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『おんな城主直虎』 第6話 「初恋の別れ道」

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いやー、やばいね。「真田丸」の録画にも手を付けていない今、「直虎」まで録画消去できない流れになってきて、我が家のハードディスクの残量が危ない。また家族に「消せ、消せ、まずスケート(フィギュア)を消せ」と言われる流れだな・・・w

直親がおとわに「悔しくないのか!」と迫り始めたとこで、もうぐっときてしまった。「ごちそうさん」といい、「天皇の料理番」や「経世済民小林一三」といい、森下脚本で人が感情をあらわにする場面と、非常に相性が良いといいますか。すごく掴まれるんですよね、私。

「死んだことにして娶ろうなんて直親怖い」「事が決まったあとであすなろ抱きする直親ずるい」って声もネットで散見したんだけど、そういう残酷さを含んだ描写をするのもこの脚本家らしいのよね。

しかし直親も、「井伊の跡取り」という地位を得た今だから、強くそして怖く見えるわけで、これまでの9年間はやはり必死だったと思うのですよ。父の死を寝耳に水で聞かされてから、あれよあれよとお尋ね者になり、追っ手に怯えながら暮らしてたわけですよね。井伊に戻れる日がくるのかどうかもわかんなかった。一生懸命文武に励んで、みんなに認められる立派な男として戻ってきたけど、絶望とか憎悪とか諦めとかヤケのやんぱちとか、いろーんな気持ちでぐるぐるするときもあったんじゃないでしょうかね。

死んだことにして名前も変えて、数年、親しい人たちに会えなかったとしても、家のために犠牲になり僧として無味乾燥な一生を終えるよりは、妻になり母になって、俗世の人として苦楽を味わった方が、生まれた甲斐のある人生のはずだ。そういう提案なんだよね。「娘としての喜びも『悲しみも』…」と言ったんだから。そういう思いに至るまでの直親の9年間を想像すると、やはり切実なものがあります。たぶん今後、作中でその9年間の空白について触れることあるだろうけど。

その「僧としての無味乾燥な一生」を「黴びた饅頭」なんてものに比喩しちゃうのが凄味だよねえ。切羽詰まった態度で直親に「井伊を継ぐ者として答えよ、我と添うのは上策なのか」と問い、問答のあとで「黴びた饅頭、重畳ではないか」と笑う、一連の柴咲コウの演技もすばらしかったと思うのです。私は今回で、この物語への期待値をぐっと、ぐっと、さらに上げましたよ。

おとわの言葉に覆らなさを悟った直親は、あすなろ抱きしながら「置き去りにしてすまぬ」と言うのですよね。自分は井伊の跡取りとして、世に出ていくのだと。嫁もとり、子も作り、茨かもしれないけどとりあえず日なたの道を歩く決意だよね。おとわへの思いは本物だったはずなのに、おとわと心中するのではなく、そっちの道を選ぶ。そこには直親の、自分の生き方への強い思いがあるよね。9年間、表向きは死んだ者にされていて、いわば「置き去りにされてきた」直親が言う「置き去りにしてすまぬ」には、口先だけじゃない重さがあったと思うよ。

あすなろ抱きもさ、ひどいっちゃひどいけど、嫁をとったあとでやるよりは遥かにマシだし、おとわが一生、男女の仲というものから隔絶して生きるのであれば、あんなあすなろ抱きだって、ないよりあるほうが小さな宝物になるかもしんないよ。「置き去りにしてすまぬ」には直親の真情がこもっていたのだから。

でもね、直親もまた、おとわの9年間を知らないんだよね。おとわの竜宮小僧人生は、楽しいというのは違うかもしれんけど、無価値で憐れまれるべきものじゃないと思うよね、視聴者としては。

この回を見てて思ったのは、

●おとわ・直親・政次の三者は、それぞれに、本人にしかわからない思いがある。他の2人とは共に歩めない道をそれぞれが生きる。

ということ。そして、最後の直親と政次のシーンを見て、こうも思った。

●三者のうち二者だけが共有し、もう一人には見えないものがある。それは、おとわ-直親ペア、おとわ-政次ペア、直親ー政次ペアと、3通りすべてにある。共有する思いは、ライバル心だったり、淡い思いだったり、労わりだったり、たぶんいろいろ。

●そんないろいろな思いを、1人ずつが、あるいはいろんなペアが抱えながら、これから共闘したり、葛藤したり、いろんな喜怒哀楽があるんだろう。

ってこと。

2016の星野源に続いて、2017は高橋一生イヤーになりそうですけども、政次の魅力だけが屹立してたら面白くない。直親も拮抗してこそ物語は盛り上がるわけで、そのことを重々承知しているだけじゃなく、ちゃんと表現してくれる作り手だと信頼しています。

「3人」のいろんな関係性を存分に堪能させてくれるんだろうなってわくわくする! それに、尾張攻めを進めてる今川、雀を手懐けた家康・・・歴史もじりじりと動いてるよ!