『おんな城主直虎』 第38話 「井伊を共に去りぬ」

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アサシン高瀬ちゃんのくだりはこれで終わりなの? だとしたら珍しくちょっと片手落ちな感じがしたな。彼女が井伊に来てもう何年? これまでさんざん放置されといて、ここで近藤(近藤程度)を殺せっていうのはちょっと…。そして、あんなにおびえてたのにもう解決したっぽいのもちょっと…。まあ、その程度の訓練しかされてない刺客ってことかな。まあ、刺客云々はもういいや、そんなに膨らませなくてもね。高瀬ちゃんはかわいい。虎松帰還後にまた絡みがありそうではある。

 

よかったのは信玄周りのエピソード。大河って、こういう大御所をスポット起用した場合、薄っぺらかったりそれっぽかったりな場面やセリフを大御所のオーラと貫禄頼みでこなして終わることも往々にしてあるから、今作、主人公とは直接絡まない信玄の描かれ方には大変満足しました。

 

「生臭坊主ぐらいがちょうどいい」と言う南渓には「ほんとにな」と大きく首肯しましたが、そうやって己の器を正しく測れている姿には同じく凡人としてなんとなくやるせなさも感じる。以前語った出生のことが本気なのだとしたら、人生のかなり早い時期に失意があったのだろうなとも思う。

・・・でもやっぱり、山に囲まれ激しい川を抱えた甲斐で、親父・信虎を追放するまでして領主の地位につき、疲れるヒマもないほど闘って「お天道さまになりたい」と嘯く信玄と並ぶと、まことに南渓和尚の凡人っぷりが際立ちますな。

四方八方、誰彼かまわず調略の手を伸ばし、敵が死ねば小躍りして喜び、小さな谷の家々に迷いなく火をかける。武田のやり口は戦国の申し子というべきもので、やられるほうから見れば悪鬼に等しいが、それを「他国を切り取らなければとてもじゃないけど生きていけない」とほかならぬ信玄に語らせたのがとても良かった。戦国の国盗りは男のロマンや野望なんかではなく、結局は食べるため・生き残りのためだという点、井伊と近藤が敵の目を欺くために仲たがいの芝居を企むのと根本的に同じなのだよね。

「できることならお天道様になって、あまねく地上を照らし、どこもかしこも恵まれた土地にしたい」そうしたいけれどそれはできないから血で血を洗う戦国絵巻になるんだ、という図式をちゃんと示したのがえらい。それでいて、信玄は泣きながら血で血を洗っているわけではなく、「死によった♪ 死によった♪」と踊り、宴を張り遊び女を呼んで生き生きとしているわけで、やっぱり戦国の申し子なんである。

そこに降臨する寿桂尼さま・・・! なんで氏真が笙を吹くシーンが挿入されたのかな?と思ったらそういうことでしたか~! 大河に幽霊はつきものですが、かなり説得力のあるご登場でしたねw 

今や今川イコール氏真がいるところで、てことは徳川に風を吹かせなければならないわけですよね、寿桂尼さまとしては。ここで私たちは「死してなお今川を守る」という気魄と共に、そのためなら「ばばが行けばみな同情するでしょう…」と自らの老いまで利用していた彼女を思い出さずにいられない。信玄相手に“女”を使うなんて、お茶の子さいさいな寿桂尼さまである。それにしても、まさかの若作り寿桂尼出現、どこかユーモアすらあるシークエンスで、今回の信玄にふさわしいラストだったのではないでしょーか!

一度は直虎の案に乗った近藤の出奔は、「武士たるもの、ちょこざいな芝居をするよりも愚直に戦うべし」って感じなのかな。彼らしいっちゃ彼らしい。近藤さんが史実どうなるのか知らないんだけど。

そしてね、私はこの週末、「あさイチ プレミアムトーク」で菅田将暉にコロッといってたんですよ。いや、元から大好きだったけど、久しぶりにあさイチでがっつりトークする彼を見て激しく打たれた。「もう、菅田将暉の彼女ではなく菅田将暉になりたい人生だ」とfacebookでつぶやいたら、「何?神田正輝?」とか「俺は河合奈保子か倍賞千恵子になりたい」とか(←同級生男子より)とか脱線しまくらちよこ。ちょw菅田くんの話をさせてw 

