『おんな城主直虎』 第29話 「女たちの挽歌」

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ううう・・・しのさんに泣かされ虎松に泣かされ。

てか武田、悪すぎやろ!
ここまで邪悪な山県昌景って大河史上初だよねw 信玄を崇拝していた去年の真田父が人道派に見えてきたじゃないか。この信玄を思って、自刃前のヒラタケ勝頼様は泣いたのかw この信玄だったら叱られるどころかあの世でもう1回殺されるんじゃないの・・・?
そしてTLの武田クラスタが喜んでいる…「ひどい」「でもこれが正しい武田」ってww

もとい。

寿桂尼、ついに力尽く。屋敷中の楽隊の演奏を聞くどころか、親族・お付きの者ひとりにも見送られず、たった一人で逝ってしまわれた。けれど鬼門にさえ葬ってもらえれば、それで死してなお今川を守れるならば、何ひとつ悔やむところはない、そんな女大名だった。・・・という感慨を覚えさせるラストシーン。

森下さんが寿桂尼を書くということで、放送前から期待しかなかったけど、かつてのマドンナ浅丘ルリ子ってそんな怖い役できるのかなとも思ってたところ、名キャラぞろいの寿桂尼さまの大河史に、見事な1ページを刻んでくれましたよね…。
超美しくて超かっこよくて超怖い、そして超いとおしい寿桂尼さまでした。

おそろしい敵であり力強い味方であり、理解者でもあり畏怖の対象でもあり・・・だっけ。直虎にとってはそのすべてだった、と。直虎はこれから、周囲の男たちや女たちにとってどんな存在になるのだろうか。

瀬名さまがあんなに血相変えて差し出した「井伊からの手紙」に対して、結局「虎松の生母を差し出せ」で答える家康という、この夫婦の積み重ね描写も冷え冷えとするもんがあります。家康は別に意地悪でそう言ってるわけじゃない、家康自身、家中をまとめ戦国の東海地方を生き抜くのに必死なんだけど、瀬名さまの心にたまってゆくものには、ずぇっっったい気づいてないよね。

陰気でふてぶてしい松下常慶だが、和田正人を起用してるからして、いつどんなエモーショナルなシーンが出てくるのか楽しみ。でもとりあえず、源ちゃん@「ごち」に会いたくなった。

しのさんが頼まれてもいない仕事をしている・・・それを当然のつとめだと思っている・・・!
「ちっぽけな国衆の分際で大国を動かそうとしたのか、失策にも程があります」などなど、直虎にまくしたてつつも、かつてのヒステリーとはまったく違うドライな貫地谷しほりの演技がすばらしい。そしてあっさり了承。あっさり虎松に伝達。

「虎松を頼む」という直親の願いを、しのは、直親がいない分も自分が始終そばにいて陰に日向に守ってやる、というふうにはとらえていなかったんだね。虎松がやがて治める井伊を守り、盛り立てるためにはどんなことでもする、と。そして跡継ぎの生母たる自分にしかできない役目があるのだとわかっていたし、ただ虎松を守るだけでなく、未来の領主として育てることも、最後までやろうとした。そんな考え方は、「お方様」としての仕事をするうちに強くなったのだろうね。かつて千賀さまも(自分の夫も戦死したのに!)戦死者のお悔やみをしていたように、家中の者は、お家のため、当主の命で働き戦に出て死ぬこともある。それが役目。それぞれがそれぞれの役目をまっとうして家を守っているのだと。

虎松くんの「何も考えつかぬ阿呆なのですか?」に「因果、因果」と笑って逃げる南渓この。まあ、いつか(脚本に)ぶちのめされると思うので放っておきましょう(増田明美@ひよっこ風に)

良い策があれば母は行かずにすむはずだと懸命に考え、あやめを身代わりにするという、子どもらしい利己的な策を思いついて(そしてそれをあやめが了承するのがまた説得力あるキャラ描写だよね、これまでの!)、真正面から直虎に否定されて泣いて帰ってゆく虎松。泣ける。泣き疲れて寝た虎松を穏やかに見守っているしの。泣ける。

でも絶対、ここからさらに泣けるよねと思って覚悟して見てるんだけど、微笑んだしのの「行きたくなってしまったのですが、行ってもいいですか」からの、虎松くんの「嘘だ! 母上は虎松と離れたくないないはずだ! 虎松が一番大事なはずだ!」で涙腺決壊ですよ・・・今書いててもちょっと泣きそう。

「ぼくは母上と離れたくない! だから行かないで!」とは言わないんだよね。「母上は虎松と離れたくないはずだ!」と。もちろん前者の気持ちだってすごく大きいだろう。でも虎松は、自分がどれだけ愛されているか、母がどれだけ自分を大事に思っているか、ちゃんと知っていて、ゆるぎない確信を持っているんだよね。それがすごく泣ける。泣けるの。しのさんは子どもを愛し、守ってきた。虎松はそのことを強く感じていた。

2人を引き離す家康め~! てか元凶の武田~! 30年前、私を歴史の世界にいざなってくれた武田信玄をこんちくしょうと思ったのは初めてかもしれんよ!!!

そして、そこでしのさんが戦国の猛母的に、「何を言っているの。母は井伊のお方さま。我が子よりお家が大事、お家のために行くのです」なーんて言わない。「そのとおりです。虎松は母の宝です」って言うんだよ。「だから大事にしたいのです。母は虎松に力強い味方をたくさん作ってやりたい。嫁げば味方が増えるし、子ができれば兄弟を作ってやれる」 その言葉とまなざしの迷いのなさ、力強さ、嘘偽りのなさ。子どもを産む決心までしている!!!!! 
 
なんかもう、思い出して書いてるだけで、ワーッとなって疲れてきました。相変わらずすごい脚本っすね・・・。なぎの木の苗を見た虎松を泣かせない演出もすばらしい。失礼ながら、中の人が寺田心くんなのに(彼はプロだからさあ!)こんなに可哀想に思うなんて自分でびっくり。「だいじょうぶ、この子は菅田将暉になるんだから・・・」と自分に言い聞かせて耐えてたよw

「求める安堵は井伊谷と気賀のみ、民百姓をひとりも殺さない」
これまでの紆余曲折あっての、この宣言なのだよね、お花畑大河とは一線を画する。
それでも、ひとりも殺さない・失わないってことがどんなに難しいか、私たちは既にこの大河のこれまでで、結構いろいろ見てきておりますよね・・・。