『真田丸』 第48話 「引鉄」

・有楽斎の話を聞かずに追放
大蔵卿局を黙らせる
・大野治房に一方的に自分語り
・千姫の「江戸に帰りたい」を「聞かなかったことに」。

うーん。ううーん。軍勢とは塊ではなく一人一人なのだが、めっきり順調に、一人一人の思いを封殺していく信繁である。こりゃいかんわ。でも、有楽斎追放したくなる気持ちも、大蔵卿局を黙らせたくなる気持ちも、あれもこれもわかるよ。そうしたくなるよね・・・。大蔵卿たちの言う通り、牢人たちを追い出して家康の下知する関東の小国にでも降れば秀頼たち上層部は救われたかもしれない。でも牢人たちは路頭に迷う。信繁の立場でその策は推進できんよね…。豊臣の家も、牢人たちも、両方救える手だてがあっただろうか?

そう、ここに来て「牢人たち」がキーパーソン。
主を持たない、10万もの失業者。その家族たち。
もともと主のない者たちで、統制されてない。将来の生活保障もないから、生きていくために手柄を立てようと武器を買い込み、早く戦わせろと迫る無法者たち。

今や「牢人たちを成敗する」と家康は宣言。秀頼でも、豊臣でも、憎き真田安房守の息子ですらなく、「牢人たち」。その不埒者の中の一人が左衛門佐、というところか。
秀忠の妻・江が言っていたように、「もう天下は徳川のものと決まったのに、わかってない者たち」が牢人衆なのだ。秀頼と茶々は天下の仕置きどころか大坂にすらこだわらないと言っている。

本当は戦が大嫌いな家康に言わせれば、牢人衆なんかいるから戦乱が起きる。徳川が作る天下泰平の世を乱す諸悪の根源。敵対している旧勢力、豊臣の首脳陣であるところの大蔵卿局もまったく同じことを言っているのが面白いんだけど。

大局を読めもせず暴れる困った奴ら。それは本当にその通りなんですけど、でも牢人衆を滅ぼすということは、結局、「彼ら一人一人の思いを潰す」ことでもあるんだよね。それぞれの事情を背負い、それぞれの理由で戦う者たちの存在を許さない。すべての武士を、その下に連なる民たちまでを幕府が管理統制することによって営まれる太平の世が江戸時代だ。

そう考えると、大坂城のコントロールに失敗した信繁が敗北するのも、牢人たちが一掃されることで新しい世が訪れるのも、平和主義者で辛抱強く老獪に待ち続けた家康が最後に勝つのもわかるけれど、でも太平の世ってどうなの?管理社会…という気分にもなるなあ。

利休が残した馬上筒。これほど呪い然として登場するアイテムがあろうかw 最終盤のここにきて念を入れていただかずとも、信繁はあのとき「利休の業の茶」を飲んだというのにw 

いや当然、「利休の銃で家康を狙う」脚本がもとからあったんだよね。利休は小田原合戦のとき、北条に武器を流そうとしていた。「戦はもうかりまっせ」それが利休の戦だった。結局その武器は受け取れなかったけど、もはやあの時点では真田や上杉や伊達、徳川にすら、誰にもかなわなかった「己のための戦」をして、ある意味、武将たちに憧憬されながら滅んだのが氏政だ。利休もまた、商人であり茶人である己のための戦をして、負けて、滅んだ。

勝ち馬に乗るということは体制側につく、それは己を失うということでもある。秀吉についても徳川についても、上杉景勝はだいたいいつも死んだ目をしてる。伊達はだいたいゴマすってる。

真田の次男坊で、豊臣の忠臣であった信繁、九度山で14年も蟄居した信繁は、利休の銃で己のための戦をするんだなあ。何でそこまでするんだろう?と考えたとき、他の牢人たち同様、「ほかに居場所がないから」のようにも思えるのが悲しい。



終生、自分は豊臣の家臣だと言うけれど、豊臣だけを残すためならもういっぺん戦に勝つ必要はなかったんだよね、たぶん。渦中にある信繁にそれが見えないのも当然だけど、でも信繁は有象無象の牢人たちと戦いたい気持ちもあるわけよね。彼らにめっちゃ翻弄されてるけど。勝って、秀頼たちと一緒に四国に行きたいわけじゃない。戦って勝ちたいだけ。死んでも戦いたい。

・・・という心境を読み取るお兄ちゃん。



先週までは、雅な愛人の膝枕で「弟は輝いてるのに俺は…」と大泉洋の堂に入ったぼやき芸を見せていた(しかもお代を請求されると高すぎないかと不平w)からこそ、今週の「こうしちゃおられん!」感にぐっときたってのもあるんだろう。脚本家の掌の上だなあ。

信之はまっすぐにきた男、間違えずにきた男。犬伏以来、あまりに隔たってしまった兄弟だけど、彼が迷わず信繁を止めようとしてくれて本当にうれしい。信之がやることなんだから、どんな事情があろうとも、死に急ごうとする者を止めたいと思うのは間違ってない判断なんですよ! といってもその帰結は歴史が告げているけど(泣)、信之と一緒に、「信繁、死なないで!」と私は願う。稲ちゃんの息子が超態度悪いのはもういい、信之がこれほど必死になってくれて、茂誠があんな顔してくれて、三十郎が変わらずワンコだったから。

てか、どうでもいいけど、人の名前覚えるのけっこう得意なんですが、信吉と信政はどっちがどっちだかどうしてもわかんなくなる。

私は洗練された女だから~とか畑仕事はね~とか、なんだかんだ言いながら懸命にやっちゃうきりちゃんである。きりちゃんて、初期は、人質に行った先で不平不満たらたらで、ばば様に「うるさい」とか言われてたけど、いろんなとこ行っていろんなことしてるうちに、誰のためにでもけっこう気持ちよく働ける人間になってるんだよね。その尊さを、春ちゃんは無意識にわかってるから対抗心があるんだよね。

それにしても、あの瞬殺によるショックがなければ、佐助は本物の家康を仕留められたのだろうか・・・なんて思ってはならんか・・・

有楽斎が「う」であることが判明した今、「お」印は厨の大角与左衛門でファイナルアンサーなんだろうな。妻子はとっくに死んだ、とわざわざ言わせたのが・・・なんか不吉すぎる・・・秀吉時代からの古株らしい彼。恨み骨髄に徹す、の状態としか思えないんですがー! でも、その脇に今「戦嫌い」の与八がいるのは、悲劇ではなく福音になりそうな気はする。



今井朋彦、これから朝ドラやら民放やらで大きな役やりそうだな!! そして今週の竹内結子の美しさ、もうやばいくらいじゃなかったですか?! それに負けじ劣らじの来週の予告のきりちゃん!!