Xデーは いつ来るか? ~「描き続けた“くらし” 戦争中の庶民の記録」

『描き続けた“くらし” 戦争中の庶民の記録』
8月にEテレで放送されたドキュメンタリーです。
東京の下町で暮らす7人家族。
お父さんが、敗戦までの3年間を絵日記で書き残していました。

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少しずつ物資が窮乏していく世の中でも
家族の暮らしには、ささやかな幸せがあります。

子どもたちの相撲遊び。
月に一度きりの配給のお肉を、いっぺんにすき焼きにしたり。
庭に掘った防空壕への避難訓練は、まだ遊び半分だったり。

そんな、貧しくもあたたかな暮らしをよそに
戦況は日に日に悪化していき、
ある日、長女の学年(10歳くらい)に集団疎開命令が出ます。


当時の親にとっても、そんなことは前代未聞だったのです。
校庭で行われた説明会は親たちの質問攻めで紛糾し、
夜10時まで続いたと書き残されています。

そして、疎開して数か月

列車の切符をとることも難しい世情の中、
母親は疎開先に慰問に行けることになります。
持ちきれないほどの荷物を持つ妻を見て驚く夫。


「友だちの親御さんたちから、我が子に渡すよう頼まれたものよ。
 うちも、これまでそうやってよそのお母さんに託してきたの。
 断ることなんかできないわ」

そして長女のもとに行ってみると、
親元を離れた日々をものすごくがんばっていて、
でもものすごく痩せて小さくなっていました。

しばらくして、長女は一人、家に帰されます。
衰弱が激しく、疎開先での生活に耐えられないと判断されたのです。

絵日記
「明るく健康優良児だった○○が、
 見間違うほどに痩せこけ、青白い頬になっていた」

長旅から疲れて戻ったその夜も、東京では空襲警報が鳴り、
長女は朝まで死んだように黙りこくって防空壕に・・・

めっちゃくちゃ泣きながら見てました。

思うのは、

子どもを疎開させなければならないとか
少年を戦場に送らなければならないとかって、
実際の「そのとき」より、ずっと前に決まってるんだよね。

国会で法案が成立したときに。
選挙で国会の議席の数が決まったときに。
権力者の横暴を、無関心・無反応という形で黙認したときに。

将来の、生活の崩壊は、そのときすでに始まってるんだよね。

もちろん当時は、憲法も議会も選挙も今とは違うから
どうしようもなかった面もある。

そもそも人口の半分の女性には選挙権がなかったから、
自分たちが政治を何とかしようなんて発想がなくてもおかしくないし、
治安維持法やなんかで、実質的に言論の自由がなかったともいえる。

でも、じゃあ、今はどれくらい違うか?
・・・というと、どうだろう。

選挙権を持っていても政治への参加意識がなかったり
そのときのムードで投票したり
出る杭にならないためにお口にチャックしたり。
実は、昔とあんまり変わらないんじゃないのかなと思ったりする。

何かの法案が成立した日も
選挙結果が出た日も
権力者が権力を濫用した日も
その日そのものは、私たちは穏やかに楽しく生活できる。

Xデーは、あとから来る。
だから、今日の幸せだけに満足していてはいけないんだよね。

https://www.nhk.or.jp/docudocu/program/20/2259595/index.html
(NHKの番組サイトへのリンクです↑)