『獣になれない私たち』 終わりました!
連続ドラマって、最終回の前の回をどれだけ盛り上げられるかが重要です。このドラマの場合、晶と恒星が一線を超えるならココしかないわけで、そのためのお膳立てがさすが!
2人とも仕事で勇気を振り絞ってもがいてみたけれど敢えなく失敗。行きつけのお店は呉羽のスキャンダルで休業に追い込まれている(行くところがない)。という詰んだ状態。
恒星の事務所兼おうちで、傷ついた2匹の獣のように体を寄せ合っていくガッキーと松田龍平。窓の外で降りだす雨。あいみょんの主題歌『今夜このまま』が流れ出して…。
「うおおおおー! なんという納得感のある展開じゃーーー!」
叫ぶ私に、夫がドン引いてましたよねw
で、最終回、彼らは結局、獣になれたのか?
という命題ですが、なれなかったんだと思います。
ベッドの中ではなれたのかもしれませんが(ゲス)、その後のあやつらのグジグジ感たるやw
「忘れるようなことなの?」
「晶さんからもキスしたよね?」
「後悔するならやるなよ」
「恒星さんだって朝になったら背中から後悔がにじみ出てた!」
なんちゅー鬱陶しい会話だw
しかも、話の途中で幾度も電話が鳴って、職場の同僚や元彼(田中圭)が乱入したり、元彼の元カノ(黒木華)を捜索したり、元セフレ(菊地凛子)を訪ねたり、その都度、対応を迫られる。
人は、獣のように自由に、大胆に振る舞うことに憧れる。
たまにはそうするのもいいかもしれない。
感情のままに上司に向かって吠えるとか。
激情に突き動かされて寝るとか。
そこから何かが始まることもある。
でも結局、いろんな人間関係や世の中の成り立ちは、どこまでも私たちについてくる。
それは面倒で煩わしくて滑稽な反面、救いでもあるし、矜持にもなる。
晶は、1話では「恋がしたい」と言っていたけれど、
9話では
「恋していなくても、女友達とたくさん笑ってしゃべったり、仕事の仲間と一喜一憂したり、飲み友だちと夜通しゲームしたりしてつながってるからいいじゃない」
と笑う。
また、最終回では、パワハラ上司に向かって「言葉が通じないのは悲しいです。人間だから」
と訴える。
恒星も、「人生を取り戻したい」という意の発言を。
私たちは獣にはなれない。人間だから。
人間でいることは、大変だけど面白い。すばらしい。
私たちは人間でありたい。ちゃんと自分の人生を生きたい。
最終回、呉羽(菊地凛子)が世間に負けた形で謝罪会見をひらくんだけど、
「私は妻である前に呉羽。これからも好きに生きる。カイジと一緒に」
と最後に言い切ったのは、作中、もっとも獣に近い女として描かれてきた彼女の “ 人間宣言 ” だと思う。
「○○の妻」という役割ではなく「私」を生きる。
私のままで、夫(好きな人)と一緒に生きるんだ、と。
◆
【シスターフッド = 女性同士の連帯】を心から信じている一方、
男女の関係は難しくて不確定であると描いている。
晶と恒星の未来は、「希望はあるけど確信はできないよ」というラストだと思いました。
晶が、元彼の元カノ&お母さんと楽しく飲んでいるのを見て、元彼である京谷(田中圭)が
「女の人の考えることってわかんねー」
と言うんだけど、私はめっちゃわかったよ!
世代や立場(結婚してるか?子どもがいるか?正社員か? etc…)で分断されがちだけど、何かとっかかりがあれば、女性はすごく連帯できる。
「女性だから」切実にわかりあえることがある。
反対に、作中の男性たちのエピソードには、あまり興味が持てなかったんですよね。
夫はやっぱり、「女たちの言動がワケワカメ」的な見方をしてたので、男女の違いだなあとしみじみ。
でも、
バスの中、こみあげる思いに手で顔を覆う松田龍平や、
何がいけなかったのかやっぱりわかってなさげな(でもキュートな)田中圭には
すごくぐっときてました。
男の人も大変なんだなと、理屈でなく感情でわかる部分がありました。俳優さんってすばらしい。
田中圭は実在性において卓越してる!
松田龍平は何をやっても松田龍平のようで、実は相当テクニシャンだと思う。
いまだにこういう変な役を引き受けて輝く黒木華さんの俳優魂。
そして菊地凛子! 彼女が演じた呉羽が好きで好きでたまらない。
晶の会社、京谷の会社、恒星が監査に行く会社や三大監査法人など、それぞれの職場がなかなかリアルに描かれていたのもすごくよかった。
トーマツの(と突然名前を出すw)監査対応をしていた私も納得ですw
脚本担当の野木亜紀子は、
『掟上今日子』や『重版出来』、『逃げ恥』『アンナチュラル』と、一作ごとにムズキュンなコートやジャケットを1枚ずつ脱いで、社会派でフェミな作風をあらわにしているので、来年以降もすごく楽しみ!