『72時間ホンネテレビ』(後)

たくさんの人がゲストに来て絡んだり、顔を出したりしてくれてとてもうれしかった。
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山田孝之、きゃりーぱみゅぱみゅ、爆笑問題、リリー・フランキーなど、自由なイメージの芸能人たちが出るのは納得で、そういう人たちと3人との相性は当然良いのだった。驚いたのは、山崎賢人が1コーナーがっつり、ピンで出たこと。ダストの売れっ子なのに! ダストは大丈夫ってこと?! てか、「腹蔵なんて皆無です」て感じの賢人くんとSMAPとは、これまた相性いいことがわかったよね…。ああ、東出くんも出てほしかった!!

山本耕史が出るのには何の驚きもなく、むしろ誰一人出なくても山本さんは出るでしょ、って感じだけどもちろんうれしいし安定感が格別だし、彼を筆頭に『新選組!』のキャストが次々に登場して胸が熱かった。オダギリジョー、谷原章介、佐藤浩市まで出てくるんだもん! 

 

そして「新選組!」の脚本家、三谷さんね。香取慎吾のスター性や才能を早くから見抜き惚れこんで、たくさんの仕事を共にしてきた人。忙しい三谷さんが即興の脚本を書き3人に稽古をつけて一緒に芝居を作っていくプロセスを見せるコーナーは、まさに新しくてエキサイティングなコンテンツだった。その意図や、コーナーを終えての所感などは、三谷さんの新聞連載『ありふれた日々』に2週にわたって書かれ、やはり3人へのエールとリスペクトがつづられていた。

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「わけもわからず出てきました」って感じの賢人くんを除いては(彼に関しては、それがステキなところ)、名のある人々はみんな自分の意思で出てるんだろうなって思った。話題の番組に乗っかりたいなんて次元にはいない人たちが、3人や、彼らの新しい取り組みに深い好意や意気を感じて出演したんだなぁというのがそこここにあふれてた。

出たくても出られなかった人もきっといっぱいいたんだろうな。それはしょうがないことだよね、と思う一方で、それこそが問題なんだよなとも思う。「こういう業界だから仕方ない」「誰か一人が悪いわけじゃないんだよね」みたいな許容が、さまざまな弊害を存在させ続けてるんだと思う。能年さんの名前とか、電通の高橋さんの自殺とか、相撲界の暴行事件とか、モリカケもそうだし、いろーんな問題に共通する問題。SMAPの解散がただの芸能ネタなんかじゃないよねと思うのは、そこだ。そして、「新しい地図」はそこに風穴をあけている。

彼らは絶対に誇大広告をしなくて、『新しい地図』と同様、『ホンネテレビ』という名称もダテじゃなかった。最初の夜、つよぽんがこの番組のために作ってきたという歌の歌詞にびっくり。「新しい別の窓」略してアベマの歌、というタイトルがこれまた本質的で、かつ気が利いてるんだけど、その歌詞が。これまでの息苦しさとか、世間の排他的な風潮とかもちゃんと盛り込んでる。だからといって、負のオーラはまったくなくて、「だからこそ新しい別の窓をあけて気持ちいい風に吹かれて世界にとびだそう!」っていうメッセージは、なんかもうSMAPそのものだよね。

堺マチャアキとの圧迫面接wでも、彼らが語るアイドル論はとても興味深かった。そして泣けた。もうとっくの昔にアイドルの固定観念なんて突破してるし、でもやっぱり最高のアイドルなんだって、ファンが思っていることを、彼らは全部わかっていると思えた。マチャアキは怖かったけど、「世間」の姿だったんだよね。私なんかはかなりファン寄りな気持ちで見てるけど、「仲がうまくいかなくなって解散したんでしょ?」とか「四十代だし、もうグループの名前はいらないよね」とか、悪気なく思ってる一般の人だってたくさんいるもんね。彼らはそういう相手にも、臆せず、激せず、誰かを責めたりせずに、とてもフラットにホンネを語るのだ。

