『エーミールと探偵たち』

f:id:emitemit:20180124203359j:plain

すごくよかった。この年代の子どもが主人公である小説に、私が求めるものがすべてつまっているといっても過言ではない!・・・かもしれない。いやホント。

子どもたちが大人に抑圧されていないし、誘導されていないし、大人の理想を押し付けられてない。もちろん子どもは大人に比べるといろいろハンデがある。おまけにエーミールにはお父さんがなく、家の経済的事情も厳しい。でも、かわいそうな存在なんかじゃない。強くて輝かしい。それは、エーミールが賢いとか勇敢だとか、特別な資質をもっているからではなくて、普遍的な真実なのだ。この小説に出てくる子どもたちは、みんなそう描かれている。

エーミールと少年たちがやるのは「探偵ごっこ」じゃない。探偵だ。大事なものがかかってるのだ。でも本人たちも面白くてたまらない、わくわくしている。仲間たちと新しくて難しいことに挑むのは面白い! 仲間といっても昨日きょう会った子たちばかりだ。一緒にやってるうちに仲間になる。派手な喧嘩とか、お涙エピソードを経て仲良くなるわけじゃないのがまた、いいんだよねぇ。でも、エーミールと教授がお互いの家について話す場面は、大人にはちょっぴり涙腺にくる。さりげないのがいい。いとこのポニー・ヒュートヒェンという少女の造形も最高! 少年たちのお姫様でもお母さんでも、お姉さんでも妹でもない。自由! エーミールとお母さんの関係はやっぱり泣ける。でも、泣けるからいいんじゃなくて、とにかく元気で痛快なのがこの小説の魅力だ。