『憲法という希望』 木村草太

憲法という希望 (講談社現代新書)

来月、「憲法改正ってなぁに?」というおしゃべりカフェをやる予定。衆議院で与党が大勝した瞬間から…というか大勝しそうな雰囲気が漂ってる選挙中から、2018年のテーマはこれになる(なってしまう)なぁと思っていました。それで、選挙後から、憲法関係の本を意識的に読んでいます。

筆者の木村草太さんは、テレビ番組にもよく出ている(らしい)新進気鋭の憲法学者、ということになるのかな? わかりやすい語り口が魅力とのことで、この本の文章や構成にも「わかりやすくしよう」という意思を感じます。

しかし、それでもまだ難しい!

・・・・というのが、本音じゃないでしょうか、みなさん?! と、勝手に人を道連れにしてみましたが、法学関係の知識がゼロの自分にとっては、憲法の条文とか判例の法解釈ロジックとかがちょっと込み入ってくると、「え? えーっと…」と目が泳ぐw いや、読みました、読みましたけど、時間がかかったのは否めない。

なので、いいです! そこはあきらめましょう! またあらためて、時間のあるときにゆっくりと。

ということで、2章と3章、それに4章の前半くらいまでは、ザーッと流し読みでもいいんじゃないかと思います。
1章と、4章の後半は、大人と呼ばれる年齢になってしばらく経っている人なら、きっとスッと胸に入ってくるはずです。その部分だけでも、この本には、760円(税別)の価値があります!!

それでもなお、わざわざ本を買って読むのが大儀な人も多いと思うので要約します!

●立憲主義とは、国家による権力濫用を防ぐためのしくみ。
 子どもたちは、先生の体罰に怯えることなく、しかし、悪いことをすれば先生がきちんと叱ってくれる、そういう状態が実現して初めて、学校生活をのびのびと送れるようになります(エミ註:それと同じこと、という意味)

●「無謀な戦争」「人権侵害」「権力の独裁」が国家がやりがちな三大失敗。それを踏まえて作られているのが、立憲的意味のある憲法。つまり、「軍事統制」「人権保障」「権力分立」が3つの柱になる。

●(危険な組体操の事例を挙げて)道徳はもちろん大切だが、究極的には人によって考え方が分かれる。それを教育の現場で行おうとしても、教師が望む良い子像を押し付けることになりかねない。今必要なのは、道徳教育より法学教育なのでは?

●他者と共存するためにどのような人権が必要かと考えることと、権力を合理的に運用するための統治の仕組みを考えること、憲法改正を考えるのであれば、その2つがポイント。

●専門的な知識や技術は専門家にまかせてもらえばいい。また専門家は一般の人にわかりやすく説明する義務がある。一般の人は、「何かおかしいんじゃないか?」「個人の権利が侵害されているのでは?」という勘をはたらかせてほしい。

 そのためには、自分らしく生きようとしたときに感じる息苦しさに気づくことが重要。日本人は我慢を美徳とするので、ガマンしたり仕方がないと考える傾向がある。しかし、本当にガマンすべきことなのか? 社会の側を変えるべきじゃないのか?と考えてみることは非常に大切。

ね! スッと入ってくるでしょ?

個人的には、第4章の「日本はいま第一共和政にある」というくだりになるほどと思いました。君主による統治を排除したのが第一共和制。フランスでは1789フランス革命後、ドイツではワイマール体制。日本は、明治憲法下の時代が君主制で、日本国憲法が発布されてから、つまり今。このフェーズには、「王政復古に戻りたいという勢力が強い」という特徴があるらしい。

それから、巻末に収録された、国会での松田公太議員の質疑の議事録も面白かった。「法律と住民投票を必要とする」木村理論と、内閣だけで決めてよいとする政府理論の対峙。「統治機構論」の入口としてわかりやすいと思う(ちょっと目が泳ぐけどw)。