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『おんな城主直虎』 第19話 「罪と罰」

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つくづく、直虎をかわいく・美しく見せようとしないなあと思う。

朝ドラはもちろん、女性ヒロイン大河も、主人公を綺麗に写すことに情熱を燃やすものよ。篤姫なんかもちろんそれだし、『江』だって、『まれ』だって、内容はハチャメチャでも(disってるわけじゃない)、樹里ちゃんも太鳳ちゃんもすごく綺麗だった。
思えば『ごちそうさん』のめ以子も、めんこくなかったよねえ。特に初期。

同じ森下脚本でも民放では綾瀬はるかとか黒木華とかとても綺麗に撮っていたので、森下さんと水橋Pとのタッグになると、こうなるのだな。杏ちゃんは元トップモデルだし、柴咲コウだって美人女優の括りのトップランナーなのに、これ。女優さんて腹くくってるよねえ。

ぶすくれて、わめいて、賢くなくて。演技含めて、この主人公は苦手~っていう人も少なくないだろうなと思う。それこそ、『ごちそうさん』でのめ以子に対してもそうだったけど。でも私は割と好きなんだよね、こんな主人公が。剥き出しの感情表現。笑顔だって、女優のじゃないよね、直虎。ニカーッ、って。おそれず人物造形するよなあ、演じるよなあ。

直虎。お召し物や着付けはいつも素敵。そして歩き方がいい。今回、旅の男について「百叩きにでもして放り出せばよかろう」と之の字に言うや、裾を翻して大股で去っていくのよかったー。

直虎はまだ、虎の子どもなんだと思う。若虎かな。今回、近藤や直之や政次、誰も彼もに雌猫みたいにキャンキャン噛みつく姿。でもいつか、かっこいい虎になるんだろうなあ。「直虎」を初めて名乗ったときのように、ここぞという時だけ、超越的に気高く美しく撮る。次はいつだろう、でもそれって怖い展開あってだよねー。みぞみぞする。

地政学的には、「小さな井伊谷の地を守るため今川の傘の下にいる」という、ひたすらその描写だったのが、数週前から少しずつ、戦国の勢力争いの地図が出てきている。
それも、これまで作品中で存在感を放ってきた寿桂尼の健康不良と武田の“義信事件”とを絡めて描いているのが面白い。単純にどこが強いとか、大名のキャラで押し切るとかじゃなく、直虎と同じに「どーゆーこと?どーなるの?」と思える。浅丘ルリ子の、床上げはしても本復には遠いよね、って演技うまいな。

今川の太守さまの前でも落ち着き払っている方久。但馬に押さえつけられるまで、自分から頭を下げようとしなかった! ふてぇ奴だ。「尻の穴の溝」推しの会話が森下節やなあw 

入会地争いは『真田丸』の初期でも描かれたが、今回はそれに戦国の「悪党」を絡めた描き方でこれも面白い。それにしても、土地から土地へ流れてアウトサイダーな生き方をしているはずの旅の一団が、井伊谷がおんな領主を戴いているのを知らなかったのは、ちょっと頭(かしら)の手落ちじゃないですか? 情報とか集めなくても、腕力と技能で生きていける人たちということか。

でも、おんな領主について、「夫に死なれた後家さんが息子の成人まで代行してるってこと?」と、持統天皇を筆頭にした日本の「女トップ」系譜の常道を口にしたってことは、それなりの知識教養は持ってるんだよね。そして、自分の子どもどころか結婚経験もない直虎が中継ぎに立っている直虎の異様さがあらためて浮かび上がる、と。

旅の男が、六左をたばかって逃亡したのは何の驚きもないけど、傑山さんに口を割らせたあげく「幸せなのかのう」とまで言わせた人徳すげー。あの笑顔、クセになりますよねw

己の腕で自由に生きる柳楽くんが、直虎に生きる意味を問い直す流れになるのは必定なんだけど、単にそれだけじゃなくて・・・

今回、互いに邂逅を回想しながらゴロンと横になるシーンが相対応してたし、こんなに何回も出演してるのに、柳楽君の役名がいまだ執拗に明かされないのももちろん作劇上の意図で、直“虎”と“龍”雲丸とは、さだめし深く交わる運命なのだろうと思う。
龍虎の交わり! それはやっぱり、行きつくとこまで行きつくかは別として、艶めかしい展開を伴うのだろうと思う! 楽しみ!!(しつこくてすまん)

この、おとわの貞操の危機(?)に、鶴と亀がどう絡んでくるのか・・・

とっくに死んでる亀が、隠し子という形でしっかり絡んでくるのが面白くてだなw
予告でしのが激怒してたってことは、しのと結婚して以降に作った娘ということか。虎松+4・5歳・・・うん、あの娘、そんぐらいかもw



そう、今回地味に感動したのは、皆がそれぞれうまく(巧くではないけど、それぞれ己の都合いいように)鶴を使うようになってたこと。直虎は先週、「我をうまく使え。我もうまく使う」と言い放ったのだものね。

それで、「但馬が打ち首というから、打ち首にはしない(キリッ」って、屁理屈だけど井伊谷の理屈が通ってるw 直虎めww

そして、うまく使うのは直虎たちサイドだけじゃなくて、政次のほうもそうなんである。六左を使って事情を聞き出すのなんてお手の物。六左には寄せていくよね、ボディw

南渓を使ってだけど、直虎を呼び寄せて、腕を掴んだ。「話さなければならないことがたくさんある」。前回の「我と話そう、鶴。少しでいいから」に対応してる。少しだった会話は「たくさん」になってる。前回のあの場面まで、政次が差し出す手を何度も払いのけていた直虎(その発端は、ブラック但馬として今川から戻った政次が、井戸のそばで次郎の手を振り払ったことなんだけどね)が、政次の言に「そうか」と応じてる。

政次は、いったんは「領主たるもの悪人を処罰すべき」という正論を真正面から堂々とぶつけ、直虎が受け容れないとなると引き下がって、直之にも諮って罪人を近藤に引き渡そうとした。直虎と融和はしてるけど、言うなりじゃないんだよね。それは家老として正しい姿で。

企みを知って、政次にギャンギャン吠える直虎。嫌いな人には耐えられないだろうなというシーンであるw それにしても、政次の「後付けでしょう、結局知ってる者の血を見たくないからあれこれ理由をつけてるだけだ」の看破が鮮やかならば、それに対して「ああそうだ! 我はこれでも女だから血など見飽きておる」と答える応酬は面白い。
 
だけど何だか不吉なんだよね。
 
旅の男=龍の脱獄で棚上げになった、「虎松をさらったり、瀬戸村に押し入ったりするリスクが考えられるのに、許すのか」「知っている男だから処罰できないのか」「殿として守るべきものは何だ」という、政次が直虎に向けた根源的な問いは、いつか政次の身に返るような気がしてならない。

つまり、直虎は「許すのか」「処罰しなくてよいのか」「知りあい(どころか幼なじみ)と、虎松や井伊の家とどちらを守るのか」という問いに、いつか答えなければならない日がくるのではないかという予感。それも、虎松や領民と、政次とを天秤にかける形で・・・!