『真田丸』 第46話 「砲弾」

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終盤になればなるほど、もう「何も言えねえ」っていうか、ここまできたら、あとはもうとにかく固唾をのんで見守るしかない、って気分になってきてますが。

先週の平野もそうなんだけど、今週も懐かしいあの顔この顔が出てきましたね。
で、うわあ懐かしい~!と思いつつ、あれ?と首をひねったのが、その人らが言う人物評。

出浦昌相 「そなたの父は博打を打ってるようで常に先を見通していた」

あれ?そうだっけ?

昌幸は勘と好みで動いてたようにしか…そしていろいろと外し続ける人生だった気が…
昌幸が先を見通していたとするならば、「嫡男信幸温存」を貫いて真田を守ろうとしたことかなあ。

そして真田の家を守るために信幸を温存する策は、結果的に、まさに適材適所だったよね。昌幸が残したものはそれだった、といってもいいくらいに。だから、かつてあれだけイケイケドンドン(死語)だった出浦が、今は全力で信之を止める。昌幸が残した真田の家を守るために。全力で、っていうか、ねばねばで止めたんだけどw

自分では止められないと悟って出浦を用意しておいた稲はさすがだな。真田を守るため、に徹してる。

真田信尹 「左衛門佐は我ら兄弟と違って義に厚い男」

あれ?そうだっけ?

確かに、信繁は共に長い時間を過ごし格闘した治部や刑部を慕っていて、その最期まで仕えた秀吉にも、その子である秀頼にも思い入れがある。でも、義のために戦っているのかな? 

そうじゃない、前述ツイートのように、信繁はエゴのため…という言い方が悪ければ「己のため」に戦っていることを、信尹はよくわかっていたと思う。それが、2人の短い対面に歴然と表れてたから、私たちは信繁の代わりに信尹に調略されたのだ(笑)。
「読まんでいい」その一言をこともなげに言う演技! 栗原さん最高かよ!

かつての「わしのようになるな」と言った叔父上だからこその「読まんでいい」なんだよね、長らくの次男坊生活から、さらに九度山での長い月日を経て、ついに己のために戦っている信繁だから、そのまま貫いてほしかった。でもそれは一方で、信尹が己の人生を否定することでもあると思うんだよ。調略を重ね影の仕事に徹することに信尹の存在価値があった。その仕事を放棄したんだよ。それは大事な兄の息子のため? 真田の家のため? 違う、きっと信尹が自分でそれを望んだ。自分の「あったかもしれない人生」を信繁の中に見ている。そこに心で与することが今の彼の本意。だから「不首尾に終わりました」と堂々と言った。

じゃあなんで「義に厚い男」と言ったかというと、家康なんかに「あいつはやっと己のために戦ってるんです」なんて言っても通じないししょうがないし(笑)、それより「義に厚い男ですから」と言ったほうが信繁の格上げになるってもんだから…だと思うんだよね。

生き残った近しい者たちが「先を見通していた」「義に厚い男」と言う。彼らを見てきた視聴者としては「うーん、そのまとめ方、ちょっとざっくりしすぎてるような…」と思うけど、伝説とはそのように作られるんだろうなという感じで、リアルだし、茶々と秀頼、そして信繁の死が、劇中その後、どのように語られるのかなという興味もまた、湧く。

信繁が「絶対に勝つ」ために秀頼を翻弄して悪びれないところなんて、いいぞいいぞ、ついにエゴイスティック剥き出しにしてきたね!と思ったんだけど、同時に、秀頼がとても哀れ。中川大志くんの悩める若殿ぶりがとても肉感的。でも秀頼も生ききるんだろうなと思う、このドラマだから。

あの老けメイク・老け演技で、あの手この手をひねり出す家康の、老獪なんて言葉じゃ表せない迫力。片桐に淀殿の御座所を尋ねるくだりがすごく良かった。「聞いておけばそこを避けられるから」なんつって、さすがに、それが嘘だとわからないほど片桐はバカじゃないし、それわかってて、わざとこういう聞き方してるんだよ、それに乗ってしまいますよ、っていう、内野聖陽小林隆の含みのある演技合戦!  

ただ勝てばいいんじゃない、いかに犠牲を少なく勝つか。と、まったく同じことを言う家康と信繁に分かれる明暗。家康は正確に、相手の弱みをついた。信繁は以前、「(いやいや来てる徳川軍と違って)こちらは戦う気まんまんだからこっちのほうが強い」というようなことを言ったけど、その理屈でいうと、「深層心理では死に惹かれている」茶々が君臨している大坂城は、めちゃやばいってことなんだよね・・・。

でも、生命の申し子・きりちゃんは、ほかならぬ茶々が望んでそばに置いているんだよね。ってのが興味深い。

茶々の部屋にたった一人で入る信繁、茶々の手を握ったあと出てきた信繁に、きりは何も言わなかった。あの、うるさい、鬱陶しいきりちゃんが一言もなく、目も合わせなかった。大助の武功を喜ぶ真田家のひとときの団らんの中にも、きりはいない。すごく気になる、きりちゃんの描写である。

~「真田丸」最終回は大河異例の無題!屋敷CP「皆さんが副題を付けて」
「台本を作り上げる段階では、ある二字熟語を想定していました」
「われわれスタッフ全員が、その二字熟語では収まり切らない熱くて深い思いが最終回には詰まっていると」




 ↑ばば様、言い遺すの回。