まり感」の根っこ。

・(ここ、太字で書きたい!)
活動家の人でも、NPOや民間での創意工夫に関心があるだけで、政府の政策を変えようとする動きは低調。

・(引き続き、太字!)
貧困のような構造的な問題を解決するには、民間だけでは無理! 政府の巨大な力を活用して普遍的な支援の体制を築かなければ。

・今回の選挙戦では、野党が賃貸住まいの人向けに「家賃補助」を掲げたり、低家賃の「公的住宅」を拡大する政策を訴えた。

・選挙選でも生活への支援を充実するべきという議論がされたのは喜ばしいが、日本では投票率は低く、自己責任論が広まり、社会としての連帯感は後退している。

・ただし、先日の元ハンセン病患者の家族を支援する方向に政府が政策を転換した事実も。選挙対策だと言われたが、長年、当事者や支援者が地道に活動してきたからこそ。

・この社会にも「課題を設定する力」はあるということ。この力を現実の政治にまで結び付けていきたい。

(2019.7.23 朝日)
(稲葉剛 つくろい東京ファンド代表理事