とにかくね、菅田将暉のトークを見ながら「どうやったらこんな人間力の高い子に育つんだ…」と思ってたら、番組後半で「菅田さんのお父様に育て方を聞いてきました」ってコーナーが始まったから「あさイチ」スタッフの視聴者目線わかってる感すごかった。そして、9月24日に菅田くん虎松が初登場するのは私への誕生日プレゼントに違いない と両手を組んで画面の前で待っていましたw

でも、ふたを開けてみたら、その前の龍雲丸にコロッと・・・! やっぱ、なりたいのは菅田将暉、付き合うなら柳楽優弥だな!! 龍雲丸かっこよすぎ。チューしてほしい。

・・・・ハァハァ(呼吸を整えた)。「ついてくんな、ばばあ!」で始まったから、それこそまた、歌舞伎ばりの愛想尽かしで別れるのかなと思ってたら、彼は直虎のことをほんとに理解してて。

「城も家もなくともさ、あんたはここの城主なんだよ。根っからそうなってんだよ。」

その的確さ。若い頃から「井伊のかび饅頭でいい」と自ら思いさだめ、直親が死ぬに至って自ら城主となり、けれど力不足で政次を死なせてしまったことで癒えない傷を負った直虎を、「殿」としての直虎を、最大限に肯定したと思う。

そしてその言葉が、「人は城、人は石垣、人は堀」で有名な信玄の死と同じ回に語られたのもまた興味深い。直虎はちっぽけな存在だけど、おんな大名寿桂尼の系譜に連なる者であり、戦国の申し子信玄にも共通点を持つ。そして同じ回に井伊直政も出てくるわけで、よくできた脚本だなー。

「何も心配なく、戦もないなんて、そんな日が来るわけない。今行かないと、かしらと生きることができなくなる」

という直虎のセリフも泣かせた。それは真実なのだ。ドラマとして見ている視聴者からしたら、堺に行こうとする直虎に欺瞞を感じるのだけど(結局行かないんだから、よけい龍雲丸を傷つけてしまうから)、その言い分を聞いたら頷いてしまう。井伊谷を愛しつつ、かしらと共に在りたいと願う気持ちだってもっともなのだ。井伊の総領娘ゆえに平凡な幸せはすべて得られずにきた直虎が、今それを願って何が悪い?って話だ。

そんな直虎に、「(何十年も経ったら)そんときゃ俺もじじいだ」と応える龍雲丸・・・あんたは最高にいい男だよ・・・! 直親も政次もじじいになってくれなかったから、それは本当に美しい夢なのだ。希望なのだ。まさか「直虎」にこんないい男が出てくるなんて。「ごち」の源ちゃんと並んだわ!!

「情にもろくて、泣いたり怒ったり忙しい。
 そんな普通の女が、なんでか、
 兵ひとり使わず町を手に入れ、
 人ひとり殺さず戦を乗り切り、
 したたかに世を変えていくんだぞ。
 そんな女がどこにいんだよ、なあ!」

ありがとう。かしら、ありがとう(泣)
私が言われたわけでもないのに、そんなふうに感謝したくなっちゃうってのが、正しい少女漫画の世界だなあとも思うんですが、

「兵ひとり使わず町を手に入れ、
 人ひとり殺さず戦を乗り切り」

のリズムの良さ。やっぱり森下さんは時代劇にも向いてますね。そして、一連、柳楽さんの演技がすばらしかった。真摯で、乾いてて、かわいげがあって、すばらしくすてきでした。ああ、つきあいた…(自重

キスを見てバサッと顔をそむける中村屋がよかった。このためのキャスティングだったのか、ってぐらいにw そして、堺。家康と縁深いところに行ってくれる期待感。さよならじゃないよね♪

男を見送り、来た道を戻る直虎。その決意の表情。道を戻ってるけど、実は、新たな道を進んでいるのだ。

そして直政。小野政次@高橋一生も、龍雲丸@柳楽優弥も去ったあとを託される菅田将暉@井伊直政! その登場が、三浦春馬にも寺田心にも似ていて、ひれ伏しました。予告w 虎松くんはどんだけでもはっちゃけていいです、なんせ井伊直政だから、そうそうの大暴れをしても史実には背きませんw