『とめられなかった戦争』 加藤陽子

とめられなかった戦争 (文春文庫)

2011年5月、NHKで4回シリーズで放送された内容に添って書かれたもの。
当時、全然チェックしてなかったのは、震災からわずか2か月という時期の放送だったのも大きいと思う。そういう人は多かったはず。

というわけで、本作の感想としては、
「その映像作品を、ぜひまた再放送したらいい! 
 一度と言わず何度でも、むしろラピュタやトトロレベルの頻度で放送したらいい!」

ということになります。

それが難しいのだろうから、こうして文庫本という形になっているのはすばらしいことだと思う。

戦争はよくない。してはならないこと。
それはもちろん間違っちゃいないんだけど、そこで思考停止してしまって

「なぜ戦争は始まったのか?」
「なぜ戦争の拡大をとめることができなかったのか?」
「なぜ一年早く戦争をやめることができなかったのか?」

という「過ちの検証」をしてこなかった、それが市民にまったく浸透してこなかったのが、
セカンドレイプならぬ、戦後のセカンドミステイクだと思う。

それでも70数年、日本では平和が守られてきたのは、戦争体験者がいたからというのが大きい。
今後は彼らを頼れなくなる。

すでにそうなりつつある。
今、嫌中・嫌韓の思想はネットのみならず本屋にも平然と並べられているし、
「日本の伝統・文化は他の国より優れている」と回答する若者は年々増えているという。
(出典:http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/53403?page=4

いくら、今とは時代も憲法も国家体制も異なったとはいえ、人間なら、自分の生活や家族を失うかもしれない戦争なんて望むはずがないのに、なぜあそこまで戦争の泥沼に突き進んでしまったのか?

同じくこの加藤陽子さんの著作『それでも、日本人は戦争を選んだ』は、私がやってる「朝ドラや絵本で語る、子育て世代のためのレキシ勉強会」でも大いに参考にさせてもらってるのだけど、この『とめられなかった戦争』は、「それでも日本人は~」よりもっとコンパクトで、読みやすいと思う。オススメ。

第1章 敗戦への道(1944=昭和19年
第2章 日米開戦 決断と記憶 (1941=昭和16年
第3章 日中戦争 長期化の誤算 (1937=昭和12年
第4章 満州事変 暴走の原点 (1933=昭和8年

何度も書くけど、本当におすすめです。

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