そして、森くんにもホンネを求めたのがまた熱い。「脱退をみんなに黙ってるとき、どんな気分だったの?」とか「(オートレースを)やめたいと思ったことはある?」とかさ。テレビの世界から離れて20年以上経つ人に、しかも生放送で聞くか?!っていう危うい質問だ。へたなこといったら炎上するし、かといって上辺だけの答えでも興ざめだもん。

それらの質問ができたのは、彼らがこの番組とホンネで勝負してるからだし、何より森くんを信頼してるから。森くんなら大丈夫と信じたからだよね。そして森くんがまた、見事に応えてくれる。ホンネで、簡潔だけど真情がこもっていて。森くんは別の道を選んだけど、彼が番組の最後に寄せたメッセージの通り、ずっとSMAPの仲間なんだなって思った。

最後の72曲ライブ。ライブ! そう、ファンが見たかったのはそれだ。

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「僕たち、曲がないから」っていう一言にも泣けたが、セットリストは彼らが歌うのにふさわしい名曲ばかりだった。歌唱力とかじゃない「歌の力」を感じさせてくれる人たち。ああ良い歌だな、とか、ああ、彼らに重なる詞だな、とか、とにかく味わい深い。いつでも生歌でそのときの声を聞かせてくれるのも大きい。彼らは隠さない、とりつくろわない。歌もダンスももっとうまいグループはたくさんあるけど、やっぱり彼らのライブが見たいと思える。見られないと淋しい。

見ながら、「これはSMAPだな」とすごく自然に思った。3人だけど、名前は違うけど、SMAPだ、と。これまでも、5人そろわないことがあった。そのときもSMAPは活動できる人たちで活動しながら待ってた。今もそうなんだ、と思った。いや事態はかなり深刻ですけど、今回の問題はかなり根源的なところにあるわけですけど、当時もやっぱり、前代未聞で先が見えない中で彼らは活動してた(休んでた)のだ。

ゲストたちからのVTRを見て吾郎ちゃんが泣き崩れる姿がいろいろなところで取り上げられたけど、私は、72曲歌い終わった直後の彼らを見て既に泣いてた。ありがとうと繰り返しながら、3人とも呆然としたような顔をしていて、すぐに言葉が出てこなかった。

「できたね」「なんとか歌いきることができた」という言葉に、ずっと楽しそうにしててすごく自然体だったけど、やっぱり簡単な挑戦なんかじゃなかったんだと思った。彼ら自身、最後までできるのかどうか自信がもてないくらい手探りで、不安もあったんだなって。たくさんの制約もあっただろうし無尽蔵のパワーが必要だったんだろう。

慎吾くんが「ずっとボロボロだったからね。ボロボロだった僕らをずっとみなさんが支えてくれてここまでこれた」と言ったとき、わたし、声あげるくらい号泣。彼らは最後まですごいホンネを話す。やっぱりずっとボロボロだったんだよね、と思うとすごく悲しい気がするし、ここにいない2人が心配にもなる。でも彼らはそんなときにファンを支えにしてくれるんだ、ってことが本当にすごい。尊い。

「3人だから、これまでより強い気持ちで、前に進んでいかないと。みなさんが原動力です」とつよぽんが言った。たぶん「(今は)3人だから」って意味だと思う。「こうして会うの久しぶり。元気だった?ずっと変わらず応援してくれて・・・」と吾郎ちゃんが言った。「ほんと、気持ちよかったね。やっぱ楽しいね」と慎吾くんが言った。

なんかさー、両思いだよね。すごいよね。このフィナーレを見ていてつくづく思った。ファンが彼らを思うのと同じくらいの強さで、彼らもファンを思っているのがすごくわかる。ファンが彼らに望むことと、彼らがやりたいことは、奇跡的なくらい一致してるよね。それはどっちかが無理してるんじゃなくて、彼らとファンとが築き上げてきたものなんだよね。

だから彼ら5人は、ファンが5人を望んでいることもちゃんとわかってるし、彼らのほうでも、それをもっとも望んでるんだと思う。なんかそれを確信した。森くんの「ずっと仲間だよ」は6人にかかってる。6人ともそう思ってるはずだ。


おわり。

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